第34話 「ダークサイド」


ナレーション「坂本に追われている鉄板DISH。大袈裟は彼らを助けようとするが、井ノ原の反応は冷ややかだった。Vレンジャーにも仲間割れの危機が迫る。これは、正義と友情に命をかけた若者たちの物語である」

 巨大坂本と逃げまどう鉄板DISH。

 Vレンジャー本部。
井ノ原「博士、あんたはただ、あの坂本ってやつに、人殺しをさせたくないだけなんだろう」
大袈裟「……それも、ある……。でも……」
井ノ原「ふざけるな。あんたはいいよ。あいつと仲良くしたいんだから。でも俺は、あいつを地獄に落としてやりたい」
大袈裟「……」
 立ち上がる森田。
森田「俺は行くよ」
 皆が森田を見る。
森田「俺は、自分の手であの坂本ってやつを叩きのめしたい。だから、とりあえずあの五人は助けてやる」
三宅「僕も行く。たとえ悪いやつでも、殺されるのを黙って見ているのはよくないよ」
 三宅が立ち上がると、岡田とあいも立ち上がる。井ノ原は座ったまま黙っている。
大袈裟「ありがとう。じゃ、四人で行ってくれ。とりあえずあの五人を助ければいい。狭いけど、操縦席に入れてやってくれ」
 森田は頷きVレンジャーに変身する。三宅、岡田、あいも変身し、カロチン・ロボに乗り込んでいく。
 モニターには、基地から空へ飛び立つカロチン・ロボが映し出される。

 坂本の秘密工場。
 コードのついたヘルメットをかぶっている坂本。
 モニターには、逃げまどう鉄板DISHの姿。
坂本「さあ、来い。Vレンジャー」

 必死に走る鉄板DISH。
 トモヤに代わり、タツヤがジョーを背負っている。
ジョー「もしかして本気やないのか」
マボ「かもしれねえ」
タイチ「やばいよ、ほんとに殺されちゃうよ」
 五人の前に、カロチン・ロボが降下して来る。
タツヤ「助かった」
 カロチン・ロボは、鉄板DISHと巨大坂本の間に着地する。その背中の「おもいっきり商事」という文字のアップ。
巨大坂本「待ってたぜ」
 鉄板DISHは離れたところまで逃げ、そこで立ち止まって様子を見る。
 坂本は剣を振り上げる。
森田「やめろ、坂本」
あい「博士の気持ちを考えて」
 手を止める坂本。
坂本「博士の気持ち? 何を言ってるんだ」
三宅「博士は、あんたと仲良くしたいんだ」
坂本「ばかなことをいうな」
岡田「ほんまや。博士はあんたと一緒にいたいんや」
 坂本はフンと笑うと、剣を振り上げ、思いっきり振り下ろす。一歩下がるカロチン・ロボ。
森田「だめだ」
三宅「やるっきゃないね」
 カロチン・ロボの手にVセーバーが現れる。
森田「来い!」
 剣とVセーバーを構え、にらみ合う巨大坂本とカロチン・ロボ。 

 Vレンジャー本部。
 大袈裟は、モニターに映るカロチン・ロボと巨大坂本の戦いを不安そうに見ている。
 カロチン・ロボは、巨大坂本に押され気味で、受ける一方。
大袈裟「だめだ、四人じゃやられちゃう」
 そう言って、ちらっと井ノ原を見るが、井ノ原は無言でモニターの巨大坂本をにらんでいる。
 大袈裟は立ち上がり、
「僕が行って来る」
と言うと、近くの壁に手を触れる。そこは隠し扉になっていて、その向こうに円筒形の装置が見える。
 大袈裟は、カツラをとってわきに置くと、井ノ原に、
「僕が操縦席に行くから、留守番しててくれ。特に、このカツラがなくならないよう見て手くれ」
と声をかける。
井ノ原「どうやって行くんだ」
 長野は扉の向こうを指さし、
「これが瞬間移動装置だ」
と言うと、中に入る。
井ノ原「なぜカツラを置いていくんだ」
はそれをじっと見ている。
長野「僕は、長野博として坂本くんと戦ってみる」
と言うと、中のスイッチを操作する。キーンと音がする。

