第30話 新武器完成

ナレーション「坂本の送り込んだ女に夢中になってしまった井ノ原。Vレンジャーに危機が迫る。一方、大袈裟博士は、岡田用の武器の開発に頭を悩ませていた。これは、正義と友情に命をかけた若者たちの物語である」

 Vレンジャー本部。
大袈裟「ラグビーが得意だって言ってたな。ラグビー……ビー玉……マンガ……学校……って、しりとりしてる場合じゃない」

 ハンバーガー・ショップ。無心にハンバーガーを食べている岡田。ふと目を上げると、目の前の道を井ノ原とエミリが通り過ぎる。

 公園。犬を散歩させている三宅。何かを見て足を止める。
 視線の先には、ベンチに並んで座っている井ノ原とエミリ。何か話しながらソフトクリームを食べている。

 河原。サッカーをしている森田。
 ふと、土手の上の道に目をやると、井ノ原とエミリが寄り添って歩いている。
森田「へえ……」
 足を止めて二人を見ている森田に仲間から声が飛ぶ、
「どうした、ボールが行ったぞ!」
 慌てて走り出す森田。

 Vレンジャー本部。
 何か作っている大袈裟。
「できた。やっと完成だ」
 手にしているのは、三日月型の薄い板。

 坂本の秘密基地。
 坂本、マボ、タツヤで相談している。
坂本「ただ長い間いるだけ、っていうのがいいんだ」
タツヤ「暴れちゃいけないの」
坂本「暴れてもいいが、とにかく長い間やつらを引きつけて置く必要がある。そして、やつらの弱点を探り出す」
マボ「だったら……」

 Vレンジャー本部。
 森田、三宅、あいがいる。
 入ってきた岡田に大袈裟が声をかける。
「ちょうどよかった。君用の武器ができたよ」
岡田「おっ、できたんか」
大袈裟「これだ」
と、手にした三日月型の薄い板を見せる。
岡田「どうやって使うねん」
大型「室内ではちょっと危ないから、外に出よう」

 二人でプリクラを撮っている井ノ原とエミリ。

 砂浜。
 大袈裟、森田、三宅、岡田、あい。
大袈裟「いいかい、これを握って」
と、板を渡す。
大袈裟「それが、超合金でできた刃物だと思うんだ」
 そう言われた岡田が板を見つめると、銀色に光を放ち出す。
森田「おおっ」
三宅「光ってる」
大袈裟「それを投げるとブーメランのように戻ってくる」
 岡田がさっそく投げようとすると、
大袈裟「待った!」
岡田「何やねん」
大袈裟「戻ってきた時に当たると危険だ。みんな離れて」
 岡田を残してみんな離れる。
大袈裟「さあ、やってみてくれ」
 岡田が振りかぶって投げると、板はクルクル回転し、光を放ちがなが大きな弧を描き、戻ってくる。パシッと受け止める岡田。
岡田「かっこええやん」
 大袈裟たちが岡田のそばに戻る。
大袈裟「成功だ。これはね、ブーメランと違って、相手に当たっても戻ってくるから」
岡田「こりゃええもん作ってもらったで」
三宅「でも……」
森田「問題は……」
あい「名前よね」
 岡田は不安そうに大袈裟を見る。
大袈裟「だから、なぜそうやって君たちは僕のセンスを疑うんだ」
岡田「で、名前は何やねん」
大袈裟「これは敵を切り裂く武器だ。言ってみればカッターだ。平らなカッターだからヒラ・カッターというんだ」
岡田「ヒラカタ?」
大袈裟「違う、ヒラ・カッターだ」
森田「やっぱりな」
あい「よかった。変な名前なのがあたしのだけじゃなくて」
岡田「ま、ええわ」
と言うと、またヒラ・カッターを投げる。

 できあがったプリクラシールを見ている井ノ原。
井ノ原「おっ、きれいにとれてる」
 ハートをちりばめた図柄の中でほほえんでいる井ノ原とエミリ。
 エミリは井ノ原の横顔をじっと見つめている。

