第7話 「みのさん争奪戦・前編」

(By みなみさん)

レンジャー本部。
ラーメンを食べているVレンジャーの五人と大袈裟。
三宅「あ〜あ、今日もまたラーメンじゃん。もう、飽きちゃったよ。」
大袈裟「ラーメンはすばらしい食べ物じゃないか。ラーメンは中国四千年の歴史の集大成といっても過言ではないっ。しかも中国から日本に渡ってきたラーメンは、ここで劇的に発展している。しょうゆラーメン、みそラーメン、とんこつラーメン。日本人の好みにあわせてここまで適応し、かつ個性的になった食べ物はほかにはないんだ!」

ラーメンを食べる手を休め、あきれたように大袈裟を見つめる五人。
井ノ原「まあ、たしかにあんたはラーメンが好きみたいだな。なんたってパスワードがあれだもんな。」

岡田「たまに食べるんはええねんけどな、こう続くといやになるわ。」
森田「もっとこう、肉とか魚とか栄養になりそうなもんはねえのかよ?」
大袈裟「スポンサーが食事をごちそうしてくれたときは、インスタントラーメンのほうがいいと言ってたじゃないか。」

あい「だって野菜きらいなんだもん。」
井ノ原「どうせ予算が足りないんだろ?」
大袈裟「えっ?そ、そ、そんなことはない。断じてない。」
岡田「ほんまか〜?なんかあやしいで〜。」
森田「もっとましなスポンサーみつけろよ。俺達、戦うまえに飢え死にしそうじゃん。」

大袈裟「ま、ま、それはいずれ努力するから。ね。」
井ノ原「ほんとだろうな?もうラーメンはしばらくごめんだぜ。」
そそくさとコンピューターに向かう大袈裟。
三宅「あー、もう食べれない。」
井ノ原「食べれないじゃなくて、食べられないだろ?」
森田「もう、いちいちつっこむなよ。」

坂本の地下工場。坂本と鉄板DISHの5人が集まっている。
坂本「また失敗か。君達も口ほどにはないな。なんだってあんなやつらに勝てないんだ。」
ジョー「ちょっと待ってや。あんたかって、やられてたやないか。で、俺たちが呼ばれたんやろ?」

男1「まあ待て。まともに行ったんでは、またやられる可能性もある。バカそうに見えて、案外頭のいいやつらだ。」

男2「頭がいい?そうかあ?俺たちとどっこいどっこいじゃねえの?」
タツヤ「いや、なめてかかると痛い目にあうぜ。なにしろあいつら、チームワークがいい。」

男3「チームワーク?そんなもんでやられるってのか?」
坂本「たしかにあいつらのチームワークはばかにできない。だが、スポンサーはどうかな?」

男1「スポンサー?」
ジョー「そういやあ、なんか背中についとったわ。」
タツヤ「たしか思いっきり商事とか。」
男2「なにそれ。かっこ悪い・・・」

Vレンジャー本部。
さっそうと現れたのは、彼らのスポンサー・思いっきり商事社長みのである。

みの「君達、いったい何食べてるの?ラーメンじゃないか。もっと身体にいいもの食べないとだめじゃないか。」

井ノ原「ほら、チャンスじゃないか。言ってやれよ。」
井ノ原に背中を押されて、みのの前に出る大袈裟。
大袈裟「しゃ、社長さんっ、そっ、そのことなんですがっ。」
みの「何?言ってごらんよ。」
大袈裟「みんなの食生活向上のため、食費を上げていただけないかと。」
みの「食費?君達ねえ、そんなラーメンみたいなもんばかり食べてるから食費がかかるんだよ。ここだってプランターを入れれば野菜くらい作れるだろう。」

三宅「まってよ。そんなこと言ったって無理だよ。俺たち、ろくなもん食ってないんだから。」

井ノ原「そうだよ。スポンサーなら、ちゃんとスポンサーらしくしろよ。」
みの「だってねぇ、もっとうちの会社を宣伝してもらわないとねぇ。」
森田「宣伝?みんなの背中に思いっきり宣伝してんじゃん。」
みの「だめだめ、あんなのじゃ。もっとテレビとかにもバンバン出てもらってさぁ。」

大袈裟「ちょ、ちょっと待ってくださいよ。最初の話とちがうじゃないですか。」

みの「ちがうと言いたいのは、こっちのほうだよ。もっと宣伝してくれると思ったからこそ出資したのに。地味に活動されてもねえ。」

大袈裟「いいですか、これは地球の平和を守るためなんです。」
いきなり仁王立ちになって右手で天を指す大袈裟。そこへいきなり流れる曲は「TAKE
ME HIGHER 」。
岡田「な、な、な、なんやねん。どうなってるんや。」
あたりを見回すVレンジャーたち。
みの「おっ、なかなかいいじゃない。うん、これくらいのパフォーマンスを見せてよ、ね。僕だって派手なほうが好きだからね。よし、うちから食料を送らせるよ。それでいいね。」

