第9話 「その麺食わすな」

(by みなみさん)

Vレンジャー本部。
今日もみのから送られてきた思いっきり商事の健康食品を食べている大袈裟とVレンジャー。

井ノ原「おい、これ食べてみろよ。胚芽入りパン。」
こういう時、きまって手を出すのは岡田である。
岡田「これか〜?うまそうやん。げっ、ま、まずい・・・」
森田「お前、(と三宅に缶入りの飲み物を差し出して)これ飲めよ。」
三宅「なんだよ。えっ、野菜ジュース?あ、青汁じゃん、これ。」
それを聞いたとたん真っ青な顔になるあい。
あい「やだ、もう。もっと他の食べ物ってないの?」
大袈裟「例のブツなら、用意してあるけどね。」
井ノ原「例のブツというと・・・」
森田「いつものあれですか。」
ゆっくりと頷く大袈裟。
三宅「え〜?また今日もかよー。」
大袈裟がじろっと三宅を横目でにらむ。
岡田「文句言うんなら、お前は食べんでええ。」
あい「この変な食べ物よりずっといい。それくださ〜い。」
にっこり微笑んだ大袈裟が持ってきたのは、いつものようにインスタントラーメンであった。


坂本の地下工場。
マボ「くっ、くっそ〜!絶対あいつら、ただじゃおかねー。」
トモヤ「あんなのありかよ!あの生意気なちび野郎をギャフンと言わせてやる。」

坂本「まあ、待てよ。君らは負けたわけじゃないんだから、そう熱くなるなって。」

タツヤ「でも、俺、やっぱあいつらちょっときたないと思うよ。」
ジョー「せやろ?正々堂々と勝負をしよらへん。やり方がひきょうや。」
男3「なんかやな奴等だよな。あの大袈裟とかいうじじぃもバカそうに見えて、油断できない。」

坂本「そうだ、あいつは昔からそういう奴だった・・・」
トモヤ「え?坂本さん、前から知ってるの?」
坂本「いっ、いや、まあ、昔の話だ。それより君達、今度こそ頼むぜ。」
マボ「俺が行くよ。このままじゃ引き下がれないしな。」

Vレンジャー本部。
三宅「あ〜あ、結局、今日もインスタントラーメンだったー。」
岡田「しゃあないやんか。みのさんの健康食品かこれかしかないねんから。」

森田「俺、食べただけで、どのラーメンか当てられるんじゃねーかな。」
井ノ原「利きインスタントラーメンか。俺もできそう。」
あい「せめて焼きそばとかスパゲティーくらい入れてくれればいいのに。」
大袈裟「いいやっ、そんなのは邪道だっ。そんなものを混ぜてしまうとわかりづら〜〜い!」

三宅「なんでラーメンのこととなると、こうテンションが上がんだろ?」
岡田「さっき見たら、すごい量のインスタントラーメンが買い込んであったで。」

森田「・・・・・・・・」
井ノ原「なに?お前泣いてんの?涙出てるぜ。」
森田「泣いてなんかねーよっ。ちょっと情けないだけじゃん。」
あい「あたしも情けない・・・」

マボがヘルメットをかぶり、何かをイメージし始める。彼らの前方のモニターにブロッコ・ロボに似た形のものが写し出されてくる。

ブロッコ・ロボの緑に対し、現れてきたロボットはややオレンジがかった赤。

頭の形は巨大どんぶり形、そこからもうもうと湯気がたっている。

坂本「なんだ?あのロボットの形は?どこかで見たことあるな。」
マボ「ラ王だよ、インスタントラーメンの。有名だから知ってんだろ?CMはいけてるしさ。」

坂本「お前もラーメンが好きなのか?」
マボ「お前もって・・・。俺はラーメンじゃなくてラ王が好きなんだよ。」
聞いているのか、いないのか、坂本は遠い目をしてモニターを見つめている。