 カロチン・ロボ操縦席。
 Vブラックの席に、長野が現れる。
三宅「博士!」
長野「僕も戦う。長野博として坂本くんと戦ってみる」
 ほかの四人の顔に笑顔が浮かぶ。
岡田「やっぱ五人おらんとだめみたいや」
長野「うん。このロボットは五人の精神パワーで……。あっ」
あい「どうしたの?」
 長野は真っ青になっている。

 Vレンジャー本部。
 モニターにはカロチン・ロボが映っているが、井ノ原は見ていない。井ノ原が見つめているのは、瞬間移動装置。装置の中には人がいる。
井ノ原「失敗したのか」
長野「いや、成功だ」
 声の調子が違うので井ノ原が驚く。
 瞬間移動装置から出てきたのは、パンチ・パーマの長野。
井ノ原「ま、まさか……」
長野「そう、分離した。やっぱり、一人で作ったから、未完成のところがあって、すぐに副作用が出たんだな。ダークサイドの俺は残った」
 立ち上がる井ノ原。
井ノ原「どうするつもりだ」
長野「分かってるだろう。坂本くんのところに行くよ」
井ノ原「お前」
 ダークサイド長野は、そばにあったカツラを手に取ると、また瞬間移動装置に入る。
井ノ原「待て」
 瞬間移動装置の方へ急ぐ。
長野「このカツラの中には、未来の知識がつまってるからな」
井ノ原「やめろ」
 井ノ原が、瞬間移動装置の中の長野に飛びついた瞬間、長野がスイッチを入れる。
 キーンと音がして二人の姿が消える。

 斬りつける巨大坂本。かろうじて受けるカロチン・ロボ。
 三宅が、アクセサリーを口に立てて、
「やめろ」
と叫ぶと、その声は衝撃波となって巨大坂本に向かっていくが、あたる直前で何かに吸収されてしまう。

 坂本の秘密工場。
 ヘルメットをかぶり、モニターを見て笑っている坂本。
坂本「ばかめ。同じ手を二度も食うか。シールドが張ってあるんだよ」
 そこへ長野と井ノ原が突然現れる。それを見て驚く坂本。

 巨大坂本とカロチン・ロボ。
 坂本の動きが突然止まる。
森田「どうしたんだろう」
岡田「チャンスや、やってまえ」
 Vセーバーを振り上げるカロチン・ロボ。長野は思わず目を閉じる。

 坂本の秘密工場。
長野「やあ、坂本くん。これからは一緒にやろう」
坂本「長野……。お前、どうして」
 井ノ原は坂本をにらんでいる。
 坂本は井ノ原を見て、
「お前、Vレンジャーはどうした。あのロボットに乗ってなかったのか」
 坂本は、モニターのカロチン・ロボを指さす。
 井ノ原は坂本をにらみつけたまま玉を出してVブラックに変身し、
「俺はお前を殺しに来た」
と言う。その手にはサムライ・ソードが現れる。
 坂本は、かぶっていたヘルメットをはずす。

 巨大坂本が突然消え、つんのめるカロチン・ロボ。
森田「どうしたんだろう」
 長野はホッとした様子。
長野「逃げていた連中のところへ行ってみよう」
あい「どうしたの。顔色が悪いけど」
長野「瞬間移動装置で来たんだけど、副作用がでたんだ。もう大丈夫。行こう」

 坂本の秘密工場。
 長野は坂本と井ノ原の間に立ち、
「まあまあ、とにかく坂本くんにも状況を理解してもらおうよ」
と言うと、手にしたカツラを坂本の頭に乗せる。井ノ原は止めようとするが間に合わない。
 カツラを頭に乗せた坂本。全身に電流が走ったようになる。

ナレーション「ついに長野のダークサイドが坂本との合流を試み、最悪の事態を迎えようとしていた。どうなる、Vレンジャー、だんだん話がこんがらがってきた戦士たち」


 TO BE CONTINUED!


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