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B-4

ハウスメーカー(住宅建設販売事業者)選びの注意点

◆ハウスメーカーとは

 ハウスメーカーとは住宅を中心にした建設及び販売を主業務としている事業者のことである。建設業というよりは不動産業的色彩の強い業者のほうが多いように見受けられる。大手メーカーになるとテレビコマーシャルを頻繁に放送しているので名前くらいは何社か知っている人も少なくないだろう。ハウスメーカーの業態は実際かなり多様であり、規模では全国展開の大手から地元中心の中堅まで多くの会社が存在する。業務内容もプレハブ、ツーバイフォー、輸入住宅、一般木造、鉄骨住宅、アパート建設、建て売り建設販売、リフォームと多様にわたる。大手は資本力を活かしてテレビコマーシャル、ショールーム、モデルハウス、多数の営業マンを採用した営業などが目立つ特徴となっている。

 ◇ハウスメーカーの事業形態の特徴・・営業が主体

 ハウスメーカーの事業形態は住宅生産業ではなく住宅小売業に入るものといえるだろう。それ故、直接生産者といえる建設会社、工務店などに比べ流通マージン分、住宅価格が高くなる傾向にある。

 一般の建設業者と比較し問題点として指摘できることは専門知識を持ったスタッフの不足が目立つことである。実際の設計図作成や工事は外注下請けに出している例も多い。設計や工事は効率化が難しい分野で掛かる経費に比べて労力節減の効果があまり期待できない。また人材育成にも時間と費用がかかる。ハウスメーカーは本質的には営業主体の会社であるから営業経費がかかるからといって営業部門を削減しては死活問題である。営業部門の縮小はそのまま顧客減少につながる。おのずと収益改善のためには営業部門以外の外注化傾向が強くなってくる。

 建設会社、工務店の顧客層は個人だけでなく法人、団体、公共機関と幅が広く、それ故、個人客向けに親和性をともなった営業をしているとは言い難い面がある。それに対してハウスメーカーは最初から個人を顧客層とする目的で設立された事業者であるだけに住宅分野に関しては有利な立場にあるといえる。

 ◇ゼネコンとハウスメーカーの相違点 

ゼネコン あらゆる工事を総合的に請け負う業態・技術部門(設計・工事)が主導する経営
ハウスメーカー 住宅専業・営業部門が主導する経営

 ゼネコンとはゼネラルコントラクター(総合請負)の略である。総合請負とは簡単に言えば総合的に工事を請け負う事業形態を意味する。また建物の用途、構造、規模の別なく受注業務を展開しているのが一般的である。サブコントラクター(サブコン)と呼ばれている専門技術、技能に特化した請負経営している工事業者も数多く存在する。ゼネコンの下請けで入っている業者にはそのような会社が多い。ハウスメーカーはどちらにも属さない、住宅に特化した独特な経営を行っている。建設業の中ではもっとも安定した経営基盤を実現できる業態が総合請負といえる。サブコンはゼネコンの下請け協力会社として参入することで安定経営を実現している。

◆建主側から見たハウスメーカーの問題点

 ◇過大経費の是正が求められる

 ハウスメーカーの経営上の問題点として目立つものは住宅一戸あたりの営業経費がかかりすぎていることだ。営業経費の内訳は主に広告宣伝費、モデルハウスの建設費と維持管理費、営業関係の人件費などである。東京地区で坪単価あたり3万円、その他の地区では2万円の費用を費やしているというデーターもある。これらの経費は最終的に住宅購入者である建主が負担することになる。

 <実際の確認事例> 建築予定者(建主)に提示される見積金額(契約金額)の内、20%程度がハウスメーカーの取り分となり、残り80%で実際の設計と工事がなされている。設計料は見積金額の一律7%で算定。結果、設計料と下請け工事会社の利益を除くと実質的な工事価格(実効予算)は契約金額の60%程度となる。