「やった〜っ!」
子供のように喜ぶVレンジャーと大袈裟。機嫌よく去って行くみの。

坂本の地下工場。
坂本「さっき、思いっきり商事社長のみのさんから、連絡があった。」
ジョー「ほんまか?で、返事は?俺たちに乗り換えるゆうたか?」
坂本「それがな、なかなか思うようにはいかなかった。けっこう、あいつら気にいられてるな。あいつらと替わるなら、あいつらより優れたところを見せろと言われたよ。」

男1「優れたところ?みのさんの目の前であいつらをやっつければいいってことだな。」

男2「だが、みのさんは自分の投資したロボットが破壊されるのはよく思わないだろう。」

男3「なるほど。それなら・・・」

Vレンジャー本部。
さっそく届いたみのからの食料の包みを大袈裟が開けている。
大袈裟「さあ、何が出てくるかな〜?じゃじゃ〜ん!」
井ノ原「おっ、なんかカラフルじゃん。なんだこれ?」
三宅「パプリカだよ。赤ピーマンと黄ピーマン。」
とたんにがっくりと膝をつく森田。
森田「お、俺、ピーマンきらい・・・」
井ノ原「つぎは、セロリかな?ニンジンもあるし。」
あいがしかめっつらをする。
あい「あ、あたし食べられない・・・」
井ノ原「・・と、これは、納豆だな。」
吐きそうな顔になる岡田。
岡田「そ、そんなもん人間の食べもんちゃう。」
井ノ原「なんだ?山くらげ?ひじき?高野豆腐?まだあるぞ。」
三宅「見せてみなって。あ、梅ぼしがある。」
井ノ原「俺、梅ぼしだけはだめ。」
大袈裟「結局、また健康食品だらけか。ん?なんか紙が入ってる。服もあるなあ。」

三宅「なに?なに?え〜と、これを着て○月△日×時に思いっきりグラウンドに集合?」

森田「どれを着ろって?げっ。」
森田が取り出したのは、赤、黒、青、黄、ピンクの5色のジャージの上下である。
左胸にはやや小さく、背中にはでかでかと「思いっきり商事」の文字がある。

岡田「か、かっこ悪う〜!」
井ノ原「これを着ろってのか。」
あい「やだ〜!こんなの着れな〜い。」
井ノ原「着れないじゃなくて、着られないだろ?」
森田「いーかげんにしろよ。」
大袈裟「しかし、いったいどういうことなんだろう。」

○月△日×時、思いっきりグラウンド。
それぞれの色のジャージを着たVレンジャーたちが集まっている。
井ノ原「みんな集まってるな・・・っと、大袈裟博士がまだか。」
そこへ大きな黒板消しとチョークを背負った大袈裟博士が走ってくる。
大袈裟「ごめ〜〜〜〜〜〜〜〜ん!待った〜〜〜〜〜〜〜〜ぁ?」
大袈裟の巨大黒板消しになぎ倒される森田と岡田。
森田「って〜!なにすんだよ。」
岡田「もうちょっと気ぃつけてーや、まったく。」
大袈裟「ところでみのさんは?」
井ノ原「まだ来ねーんだよ。」
あい「せっかく早起きしたのに。」
三宅「あれっ?なんかおっきな車がやってくる。カメラマンと、あっ、主婦?」

森田「主婦〜?」
そこへロールスロイスにふんぞりかえったみのがやって来る。
その脇にはカメラをかかえたカメラマンが数人、後ろからは主婦十数人がキャーキャー言いながらついてくる。

気取ったポーズで車から降りたみの、主婦たちに愛想をふりまき、握手し、ゆうゆうVレンジャーたちのほうへ歩み寄ってくる。

みの「いや〜、君達、朝一杯のココアは飲んできたかな?今日集まってもらったのはほかでもない、君達にやってもらう宣伝のことなんだが・・・」

三宅「せ、せ、宣伝?」
みの「おっ、いいねぇ、その声!特徴があって、すぐ君だってわかるよ。うんうん。」

三宅「宣伝ってなんですか?」
みの「うん、ますますいいねぇ。ヘリウムガスを吸ったあとの声みたいだねぇ。だから、この間言ったじゃないか、宣伝してもらうって。食料も送っただろ?」

井ノ原「食料ってあの健康食品グッズ?」
森田「あんなの食べもののうちに入んねー。」
みの「なにを言ってるんだ。ああいうものを食べてこそ健康な生活が送れるんだよ。それをみんなに広めてもらうんじゃないか。」

