第3回 「不安」


 ブロッコ・ロボと巨大シオマネキの戦闘シーン。
ナレーション「謎の科学者・坂本の作り出した巨大シオマネキをからくも追い払ったVレンジャー。はたして、五人目の戦士は見つかるのか。これは、正義と友情に命をかけた若者たちの物語である」

 Vレンジャー本部。
「どうなってんのよ、これ」
と声の方へ目を向けた五人。その視線の先にドアを開けて少女(加藤あい)が入ってくる。
井ノ原「おおっ」
岡田「女の子やん」
 あいはずかずかと入ってくると、五人をにらみ、玉をつきだして、
「何なのよ、これ。あたし、レッスンで忙しいんだからね」
 進み出る大袈裟。
「その玉が君をここへ連れてきたんだね」
あい「そうよ。迷惑よ。何とかしてよ」
大袈裟「待っていたよ」
井ノ原「ほんと待ってた」
あい「待ってたって、何でよ」
大袈裟「君は選ばれた戦士なんだ」
あい「戦士?」
井ノ原「そう、俺たちと同じ。Vレンジャーだ」
あい「何よ、それ」
岡田「ほれ、見てみい」
 そう言うと、岡田は玉を握った左手を胸に当て、右手はVサインにして突き出し、
「V!」
 一瞬のうちに、Vレンジャーの姿に変身する。
あい「え……」
大袈裟「君も変身できるんだよ」
あい「変身してどうするのよ」
大袈裟「戦うんだ。悪者と」
あい「やだ、そんなの」
大袈裟「でも、君の力が必要なんだ」
井ノ原「Vレンジャーになるとさ、テレビに出られるよ」
 途端にあいの表情が柔らかくなる。
「ほんと?」
井ノ原「もちろん。だって、正義のヒーローだし、顔は隠れないし。ニュースの時なんか、バッチリ映っちゃうよ」
あい「ほんと? ほんとにテレビに出られるの?」
大袈裟「出られるとも」
 井ノ原はポーズを決めて変身して見せ、森田と三宅にも目配せする。森田と三宅も頷いて変身。
あい「すごおい。みんな色が違うのね。でも戦うのは危ないんでしょう」
大袈裟「そんなことはない。あれを見てごらん」
 そう言って巨大モニターを指さすと、そこに、ブロッコ・ロボの首から下だけが映し出される。
大袈裟「これに乗って戦うんだ。直接ダメージを受けることはない」
 目を丸くしてモニターに歩み寄るあい。Vレンジャーの四人は、背中の文字を見られないようにしながら道をあける。
大袈裟「君も変身してごらん」
 あいは振り向くと、
「こう?」
 真似をしてポーズを取り、
「V」
と叫ぶと、ピンクの戦士に変身。
井ノ原「おっ。似合ってるよ」
岡田「ほんま、かわいいで」
あい「そう?」
 まんざらでもなさそうなあい。
大袈裟「君もVレンジャーになってくれるね」
あい「そうね。やってみる」
「やったー」
 喜ぶVレンジャーの四人。
三宅「さっき、レッスンが忙しいって言ってたけど、何のレッスンなの」
あい「(ちょっと照れながら)歌と踊りなの。あたしね、アイドル歌手をめざしてるの」
井ノ原「アイドル歌手!」
岡田「ぴったりやん」
 その時、大袈裟博士の携帯電話が鳴る。
「はい、大袈裟です。あ、社長さん。はい……ありがとうございます。さっそくうかがいます」
 電話を切った大袈裟、五人に向かって、
「スポンサーの社長さんが、みんなに食事をごちそうしてくださるそうだ」
五人「やったー!」

 坂本の地下工場。
 ソファーに腰掛けた坂本。前に立つ五人の後ろ姿。
坂本「ま、適当に座ってくれ」
 無言で適当に腰を下ろす五人。
坂本「マッチさんから聞いた。君たちは鉄の皿というそうだね」
男1「それは、そういう案もあった、ということだ。坂本さん、そんなことより、仕事の中身を聞こう」
坂本「仕事は簡単だ。君たちのイメージの力で暴れ回ってもらう」
男2「イメージの力?」
坂本「そう、想像力といってもいい」
 そこで、かたわらの装置を指さし、
「この装置は、何でも思い浮かべたものをそのまま現実のものにできるんだ。できるだけとんでもないものを想像してくれ。それを現実のものにしてやるから、それで暴れ回るんだ」
男3「それだけでいいのか」
男4「五人そろってやる必要があるのか」
坂本「五人一緒にはできない。一度に一人だけだ」
男5「じゃあ、全員ここにいる必要なないな。とりあえずここはリーダーにまかせるよ。いいだろう」
 リーダーと呼ばれた男(城島茂)は、頷き、
「ああ、まかしとき。簡単な仕事や」
 四人の男は無言で立ち上がり、扉から出ていく。
 それを見送った坂本、残った男に、
「リーダーなのか。名前は?」
「俺の名はアイランド・ジョー。覚えといてくれ」
坂本「ところでチームの名前は何ていうんだ。鉄の皿じゃないのか」
ジョー「違う。もっとかっこええで。俺たちの名前は……『鉄板DISH』や」