ラ王・ロボが住宅地に近づいて行くと、あたりの人間は狂ったようにインスタントラーメンを取り出し、やかんまたはポットで沸かした湯を入れ、3分間待って、むさぼるように食べ始める。急いで食べて、やけどする者もいる。

そのうちに家にストックしていたラーメンが底をつき、人々は争って、コンビニやスーパーでラーメンを買いあさる。


Vレンジャー本部。
大袈裟「みんな、集まってくれ。これを見てほしい。」
大袈裟がスクリーンを指さす。
ラーメンの食べ過ぎで苦しんでいる人々の映像が写しだされる。
井ノ原「なんだ?これは。なんで、みんなこんなにラーメンを食べるんだ?」

大袈裟「このロボットのせいなんだ。」
スクリーンにはラ王・ロボの映像が写される。
森田「う〜ん、この形と色は確かラ王しょうゆ味・・・」
三宅「こんな時になに言ってんだよ。」
大袈裟「このロボットから出る湯気とその匂いに人々は踊らされているんだ。このままでは、みんな身体を壊してしまう。Vレンジャー、出動してくれ。」

あい「でも、そこへ行けば、あたしたちも同じ目に合うんじゃ・・・」
大袈裟「その可能性はある。だが、安心しろ。そうなってもだいじょうぶなようにしっかりラーメンの量は確保してあるっ。」

岡田「そのためやない思うけどな。」
立ち上がり、変身するVレンジャーたち。

住宅地の近くに仁王立ちになっているラ王・ロボ。
ブロッコ・ロボが轟音とともに降り立ち、どかどかっと近づいて行く。

坂本の地下工場。
マボ「やったな。あいつら無防備に近づいてきたぜ。飛んでベープに入る夏の虫とはこのことだ。」

坂本「なるほど。あいつらもラーメンの魔力からは逃げられないってことだな。」

マボ「来るぜ、来るぜ。その麺食わせろって。」
顔を見合わせ、ほくそえむマボと坂本。

ブロッコ・ロボに乗ったVレンジャー。
三宅「あれ?ずいぶんあのロボットに近寄ったのに、俺、ちっともラーメンが欲しくならねーよ。」

森田「俺も。なんかラーメン食い過ぎちゃってさ。正直あきあきしてんだ。」

あい「もしかして、これって大袈裟博士のおかげってこと?」
岡田「いやぁ、ただの偶然や思うで。」
井ノ原「とにかくチャンスじゃん。いまのうちにたたんじゃおうぜ!」
岡田「よ〜し、俺から行くで。ラーメン大好きツル!」
三宅「その言葉聞きたくねー。」

ブロッコ・ロボは頭を低くして、ラ王・ロボにつっこんでいく。
はねとばされるラ王・ロボ。
しかし頭のどんぶりから落ちてきた熱いつゆにブロッコ・ロボは左手を焼かれる。

岡田「げっ、煙が立ってるわ。だいじょうぶかいな。」
井ノ原「離れて攻撃したほうがいいな。よし、ラーメン大好きツル!」

坂本の地下工場。
マボ「な、なぜだ。なぜ、あいつら平気なんだ。こんなばかな・・・」
坂本「あんなにラーメンの好きなやつの作ったロボットなのにな・・・」
マボ「いったい誰のことなんだよ?こんな時にまったく・・・」

ブロッコ・ロボの投げる巨大ボーリング・ボールにはねとばされるラ王・ロボ。

だが、ラ王・ロボもそのボールを投げ返して反撃する。
ボールが当たってつんのめるブロッコ・ロボ。

井ノ原「く、くそっ。こっちの武器を逆手に取りやがって。許さねえ。」
三宅「ちょ、ちょっと待ってよ。なんか考えてからにしたほうがいいって。」

あい「そうよ。(森田のほうを見て)なにぼけっと見てんのよ。」
森田(ぼそっと)「あん中にさっきの納豆入れてー。」
三宅「えっ、なに?なに言ってんの、お前。」
井ノ原「ふざけんなよ、こんな時に。」
あい「そうよ。ただでさえ、さっきの野菜とかのことなんて考えたくないのに。」