 上記例を設計事務所と一般工事会社に発注した例に直すと、実効予算は見積金額の80%代を上限とすれば、概ね正しいだろう。

 ◇難しい仕事を避けることで企業利潤の保全を優先

 一般に受注難易度の高い住宅とは敷地条件、法規制が厳しい、予算が少ない、建主の要求項目が多い、要求の内容が高度であるなどのことをいう。このような手間のかかる物件はハウスメーカーにとって利益率の圧縮につながる要因になるので積極的には受注したがらない。契約条件の厳しい物件は契約成立にいたるまで時間も手間もかかるうえ交渉の末、不成立になる例も多い。また契約成立後も設計や工事の段階で建主との間でトラブルが発生する率が高い。ハウスメーカーは予算も不足しない程度にあり、要求項目も一般的なもので打合せ担当者の手を煩わせないような建主を歓迎する。

 ◇外見の企業イメージと中味は別

 ハウスメーカーの営業マンは外見の印象はともかく本音の部分では建主はあくまでもビジネスの対象と割り切っているので、その辺を良く理解しておくべきだ。当然といえば当然であるが営業マンは顧客の都合より営業ノルマを優先するのが常識でもある。これはどの業界でも共通していえることだろう。最初は見積もりも高めに出てくるのが一般的で、まずは利益確保が優先されることになる。価格が安い場合は住宅の中味もそれなりであると理解したほうが良い。企業としての利潤を少しでも損なうようなことは避けるという意味ではビジネスライクに徹している。

 <実際の確認事例>ある大手ハウスメーカーでは契約金額の約10%にあたる歩合給を契約成立ごとに営業マンに支給している。故に営業マンどうしだけでなく支店どうしでのライバル意識も高い。

◆ハウスメーカー選択上の注意点

 ◇モデルハウス

 建主がハウスメーカーを選択枝に入れる動機としては広告イメージの他にモデルハウスの存在がある。モデルハウスは実際の住宅が実在するわけだからリアリティーがあって実に分かりやすい対象である。モデルハウスに訪れたときにまず注意することは自分がこれから建てて住む住宅とは違うことを自覚することだ。モデルハウスの床面積は60坪くらいが多い。仮にこれから建てる住宅が40坪であれば単に面積の違いだけでなく外観上も内容的にもかなり違うところがでてくる。設備もグレードの高いものを展示してあるがこれは予算次第であるので割り引いて見た方がよい。ハウス内の家具カーテン類、庭の樹木芝生はもちろん無関係である。

 モデルハウスは住むためではなく、あくまでも宣伝用の住宅であることを前もって良く理解しておいた方がよい。ハウスメーカーの営業マンや説明員は建築のプロではない。質問をすればマニュアルどおりの返答はするが、あまり詳しい説明は期待しない方がよいであろう。商品知識はある程度あっても専門的なことになるとお手上げな場合が多いのだ。

 最近の傾向としてマンション事業者などはモデルルームを廃止するところもあるようだ。ショールームとカタログを営業の中心に据え、完成住宅を一時的にモデルルームとして使用することで販売経費節減を計り、価格競争を展開する営業戦略をすすめているとのことである。ハウスメーカーとしても参考にすべき点は少なくないかもしれない。

 ◇工事の信頼性

 ハウスメーカーの工事の信頼性については他の場合と同様、保証の限りとはいえないので大手だから大丈夫などと先入観は持たない方がよい。以前建てた人に様子を事前に確認してみるとか地域の消費者生活センターに過去に苦情の相談がなかったかどうか一応問い合わせてみるだけの手間は惜しまない方がよいであろう。

 ◇契約時の注意点

 ハウスメーカーと契約するときにまず注意すべきことに契約金の問題がある。契約金とは建設業界では一般には馴染みのないものであるが手付金とか内金と解釈すればよいだろう。顧客本位とはいえない対応である。契約直前になって要求してくる例もあるので前もって確認することが大事だ。実例としては200万円という金額がある。この金額は仮にメーカーサイドの不手際が原因で契約破棄しても全額は戻ってこない。

 契約前と契約後とではメーカー側の態度に変化がみられ、それがクレームの原因になることも少なくない。契約までは親切に対応してくれていたメーカーが契約後、不誠実な態度が目立ちはじめ建主の要望を充分聞かなくなるばかりか、契約金額以外に工事費を追加請求してくるなどのトラブルもよくある事例で、契約前の説明責任がメーカー側に厳しく問われるところである。

