第8話 「みのさん争奪戦・後編」

(By みなみさん)

コースにつく5人。Vレンジャーの4人とマボである。
あいが、ピーッとホイッスルを吹くと同時に飛び出したのは、マボである。
真っ先に網をくぐり抜け、ぶら下がったパンにかぶりつく。
続くのは、森田、岡田、井ノ原の順である。三宅はパンが食べられず、延々遅れている。

マボは平均台、跳び箱と順調にこなしたが、バスケットボールのシュートに手間取っている間に森田、岡田に抜かされてしまった。が、逆立ちでふたたびトップに躍り出て、そのまま一気にゴールする。2位に岡田、3位は井ノ原。森田はバットに頭をつけて10回転でふらふらになってしまい、4位。三宅は最後までビリであった。

みの「いや〜、すごいねえ。君、なんて言ったっけ?抜群の俊足じゃないの。」

マボ「我々、鉄板DISHは身体を張ったことが得意なんです。どんな競技でも、たいていの相手には負けたりしませんよ。」

森田「くそっ、あのやろー。」
岡田「次は負けへんで〜。」

坂本の地下工場。
坂本と鉄板DISH の残りのメンバーがTV中継を見ている。
坂本「あいつ、たいしたもんだな。」
ジョー「当たり前やろ。俺たち鉄板DISHにかなうやつらなんておらへんで。」

タツヤ「リーダーはともかく、マボが負けるわけないな。」
男3「楽勝、楽勝。」

みの「次の競技はね、まばたきがまん大会だよ。最後までまばたきしなかった人の勝ち!」

不安げに回りを見回す4人。自信満々のマボ。
あい「じゃあ、いくわよ。スタート!」
三宅「あっ、いてっ。開けてらんないよー。」
すぐに脱落してしまった三宅。続いて森田、岡田も脱落する。
井ノ原「お前ら、なさけねーなー。」
三宅「だって、俺たちそんなに目が細くねーもん。倍以上乾くんだよ。」
井ノ原「お前なあ・・・」
だが、その井ノ原もついにまばたきしてしまう。ひとりマボだけは余裕の表情で残っている。

マボ「俺、こういうの全然平気だからさ。」
岡田「人間ちゃうで。どないなっとうんや。」
三宅「でも、このままじゃまずいんじゃん?俺たち2回続けて負けてる。」
井ノ原「ああ、気合いいれないと。おい、お前、また何ガンたれてんだ。」
それまで黙りこんでいた森田がマボの前につかつかっと歩いていく。
森田「ちょっと待てよ。お前、俺とちゃんと勝負しろよ。」
マボ「これは、ちゃんとした勝負じゃないのか?負け惜しみ言ってんじゃねーよ。


森田「こんないいかげんなやつじゃなくて、俺と1体1の勝負をしろっての。」

マボ「1対1?なにをしろってんだ?」
森田「サッカーのPK対決でどうだ?」
そこへトモヤが割って入った。
トモヤ「待った。そういうことなら、俺が相手になる。」
森田「なんだよ、てめーは。この背高のっぽ野郎。」
トモヤ「俺が相手になってやるってんだよ。このちび野郎。」
森田「なにをー!」
トモヤにつかみかかろうとする森田だが、三宅に後ろから押さえ込まれる。
三宅「もうやめろって。ちゃんと勝負するんだったらいいじゃん。」
森田「ちぇっ。じゃ、お前、(と、トモヤを指す)ちゃんと勝負しろよ!」
トモヤ「お前こそ。みのさん、これでいいですか?」
急にふられたみのは一瞬目をぱちくりさせた。
みの「あ、ああ、もちろんいいよ。いやー、そのほうがずっと華があるよ。うん、いいじゃない。」

森田「じゃあ、キッカーとキーパーを交代で、一人5本づつ。」
トモヤ「よし、いくらでもかかってこい。」

サッカーゴールのほうに歩いて行く森田とトモヤ。
後をついていくみの、マボ、カメラマンたち。少し離れて大袈裟と井ノ原、三宅、岡田,
あいがつづく。
井ノ原「大袈裟博士、俺たちあいつに勝てると思いますか?」
三宅「なんかあいつ一人で熱くなって向かっていってるけど、俺、不安なんですよ。」

