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B-10

高齢者身障者との同居住宅の解説(バリアフリー)

 ◆バリアフリーの考え方(Barrier free 障害から解放された、障害のない)

 バリアフリー住宅とは主に高齢者、身障者など体の不自由な人達が自らのハンディにより発生しうる生活上の障害や危険を克服できるように配慮された住宅のことをいう。例えば転倒、転落の危険を避けて歩行、階段の昇降、入浴などができるように配慮された設計が最初からなされている。バリアフリー住宅は高齢者対応住宅とほぼ同義語として使われているが、一般の病人やけが人、小さな子供なども対象として含めてよいであろう。

 実際、家庭内災害(家庭内における不慮の事故)による死亡者は年間11155人(内65歳以上の高齢者は8378人(平成12年度厚生労働省統計))となっている。犠牲者には高齢者のみでなく幼児やその他の年代の人達なども含んでいる。このような現状から考えてゆくと、むしろ現在の一般住宅には人が普通に生活してゆくうえでも多くの危険や不自由をともなう欠陥が内在していると言える。これからの住宅の標準としてはバリアフリーは当然あるべき機能として取り扱ってゆくべきである。

 バリアフリー住宅を設計するうえで大切なことは健常者と高齢者、身障者が少なくとも住宅内ではできるだけ対等の立場で生活ができるということにある。つまり高齢者、身障者が家族の支援がなくとも自立行動ができるよう心理的にも物理的にも障害の少ないプランを実現することが最優先課題になってくる。

◇家庭内における不慮の事故死者数類別表(平成12年度厚生労働省統計より編集)

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5歳未満の幼児

5歳から64歳まで

65歳以上の高齢者

転倒転落

45

550

1568

溺死等

44

421

2828

窒息等

182

516

2777

火傷等

35

548

891

中毒等

0

239

109

その他

4

193

205

合計

310

2467

8378

  ※内、階段、ステップからの転倒転落死は418人

 ◆バリアフリーのノウハウ

◇プランは洋室中心が便利

 一般に着座あるいは立ち上がる時に腰の上下動作の大きい座式(和式)は椅子式に比べ足腰の弱い高齢者にとっては苦痛になる。また介護を必要とする場合もベッドの方が都合がよい。寝るときだけは畳を希望する人は畳ベッド(部屋の一部を改造工夫したもの)なども良い選択になる。

◇出入口は引戸にする

 部屋の出入口は基本的に引戸を使用するのがのぞましい。引戸はスペースの節約になるだけでなく開閉時の事故もドアに比べると少なくなる。価格的にも金物類などはドアより安い。敷居に埋込型のレールを取り付ければ段差もなくなる。ゴム製の戸車を付ければ開閉はスムースにできる。内錠を付けることも可能である。ハンガー引戸(上吊り戸)は機構が複雑でコスト的にも高くなるが玄関室や洗面所など人の出入りの多いところには適している。このタイプの引戸は指一本の力でも開閉ができるので腕の力を失っている人にも便利である。

 車椅子利用の出入口の有効幅は標準で90cm必要になる。(最低必要巾は85cm)通常のものは75〜80cmとなっている。また明かり取りを戸に付けておくと部屋の外側にいる人でも照明の点灯状況が分かるので管理上も案外便利である。明かり取りは安全を考えガラスの替わりにポリカーボネート板(強化プラスチックだが見た目はガラスである)を使用することになる。

◇浴室、洗面所、トイレの扱い方

 浴室の出入口は水返しの必要から段差が付いているが最近は段差無しでも水処理ができる出入口専用の排水溝がある。また浴室戸と一体化したものも販売されている。但しこれらを使う場合でも洗い場の排水はかならず今までどおり必要になるので要注意。手摺は水回り専用で安全および利便性に配慮されたものが各種豊富に用意されている。

 バリアフリーに配慮されたユニットバスが各メーカーから市販されている。ユニットバスとはプレハブ化された浴室のことでマンションなど集合住宅では一般的に使われている。利点としては工期短縮、工事合理化による工事費節減が期待できること、老朽化による腐朽のおそれがないこと、清掃が容易で衛生が保ちやすいことなどがあげられる。今後は戸建ての木造住宅でも積極的に採用されてゆくことだろう。

 洗面所と手洗いは一部屋にまとめると便器廻りに広いスペースが確保しやすく車椅子利用者にも便利である。洗面化粧台なども車椅子利用者に支障なく使えるタイプが用意されているのでメーカーに確認してみると良い。

◇台所の扱い方

 台所設備にも車椅子利用者のために一部改造されたものが販売されている。メーカーのショールームなどで一度実際に見学してみるとよい、見積もりもしてくれる。台所の通路(流し台と食器棚の間など)も広めのスペースが必要だ。通常は90cmあれば足りるが少なくとも1m40cmくらいは確保したいところ。流し台セットと収納のレイアウトが上手にできれば台所スペースは5帖以内に収まるので通常と比べてもさほど大きな差はない。