◇ハウスメーカーの評価ポイント(一般の建設業者への評価とも共通できる)

 下記評価項目に適合する数が多いほど企業信用度が高いと評価できるだけでなく完成住宅の質や諸性能(安全性、耐久性、機能性など)も高いと判断できる。これら評価項目は大手と中堅の違いなど会社規模には比例しない。

1・営業社員の質

 a・住宅建築に関わる基礎的素養を備えているといえる。不明な点があれば設計担当予定者と協力することで不備なきよう努めている。

 b・契約の際、後々トラブルなきよう建築予定者に対する説明責任を自覚している。遵法意識を持っている。

 c・営業ノルマ優先のあまり一個の職業人、社会人として当然備えるべき社会常識や倫理意識を低下させていない。

2・プランから設計まで

 a・建築主との打合せは実際の設計者(建築士)が担当している。

 b・設計は外注任せにしないで自社設計となっている。

 c・設計図は必要枚数そろっている。(講座s-8参照)

 d・本来、設計者がその職能に基づき責任もって判断すべき事項を建築主任せにしてはいない。

 e・打合せの際、建築主の質疑に対して誠実、正確な対応ができるよう努めている。建築主にフラストレーションを与えているようなことはない。

3・工事の段階(施工・せこう)

 a・工事進行にあたり現場監督(建築士・建築施工管理技士)と設計者は協力関係にあるといえる。工事現場に設計者の姿がまるで見えないようなことはない。

 b・工事の主要部分(木造であれば大工工事)を外注下請け任せにしないで自社の責任施工で行っている。下請け業者を公正に扱っているといえる。現場のモラルは低下していない。

 c・自社検査体制に不備はない。検査員の資質、検査回数、検査内容とも適正なレベルにあるといえる。(主要な検査には設計者も立ち会う必要があるし、監督は検査結果を書面にして、その都度、建築主に報告する義務がある)工事期間中も建築主の質疑やクレームに速やかに対応できる体制が整っている。

◆建設業の正しい営業とは

 建設業は元々、地場産業的な業界なので地縁、または人脈などの地域における長年の信用と実績の積み上げで受注を確保して成業とするのが一般的で、広告宣伝で受注を確保できるような業種ではない。逆にいえば地味な営業でも経営が成り立つ業種といえる。ハウスメーカーはその点、異質な存在である。

 大手、中堅ゼネコンクラスでは一般的な受注業務の他、公共事業への入札参加、競技設計への参加、企画提案や技術アピール(例、免震工法などの安全向上技術)、コンサルタント業務などを通じて顧客開拓をする手法をとっている。マンション事業者なども内容はともかく現在は販売競争を通じて企画提案型、広報型の営業が主流になってきている。ハウスメーカーも一見、企画広報型の営業をしているように見受けられるが、建主の手持ち予算や事情にも左右されるので実現できる保証はない。注文住宅では個々の建主の事情に則した提案能力が求められてくる。

 建設業の成業の基本は信用にある。実績に基づいた技術と技能の蓄積が信用の担保となっている。顧客である建主はその信用を担保に契約書に判を押すことが良識ある判断といえるだろう。宣伝やセールストーク、カタログのみでは信用の担保にはなり得ない。マンションや分譲住宅のように購入物件の内容が確定しているものは営業担当の説明やカタログ、モデルルームなどが一応、有効な判断材料になるといえる。販売効率をあげることで販売経費の無駄を節減でき、むしろ販売価格を適正価格に近づける効果もあるだろう。

 しかし注文戸建て住宅などのような全く白紙の状態から業者との交渉をはじめなければならない物件では信用のよりどころになるのはあくまで先にあげた”実績に基づいた技術と技能の蓄積”ということになる。これらの水準の判定はモデルハウスやカタログからだけではプロでも判断が難しい。実際の設計図の内容や工事現場のレベル、既存の契約建主の意見などを確認する以外に事実上、手立てはないといえる。もちろんハウスメーカー以外の業者選択も同じことである。