 砂浜。
 岡田が一人で、ヒラ・カッターを飛ばしては受け止める練習をしている。

 夕暮れの土手。
 夕焼けをバックに、抱き合う井ノ原とエミリのシルエット。
エミリ「わたし……恐いの」
井ノ原「何が?」
エミリ「自分でもよくわからないけど……。いろんなことがあって……」
井ノ原「心配しなくていいんだよ。君は俺が守る。絶対に守り抜いてみせる」
 エミリは井ノ原の胸に顔を押し当てる。泣いている様子。

 Vレンジャー本部。
 大袈裟一人だけ。大袈裟は、机に突っ伏して寝ている。

 坂本の秘密工場。
 真っ暗になっている室内。
 突然明かりがともり、エミリの姿が現れる。あたりの様子をうかがい、携帯電話を手に取り、ダイヤルして耳に当てる。
「もしもし」
 電話から井ノ原の声。
エミリ「わたし……」
井ノ原「どうしたんだよ」
エミリ「あのね……」
井ノ原「何だよ。今、何時だと思ってるんだよ」
エミリ「だって……声が聞きたくて」
井ノ原「何かあったの?」
エミリ「ううん……。ただ声が聞きたかっただけなの」
 そこに坂本が現れる。驚きながらエミリをにらみつける坂本。
エミリ「ごめんなさい。じゃ、また明日」
 電話を切るエミリ。
 にらみつける坂本。
坂本「お前、どうやって」
 黙ってうつむくエミリ。
坂本「消えろ」
 坂本が手元のスイッチを操作すると、エミリの姿が消える。
 坂本はスイッチを確認し、首を傾げる。

 日中。
 平和な街の風景。

 坂本の秘密工場。
マボ「トモヤなら大丈夫だ」
坂本「できるだけ長い間だぞ」
トモヤ「平気、平気。自信あるよ」
 ヘルメットをかぶっているトモヤ。ソファーベッドに横になっている。
トモヤ「それじゃ、始めるよ」
 モニターに巨大な影が現れる。

 Vレンジャー本部。
 大袈裟、森田、三宅、岡田、あいがいる。
 鳴り響く警報。
大袈裟「敵が現れた」
 モニターには巨大な寝仏(ねぼとけ)が映し出されている。
森田「何だ、これ」
岡田「仏様やん」

 ミラクル・スクーターで、寝仏の方へ走る井ノ原。

 空を飛ぶカロチン・ロボ。

 坂本の秘密工場。
 ヘルメットをかぶったままソファーベッドで熟睡しているトモヤ。
坂本「大丈夫なのか」
マボ「こいつはね、一度寝込んだら起こせないんだよ。こいつ起こすのって、ほんと大変なんだから」
 モニターに飛んでくるカロチン・ロボが映る。
坂本「来た」

 地響きを立てて着陸するカロチン・ロボ。「おもいっきり商事」のアップ。
 操縦席に井ノ原が入ってくる。
森田「なんか、寝てるだけだな」
井ノ原「俺が起こしてやる。ラーメン大好きツル!」
 カロチン・ロボの手にボーリングのボールが現れる。それを思いっきり転がして当てるが、相手は微動だにしない。

 坂本の秘密工場。
 モニターにカロチン・ロボが映っている。スピーカーから、井ノ原の声が、「俺が起こしてやる。ラ……」と聞こえる。
坂本「ラ?」

 寝仏の前に立つカロチン・ロボ。
森田「今度は俺だ。ラーメン大好きツル!」
 カロチン・ロボの足元にサッカーボールが現れる。思い切りそれを蹴るカロチン・ロボ。ボールは寝仏に命中するが、やはり寝たまま。

ナレーション「坂本が送り込んだ女、エミリの正体は何か。ついに本格的な危機が迫る。負けるなVレンジャー。底抜けにステキな戦士たち」

TO BE CONTINUED!

(第30話と第31話は、双葉。さんから寄せられたアイディアを参考にしています)


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