大袈裟「ちょ、ちょっと待ってくださいよ。どういうことなんですか。」
みの「君達の誰かに一日宣伝を行ってもらうんだよ。ま、ひとりでいいよ。いまから君達で勝負をして負けた人にやってもらおうよ。」

あい「あい、そんなのいや。」
みの「あ、あいちゃんはいいよ。女の子だからね。」
岡田「てことは、俺ら4人のうちのひとりってことか?」

そこへ乱入してきた二人の男たちがいた。
男1「ちょっと待った〜!」
男2「その勝負、俺たちも入れてもらおう!」
二人とも長身で、身長は180cm以上である。一人は長髪で、もう一人よりも背が高く、少し若いだろうか。もう一人は髪を短めに刈り込んでいる。

大袈裟「君達はいったい誰だ?」
男1「みのさんには、この間電話で話させてもらった。もし、この勝負で俺たちが勝ったら、みのさんは俺たちのスポンサーについてもらう。」

みの「あ、あれ君達だったの?でも、これはこっちの話なんだから、君達は遠慮してよ。また改めて話するからさ。」

男2「いや、この勝負に参加させてもらう。さもないとあんたの大事な会社の悪事をあることないことマスコミに流してやる。」

みの「えっ?もう、しょうがないなあ。でも、君達の衣装はピンクがひとつしかないよ。それでもいいの?」

男1「ピンク!いいだろう。じゃあ俺が着替えよう。」
男2「俺、けっこうピンクってしっくりくるなあ。書いてる文字はいただけないけど。」

男1はピンクのジャージに着替える。
男1(ぼそっと)「ところで思いっきり商事の悪事ってなんだ?」
男2「さあ・・・・」

二人がVレンジャー4人に加わる。
大袈裟「もう一度聞く。君達はいったい何者なんだ?」
男1「俺たちは鉄板DISH だ。俺の名前はマボ・ラオウ。」
三宅「アンパン奪取のマーボー大王?」
マボ「ちがう。鉄板DISHのマボ・ラオウだ。」
岡田「鉄板ジュージューのマーボー春雨ちゃうんか?」
マボ「なに聞いてんだ。鉄板DISHのマボ・ラオウ!」
大袈裟「”鉄人が作ったたマーボーラ王”か。新製品だな。ラ王のマーボー味とはやるなー。」

マボ「ちがーう!ラーメンの話じゃねー。鉄板DISHのマボ・ラオウだって。」

森田「うざってぇな。その”今晩留守のマボだよ〜だ”がなんだってんだ。」

井ノ原「・・・お前もおかしいぜ。」
男2「そういえば、うちのリーダーとタツヤが世話になったらしいな。今日はその礼もさせてもらうぜ。」

大袈裟「やっぱり坂本くんの仲間か。で、君は誰だ?」
男2「俺はトモヤ。」
井ノ原「それだけか?ずいぶん短いな。」
トモヤ「長いのは身長だけでたくさんだ。」
なんとなくムッとする森田と三宅。

みの「さあ、じゃあ競技を説明しようか。あ、コースは5コースしかないんだよ。ピンクの衣装を着た君、君に出てもらおう。もう一人の君は見学と。それでいいかな?」

トモヤ「えっ?俺、見学なの?しょうがねえなあ。じゃ、がんばれよ、マボ。」

マボ「なんかうれしそうだな、お前・・・」
みの「最初は障害物レースからね。網くぐり、パン食い、平均台、跳び箱、バスケットボールシュート、逆立ち歩き、最後はバットに頭をつけて10回回ってゴール。カメラマンさんにTV中継してもらうから、みんな頑張ってよ。いい?派手にね。」

岡田「テ、TV中継?うそやろ?」
三宅「これも宣伝のうちかよ〜!」
井ノ原「しょうがないさ。ん?お前、なににらんでんの?」
ふと見ると森田がトモヤとマボ、特にトモヤのほうをにらんでいる。
森田「身長のことを言うやつは気にくわねぇ。あいつら、二人ともバカっ高いしさ。」

岡田「だからって、ガンつけてお前の身長が伸びるってわけないやろ?」
森田「るせー。とにかく俺は負けらんねー。」
三宅「俺だって負けらんねー。」
井ノ原「よし、みんながんばろうぜ!鉄板DISHなんて焼いて食っちまえ!」

岡田「おーし!」
円陣を組む4人。
                   

後編へ→ TO BE CONTINUED!


第5話・第6話にひきつづきみなみさんが書いてくださいました。
Vレンジャーと鉄板DISHの間になにやら楽しげな(?)戦いが始まる様子ですが……。
後編をお楽しみに!


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