◆今後のハウスメーカーの課題

 ◇量産工業品を売るのとは勝手が違うコマーシャリズムの弊害

 営利追求の手段として住宅を自動車のように販売し続けることには問題が多い。効率よく量産も販売もできない住宅建設で一定の利潤を確保するとなれば、どうしても無理な営業をせざるおえず、結果として建築主に不利益が生じる事例も少なくない。いくら広告や宣伝で企業としての親和性を高めることができたとしても、デザインも新しい設備も目先変わったインテリアも実は売り上げ確保が目的の客寄せの道具と化しているのが現実といっても言い過ぎではないであろう。

 日本に限らず伝統的な住宅や建築史に名を残す住宅が今日でも高く評価されているのはその国の地域性や文化性、時代性などがよく具現化され人々の共感を呼ぶところにある。そこには住宅の商品価値を云々するような考えは微塵もない。むしろそのようなことを問うこと自体、相当異質といえよう。商品価値とは単純に解釈すれば住宅を貨幣の重みに換算しているのに等しい。建築主が金銭価値だけで住宅を考えるようなことはあり得ない。故に商品価値の論理とは利潤追求側の発想といえる。住宅業の難しさとは経済的合理性だけでなく感情や理性を満足させるだけの資質も求められるところにある。利潤をどう確保してゆくかだけで建築主の信を得ることはできない。

 ◇住宅とは資産であり経済、機能、文化、時代が融合したものである

 商品価値を問うのが現代の時代性だという反論もあるかもしれない。では、建主の立場にいる人々が経済性や安全性、機能性、快適性などの基礎的条件以外に何を求めてくるのかである。住宅は消費財ではなく資産として位置づけるべきものと考えれば資産価値を目に見える形で具体化したもの、つまり文化性や時代性などの付加価値ということになってくるのではないであろうか。逆に言えば物的なものだけでは建主が理想と考える住宅を手にすることは難しいといえる。

  
住宅を物質的所産としてみると(住宅に求められる基礎的条件)

経済性・安全性・機能性・快適性(経年とともに価値が劣化する性質のものが多い)

具体的には工事価格、耐震性、防火性、防水性、断熱性、通風、動線、設備機器の機能、住宅全体の使い勝手など諸性能と維持コスト

住宅を価値的所産としてみると(精神文化、精神活動の所産ともいえるべきもの)

文化性・時代性・地域性(風土性)・社会性(価値に普遍性があり経年に影響されることが少ない)

具体的にはデザイン、インテリア、装飾、周囲の環境との調和性、住空間の構成、使用する素材の特性、建築主の望むライフスタイル、クオリティーの現実化、設計者の住宅に対する哲学とデザイン、設計能力、コミュニケーション能力などの反映

 

 ◇早急に改善が求められる企業姿勢

 私企業であるハウスメーカーに社会性や文化性を問うのはいささか現実離れの感もないではないが、例えば資本力を活かし、バリアフリー、省エネなどの付加価値をつけた木造の郊外型低層集合住宅を広く建設し分譲販売するなどは販売効率、企業利潤追求という点でも優れているのではないか。地価下落傾向が続く今日では有効な住宅販売の一つといえよう。それらが住宅価格のローコスト化や住水準の向上、人々の前向きなライフスタイルの変化に貢献するのであれば企業としての信用創造にもつながり経営も楽になってゆくというのはいささか楽観すぎるであろうか。

 今後ハウスメーカーの企業活動に具体的に求められることをまとめると

 1・戸建て住宅だけでなく集合住宅や分譲住宅へ多角化した住宅生産実現による経営の効率化と財務内容改善、販売経費、営業経費の節減。

 2・地域性の重視(地域の気候、景観、生活習慣、文化への配慮、地場産業との連携、協力)。

 3・有能な人材確保により企業としての質的向上を計り、技術と技能、実績を信用の担保とした堅実な営業活動を推し進め、結果として真にプロフェッショナルな技術集団としての企業信用力を高めてゆく。

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