第33話 君といた未来のために


ナレーション「大袈裟博士こと長野博は、未来で、坂本ともに世界を破滅へ導こうとしていた。しかし、なぜそれを知ることができたのか。長野の告白は続く。これは、正義と友情に命をかけた若者たちの物語である」

 未来の映像。
 坂本と長野の基地。
長野「瞬間移動装置はもうやめよう」
坂本「でも、使わなくちゃ仕事にならないだろう」
長野「時間をかけて移動すればいいんだよ。マッチさんに相談してくる」

 Vレンジャー本部。
長野「僕と坂本くんは、瞬間移動装置を使いすぎたために、悪影響で、精神が二つに分離し始めていたんだ。それが脳に影響して自分が二重に見えていたわけだ」

 未来の映像。
 豪華な建物の廊下。ドアの前で立ち止まる長野。中から話し声が聞こえる。長野はドアに耳を寄せる。
「ばかなやつですね」
「若返りの秘法なんてあるわけないのに」
「でも、マッチさん、ほんとに若く見えますよ」
「童顔で得することもあるんだな」
 長野の顔色が変わる。

 Vレンジャー本部。
あい「だまされてたんだ」
 頷く長野。
長野「でも、坂本くんは……」

 坂本と長野の基地。椅子に座り、言い争っている坂本と長野。
坂本「うるせえ、俺は続ける」
長野「やめようよ、もう。だまされてたんだ、僕たち」
坂本「そんなはずはない。きっとある。若返りの秘法はきっとあるはずだ」
 黙って首を振る長野。
坂本「お前はやめるつもりか」
長野「やめる」
坂本「分かった、出て行け」
 長野は黙って立ち上がり、瞬間移動装置の中に入る。
長野「さようなら、坂本くん」
 長野がスイッチを入れ、作動した音がして一瞬装置の中が見えなくなるが、人影がそこにある。
坂本「なんだ、故障か」
 見ると、瞬間移動装置の中にいる長野の様子が前と違っている。
坂本「どうした」
 無言のまま坂本に歩み寄る長野。しかし、頭はパンチ・パーマ。
坂本「長野、お前、どうしたんだ。たちの悪い芸能プロダクションの人間みたいになって……」
 ニヤリと笑う長野。
長野「俺は残るぜ」
坂本「お前……」
長野「何びびってんだよ。俺は一緒にやるぜ」
坂本「長野……お前、一体……」
 長野は椅子に腰を下ろし、足を組む。茫然とそれを見ている坂本。それを見て長野はニヤリと笑い、
長野「どうしたんだよ」
坂本「だって、お前……」
長野「驚いたか。俺も驚いてるよ。でもな、瞬間移動装置のおかげであいつとおさらばできてせいせいしてるよ」
坂本「あいつって」
長野「もう一人の俺だよ。俺は完全に分離したんだ」
坂本「分離……」
長野「良心的な俺はいっちまった。でも、自分の力を見せつけたいと思ってる俺はここに残った。言ってみれば、俺は長野のダーク・サイドだ。坂本くん、あんたと同じだよ」

 Vレンジャー本部。
岡田「それじゃあ、よけい悪くなったんか」
長野「悪くなったというか……。でも、僕の良心的な面は坂本くんのところから自分の研究室に戻ったんだ。そっちの僕がこのカツラを作った」
三宅「それなら、なんでダーク・サイドがどうなったか知ってるの」
長野「ダーク・サイドも僕自身なんだ。誰だって心にはいろんな面があるよね。いい面も悪い面もある。それが全部自分なんだから。ダーク・サイドも僕の一部だから何をしてるかは分かるんだ」
森田「じゃあ、向こうにも……」
 長野は頷き、
長野「そう。良心的な僕のしてることも向こうは知っていた。でも、分離した僕が何をしているのか、ダーク・サイドの僕は坂本くんには教えなかった」
あい「どうして」
長野「分からない。ダーク・サイドにとっても自分の一部だから、坂本くんに攻撃されるようなことはしたくなかったんだろうね」

 未来の映像。
 長野の研究室。完成したカツラを手にしている長野。
長野「これならどうみてもただのふざけたカツラだ。まさか、極秘の情報が隠されているとは誰も思わないだろう」
 カツラを近くの装置の中に入れ、スイッチを入れると、カツラは一瞬まばゆく光り、スッと消える。
長野「頼むぞ、過去の僕」