 車椅子利用、高齢者に配慮された台所収納で注意したいことは吊り戸棚による高所収納は安全上も利便上も問題があるので、できるだけ手の届く範囲にまとめて収納ができるようにすることだ。収納棚の扉は開き戸の方が使い勝手はよいのだが、車椅子利用の場合は引き戸になる。扉にはポリカーボネート透明板をはめ込み収納の中味が見えるようにしておくと便利である。膝位置より下の収納や奥行きがある場合は引き出し式を採用する。

◇階段の扱い方

 一般の住宅の階段は13段から14段のものがほとんどだが、15段にして途中踊場を付けるとかなり登りやすくなる。スペースに余裕があるようであればもう少し段数を増やしても良いであろう。手摺は一回り太めのものを付ける。高齢者は自分の体重を手摺にかけるような登り方をするので通常の手摺の径ではやや不安定になる。

 最近住宅用のエレベーターが数多く販売されているが費用的には大変高価なもので、標準住宅の予算で比較しても工事費を少なくとも10%以上押し上げてしまう。エレベーター設置を検討するのであればその前に階段を上りやすくするとか高齢者が上階に行かなくても生活上差し支えないようプランを再考するのが先決である。また、将来設置のために予めスペースを確保しておき、設置するまでは取り合えず物入やクロークとして代用する手段もある。(電気配線は予めしておく必要がある)

◇床の扱い方

 車椅子の走行に最も適している床材はビニル床シート(クッションフロアーと呼んでいるがクッション性はあまりない)である。滑りにくく清掃もしやすく傷も付きにくい。予算に余裕があればコルクタイルが良い。コルクタイルはフローリングに比べると傷が目立たず弾力があるので転倒しても危険を少なくすることができる。清掃も比較的しやく耐久性もある。階段の床材にも適している。

 床の段差をゼロにすること自体は設計上も工事上も難しいことではない。段差を無くすことはつまずき転倒の危険を解消するだけでなく、使いやすさにも貢献する。掃除もしやすい。二階以上の床は構造上、段差をゼロにできない場合があるので敷居を斜めにカットしスロープ状にするとかなり改善でき床段差がほとんど気にならなくなる。

◇手摺の扱い方

 手摺の実際の取付けは使う人の意見を聞きながら位置や高さを決めるのがのぞましい。手摺りを必要とする場所、あるべき場所にないようでは後で困ることになる。水廻りは衛生設備機器メーカー(TOTO、INAXなど)で専用のもが販売されている。カタログを取り寄せることもできる。ショールームにも展示してある。手摺を取付ける壁は下地を予め補強しておく必要がある。また二階窓で外側に手摺がない場合は墜落防止のため部屋側高さ1m10cm以上のところにかならず手摺を付けること。

◇外回りで配慮すべきこと

 少なくとも玄関から門までのアプローチはゆるいスロープで処理するようにしたい。夜間足元が良く確認できるよう照明の配置には工夫をし自動点滅装置を応用すると便利である。

 ◆バリアフリー住宅の問題点

 バリアフリー住宅は一般の住宅に比較すると水廻りや廊下、階段スペースを広くとる必要から床面積が大きくなりがちである。敷地と予算に余裕があれば問題はほとんどないが都市部の限られた敷地での建築は法規制の厳しさもあって実現がやや難しい場合もあるだろう。実現のための処方としては従来の生活習慣や住宅計画の範囲にとらわれない、実用性、機能性優先の考えを取り入れることも選択肢の一つといえる。無駄が少なくなる。予算面ではバリアフリー専用の公的融資も期待できる。設計者がローコスト住宅のノウハウを熟知している人であれば、尚、実現の条件は整ってくる。

 

車椅子利用を前提にした住宅の工夫事例

1・玄関までのアプローチを勾配1/8(8m進行で1m上がる)から1/12のスロープとする。安全のため金属手摺りも適宜配置する。玄関戸は引戸とする。

2・一階床はコンクリートとし土足歩行を前提に考える。コンクリートの上にモルタルを塗れば一般の床材(タタミ・カーペット含む)は自由に張れるので問題ない。断熱材、床暖房も付設可能。土足歩行に適した床材も用意されている。

3・庭、通路にできるだけ広い範囲デッキ(スノコ)を付設し段差なしでダイニング、リビング、一般室から庭に自由に出入りできるようにする。ガーデニングは植木鉢、プランターなどが中心になる。

4・廊下は有効幅(壁どうしの幅)1m50cmとし人とのすれ違いや車椅子でのUターンができるようにする。(最低必要巾は1m40cm)

5・玄関、リビング、廊下などに適宜吹き抜けを配置し、二階との連絡を容易にする。吹き抜けは床面積に算入されないので容積率制限(法律による床面積制限)には影響しない。

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