岡田「このままやと、みのさん、あいつらのスポンサーになってしまうんちゃいますか?」

あい「もしそうなったら、あたしたちどうしたらいいんですか?」
大袈裟「君らは不安になると言葉がていねいになるねえ。」
井ノ原「そんなことどうでもいいですよ。で、どうなんですか?」
大袈裟「う〜ん、勝てない、だろうねえ。」
三宅「そ、そんな。どうにかならないんですか?」
大袈裟「君らの身体能力をカバーし、強力な力を与えるためのロボットだったんだ。今回は君らの肉体だけがたよりだからねぇ。難しいところだな。」

岡田「じゃあ、みすみすあいつらにみのさんを穫られるのを見ているってことですか?」

大袈裟「どうかなあ?これは単純な勝負じゃないと思うけどね。みのさんの心をつかむことが大事なんじゃないかな?」

井ノ原「みのさんの心をつかむ?」
三宅「それって一体どうすればいいんだよ。」
あい「でも、みのさんは会社の宣伝のことばっかり・・・」
岡田「やたら派手に、派手にっていうしなあ。」
大袈裟「そうだよ。だから・・・」
何事かひそひそと相談する大袈裟と井ノ原、三宅、岡田、あい。

坂本の地下工場。
坂本「こんどはサッカーらしいな。俺はほとんどサッカーは知らないんだが、あいつは得意なのか?」

男3「ああ、あいつサッカーはすごいよ。絶対だいじょうぶ。」
ジョー「しかし、えらい身長の差のある組み合わせやなあ。大人と子供や。」

タツヤ「やっちまえ、トモヤ。」

森田とトモヤのPK対決。
まず森田が軍手をはめ、ゴールキーパーの位置につく。トモヤはシュート位置に立ち、左足でボールをもてあそんでいる。

トモヤ「一本ずつ交代にするか?それともまとめて5本いく?」
森田「めんどくせーな。まとめていっちまおうぜ。」
みの「待ってよ。それじゃ盛り上がらないよ。一本ずつ交代にしてよ。」
トモヤ「はいはい。」
森田「しょうがねーな。」

一本目。
トモヤのシュートは左に大きくそれる。
つづく森田はやはり上方に大きくそらせてしまう。

二本目。
トモヤのシュートは森田の右をねらうが、森田のガードにあってはじき返される。

森田のシュートはトモヤの左のゴールポストを直撃するもノーゴール。

三本目。
トモヤのシュートが森田の右の足元を襲う。ついにトモヤ一本目ゴール!
森田のシュートはゴールの左上方をねらうが、トモヤにはじき返される。

四本目。
トモヤのシュートは森田の頭上を襲うが、ゴールポストにはね返される。
森田のシュートはわずかに右にそれる。

井ノ原「あと一本か。一本リードされてる。」
三宅「ということは、次決められるか、はずしたら・・・」
岡田「俺らの負けってことか。」
あい「やだ。また負けちゃうの?」
黙ったままの大袈裟。
井ノ原「あいつにも意地があるだろう。あいつを信じよう。」
祈るような気持ちで見つめるVレンジャーたち。

最後の五本目。
トモヤのシュートがゴール右下方を襲う、が、森田のせいいっぱい伸ばした左脚がかろうじてクリアー。

森田のシュートはトモヤの右手にあたったあとゴールポストに吸い込まれる。森田初ゴール!ついにタイスコアとなる。


三宅「やった。あいつがんばったじゃん。」
岡田「俺、見直したわ。」
あい「でも、これじゃ勝負つかないんじゃない?」
井ノ原「サドンデスで延長するのか?」
大袈裟は何も言わずに微笑んでいる。

みの「引き分けになっちゃったね。どうしようか。延長戦するの?」
トモヤ「当たり前でしょ。このままじゃ、俺、引き下がれないっすよ。」
森田「俺も。」
みの「じゃあ、やっちゃおうか。うん、いいよ、盛り上がるよー。」
そこへつかつかと大袈裟がやってきて、にっこりと笑顔でみのに言った。
大袈裟「まあ、いいじゃありませんか。両者ともよくやったってことですよ。」