 Vレンジャー本部。
 手にしたカツラを見つめる長野。
長野「こうして、このカツラがここにあるわけだ。このカツラは、僕が研究室に残り、坂本くんと会わなくなった直後に僕の所に届いたんだ」

 過去の映像。
 大学の研究室。一人で器具を操作している長野。
 背後でバシッという音がする。振り向くと、机の上にカツラがある。
長野「なんだ、これ」
 手にとって眺め、頭にかぶってみる。その瞬間、全身に電流が流れたような衝撃が走る。
長野「そんな……。僕と坂本くんが……」

 Vレンジャー本部。
長野「その時から、僕は坂本くんが世界を破滅させるのを防ぐために準備してきたんだ」
岡田「そんなら、そのカツラが来たときに、あいつをやっちゃえばよかったやん」
長野「それはできないよ。その時はまだ何も悪いことはしてなかったんだから」
あい「だったら、あの人のところに会いに行って、悪いことしないように言えばよかったんじゃないの」
 首を振る長野。
長野「もし会いに行って、一緒にやろうと誘われたら……僕は断れたかどうかわからない」
あい「どうして」
長野「僕は、坂本くんと一緒にいるのが楽しかったから……」
 沈黙が流れる。
井ノ原「とにかく」
 皆が井ノ原を見る。
井ノ原「やるしかねえだろう。ここまできたら。俺はやるぜ。あいつを叩きのめしてやる」
 長野を見る森田、三宅、岡田、あい。
長野「やろう。徹底的にやるしかないんだ。坂本くんと決別するためにも、僕は長野博を捨てて大袈裟になったんだから」
 そう言って長野はカツラをかぶり、再び大袈裟博士になる。
 それと同時に、壁の警報ランプが点滅し、警報ブザーが鳴り響く。
森田「なんだ」
岡田「敵やろう」
 モニターを見ると、巨大化した坂本が映っている。黒いマントを羽織り、手には剣を持っている。何かを追いかけている様子。
井ノ原「あの野郎!」
三宅「何か、様子が変だよ」
 モニターは、巨大坂本が追いかけているものを映し出す。逃げているのは鉄板DISHの五人。
大袈裟「どうなってるんだ」
 鉄板DISHは必死の形相で逃げている。ジョーが転ぶと、タツヤが助け起こそうとする。スピーカーからは声が聞こえる。
ジョー「俺にかまわんと、はよ行け」
タツヤ「そういうわけにはいかないよ」
ジョー「みんな殺されてしまうで」
 すぐ後ろに迫る巨大坂本。その前に立ちはだかるマボ。
マボ「やめろ。やめてくれ」
 巨大坂本は無言で剣を振り上げる。
タイチ「無理だ。あいつには話は通じない」
 トモヤがジョーを背負って走り出す。マボ、タツヤ、タイチも走り出す。
森田「どうなってるんだ」
 モニターの中、逃げまどう鉄板DISH。口々に、「助けてくれ」「殺される」と叫んでいる。
あい「仲間割れ?」
三宅「そうらしいね」
井ノ原「ふん、いい気味だ」
 大袈裟が立ち上がる。
大袈裟「あの五人を助けよう」
岡田「なんでやねん」
大袈裟「あの五人を仲間にできるかもしれない。そうなれば、坂本くんの戦力はだいぶ落ちる」
あい「今まで大して戦力になってないみたいだけど」
大袈裟「とにかく、助けを求めてるんだ。助けに行こう」
井ノ原「(鼻の先でフンと笑い)俺は行かねえよ」
大袈裟「なぜ」
井ノ原「博士、本当の理由は違うだろう」
大袈裟「……」
 森田、三宅、岡田、あいが井ノ原を見る。

ナレーション「仲間割れを起こした坂本と鉄板DISH。しかし、Vレンジャーにも不協和音が生じていた。すべてが明らかとなった今、戦いの行方はまさに混沌とし始めていた。行け、Vレンジャー。今こそ坂本を倒す時だ」


TO BE CONTINUED!


Vレンジャートップへ戻る

メインのぺージへ