岡田「いや、意外にいい手かもしれへんで。」
三宅「え?どういうこと?」
岡田「あいつもそんなもん嫌いなんちゃうか。逃げ出したくなるくらい。」
井ノ原「なるほど。おまけに俺たちあれの残りを食べなくてもよくなるしな。」

森田「よぉし、じゃあラーメン大好きツル!」

ブロッコ・ロボが大量の納豆をラ王・ロボの頭のどんぶりに放り投げる。
マボ「な、な、な、なんなんだー!頭がヘンになるー!納豆くせー!」
井ノ原「次は俺。梅ぼし!梅ぼし入れてやる。ラーメン大好きツル!」
今度は大粒の南高梅減塩梅干しがラ王・ロボの頭を直撃する。
マボ「げっ、おっ、俺のラ王になにするんだー!」
あい「ラーメン大好きツル!野菜ぜんぶ〜!」
ニンジン、ほうれん草、かぼちゃ、その他そこにある緑黄色野菜を中心としたあらゆる野菜がラ王・ロボの頭を襲う。

三宅「青汁も入れちゃえー。ラーメン大好きツル!」
つづいて青汁も放り込まれる。
岡田「あ、俺、あれいらへんわ。胚芽入りパンとひじき。ほなラーメン大好きツル!」

胚芽入りパンとひじきがそこへ加わる。もはやラ王・ロボの頭部は食品のごみだめ状態である。

ラ王・ロボはついに手と足と胴体をどんぶり状の頭に引っ込め、回転しながら空を飛んで逃げて行く。


Vレンジャー本部。
一人残っていた大袈裟が頭をかかえている。
大袈裟「ぼっ、僕の大事なラーメンに、ラーメンの王様・ラ王になんてことを! しっ、信じられない・・・・。そ、それにみのさんに何と言ったらいいのか・・・」


坂本の地下工場。
マボが頭をかかえ、吐きそうになっている。
マボ「き、気持ち悪い・・・。あいつら、なんてことしやがるんだ。」
坂本「おい、だいじょうぶか?相当ダメージ受けてるみたいだな。」
マボ「あいつら、やっぱりきたないっ。やり方だけじゃねー。見た目もきたねーじゃねーか。」

坂本「ああ、そのとおりだ。おいっ、大袈裟っ、Vレンジャー、きたねーぞ!」


Vレンジャー本部。
スポンサーのみのが、ダンボール箱を抱えて入ってくる。
みの「いやー、君達ー、見たよー。ラーメンを捨てる決心をしたんだね。」
大袈裟「いえっ、社長さんっ、あれは決してそういうことでは・・・」
みの「いいよ、いいよ、わかってるよ。うん、うん、たまには別のものを食べなくちゃね。そこでだ。」

と、みのはダンボール箱をみんなの目の前で開く。
みの「ほらっ、今回はカレーを持って来たんだよ。」
岡田「えっ、カレー?俺、カレー大好物やねん。」
井ノ原「お前、キレンジャーだもんな。」
あい「よかったー。今日は野菜、野菜って言わないんだ。」
みの「なに言ってるの。このカレーはね、5種類の緑黄色野菜が入っているんだよ。他のカレーなんて食べちゃだめだよ。とろけるうまさのビーフカレーね。」

森田「俺、ラーメンと健康食品以外なら、なんだっていいよ。」
三宅「うん、もうなんだって一緒。」
みの「なにを言うの。だからね・・・」
しかし、カレーをむさぼり食う大袈裟とVレンジャーの中にみのの言葉を聞いている者はいなかった。


ナレーション「今日もVレンジャーの活躍によって地球の平和は守られた。正義の味方はきたなくてもいいのか、それとも勝った者が正しいのか。多くの謎を残しながら、明日も彼らは戦いつづける。ゆけ!Vレンジャー。地球のため、坂本と鉄板DISHをいてこましたれ!」


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