マボ「じじぃは引っ込んでろよ。まだ続きがあるんだ。」
大袈裟「こんなことに勝負したって、みのさんの会社のいい宣伝にはならないでしょう。」

みの「えっ?でも思いっきり商事の文字が長い時間TVに出てくれれば、いいじゃないの。」

トモヤ「このままじゃ、みんなおさまらねーんじゃねーの?」
マボ「俺たちは白黒はっきりつけてーんだよ。」
森田は、大袈裟の表情の中に何かを感じたのか、黙ったままじっと大袈裟を見つめている。その森田を井ノ原がそっと引っ張って行き、何事かを耳打ちする。

大袈裟「みのさん、こんなただの力づくでの勝負なんかよりも、もっと華のあるパフォーマンスはどうですか?」

みの「パフォーマンス?おっ、いいねぇ。あの、君が本部で見せてくれたようなの?」

大袈裟「あの時は私一人でしたが、私とVレンジャー五人で派手にお見せします。みんな、用意はいいね。」

大袈裟が天に向かって手をかざすと、またしてもなぜか流れる「TAKE ME HIGHER 」。大袈裟とVレンジャーは曲に合わせて歌い踊る!

坂本の地下工場。
ジョー「な、なんや?一体何が始まったんや?」
タツヤ「あいつらとの勝負はどうなってんだ?なんでいきなりダンスが始まるわけ?」

男3「リーダーがあいつらひきょうだって言ってたの、わかる気がするなあ。ん?坂本さん、どうかしました?」

坂本「なんだ、あのピンクの女のへたくそさはっ。く、くそっ。この曲を聞くとなんだって身体が。」

坂本は動き出そうとする自分の身体に必死に逆らっているかのようだった。
ジョー「坂本さん、俺と年かわらへんのやから、そんなダンスなんて無理したらあかんて。骨折でもしたら大変や。」

坂本「な、な、なんだって〜!そんあことはないっ。たぶん俺が一番踊りはうまいっ。」

タツヤ「まさか、あいつらの仲間に入りたいなんて言うんじゃないだろうな。はっはっはっは・・・」

男3「何言ってんだよ。失礼じゃん。はっはっはっは・・・」
鉄板DISHの笑いがむなしく工場に響く。

歌い終わってポーズを決めるVレンジャーたち。
みの「いや〜、よかった。ホントによかったよ。君達はすごいっ。大袈裟くん、僕は全面的に君達を応援することに決めたっ。」

大袈裟(息をきらしながら)「ほっ、ほんとですかっ。ありがとうございますっ。


「やった〜っ!」
と大喜びするVレンジャー。
トモヤ「ちょーっと待った!」
マボ「さっきの話はどうなったんだ!」
みの「あ、君達、君達はほんとにすごかった。だけどねぇ、うちの会社は彼らのスポンサーになることに決めちゃったんだよ。悪かったねぇ。ま、スポンサーなんていつも気まぐれなものだからね。よかったら君達に知り合いの会社を紹介するよ。ということで納得してくれないかなぁ。」

トモヤ「納得できないっ!いいか、(と森田を指さす)お前との決着は必ずつけてやる。首を洗って待ってろ!」

マボ「そうだ。俺たちは負けたわけじゃない。この仕返しはかならずさせてもらう。」

それぞれに捨てぜりふを残し、去っていくマボとトモヤ。

大袈裟「それでは、みのさん、これからもよろしくお願いします。」
みの「ああ、わかってるよ。君達のTV出演スケジュールもたてないとね。いやー、いろいろ忙しくなるねぇ。」

森田「ちょ、ちょっと待った。じゃあ、誰かひとりってのが全員に変わったってことかよ?」

三宅「そんなぁ、スポンサー横暴じゃん。」
岡田「そんなんいやや〜。」
あい「あたしはいいかな。デビューが近づいたって感じ。」
井ノ原「大袈裟博士まで一緒かよ。」
大袈裟「ん?なにか問題あるかな?」
井ノ原「いや、べ、べつに。」
森田「ところで、俺、わからないことがあるんだけど。」
三宅「えっ、なに?」
森田「あの曲、なんでいきなり流れたの?」
大袈裟「それは・・・ひ・み・つっ!」
岡田「なんやねん、それ。」
井ノ原「俺、わかるような気がするぜ。博士の背負ったあのでかい黒板消し、あん中じゃねーの?」

「なるほど〜!」
思わず納得したVレンジャーであった。

(第6話 了)

 TO BE CONTINUED!


ますます快調Vレンジャー!! 9話をお楽しみに!!


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