 おもいっきり御殿の応接間。テーブルを囲んで座っているみの、大袈裟、普通の服装に戻ったVレンジャーの五人。テーブルには料理の皿がぎっしりと並べられている。
みの「女の子もいるとは驚いたね。華があっていいね。さ、遠慮はいらないよ、どんどん食べて」
 見ると、料理はどれも、ゆでたブロッコリーや野菜スティック、ひじき、納豆といった健康にはいいかもしれないがごちそうとは思えないようなものばかり。
井ノ原「草食動物じゃないんだから……」
みの「え? 何か言った?」
井ノ原「いいえ、別に……」
みの「ほら、この梅干し食べてごらん。特製の紀州梅干し。おいしいよ、体にいいんだから」
井ノ原「俺、梅干しだめなんです」
みの「おや、そう。お嬢さん、ほら、人参たべて。βカロチンたっぷりだよ。目にいいんだから」
あい「あたし、野菜スティック食べられない」
岡田「もっとこう、何ちゅうか、食ったっていう気になるようものが……」
 大袈裟が慌てて制止するが、みのはそれほど気にとめる様子もなく、
「若い人には物足りないか。よし、じゃあ、この次は魚を用意しよう。魚はね、DHAがだっぷりあるのを選んでおくからね。特に、目の回りの肉を食べるといいんだよ」
 うんざりして顔を見合わせるVレンジャー。困った顔の大袈裟。

 坂本の秘密工場。
 コードのついたヘルメットをかぶっているアイランド・ジョー。
「何でも考えたとおりのものが出るんやな」
坂本「そうだ。どうせなら、できるだけ強いのがいい。動物ならライオンとか虎とか」
ジョー「なるほど。けど、動物そのままっちゅうのも芸がないな。よし、動物やないけど、虎よりもつよいのでいこ」
 目を閉じ、何かをイメージしているジョー。前のステージにはぼんやりと巨大なものの姿が現れてくる。

 Vレンジャー本部。大袈裟はコンピューターを操作している。そのわきで、カップラーメンを食べているVレンジャーの五人。
森田「これのほうがよっぽどましだよ」
 頷く残り四人。
 突然警報が鳴りだし、壁の赤いランプが点滅する。
あい「何? どうしたの?」
 立ち上がり、巨大モニターを見上げる大袈裟。そこには、土埃を巻き上げて走り回り、牧場を破壊している巨大なものが映っている。もうもうと立ち上る土埃で、その姿ははっきりは見えない。
大袈裟「また現れた。Vレンジャー、出動だ」
井ノ原「よしきた」
 立ち上がり、変身する井ノ原と森田。
岡田「ちょっと待ってえな。もう少しで食べおわるから」
森田「早くしろよ」
三宅「あ、歯を磨かなくちゃ」
井ノ原「後でいいだろ」
 変身した井ノ原と森田の後ろ姿を見たあいが、愕然とした表情で、
「ちょっと待ってよ。何よそれ」
井ノ原「え? どうかした」
あい「その背中。なんでそんなことが書いてあるのよ」
大袈裟「スポンサーだから……」
あい「もしかして、あたしの背中にも?」
 頷く大袈裟。
あい「やだ、絶対。あたしやめる」
大袈裟「そう言わないで。テレビにも出られるし」
井ノ原「一緒にやろうよ。マラソンだってバレーボールだってスポンサーつきなんだから。ね」
 ため息をつくあい。

 牧場。
 逃げまどう牛や羊たち。それをなんとか助けようと走り回る酪農家の人々。

 坂本の秘密工場。
 ヘルメットをかぶり、にやにやしてモニターを見ているジョー。不安そうにそれを見ている坂本。
坂本「なあ、ジョー」
ジョー「何や」
坂本「何でこれなんだ」
 モニターには土埃をあげて走り回る巨大なトラクターが映っている。
坂本「トラクターのどこが凶暴なんだよ」
ジョー「虎より強いもの、っちゅうたやん。虎より強くて食ってしまうのや。虎食った、虎食ったー、トラクター……どうや?」
 凍り付く坂本。

 ブロッコ・ロボを見上げているVレンジャー。
あい「何よこれ。何でブロッコリーなのよ。いやだもう。帰る」
井ノ原「そう言わないでさ、一緒に乗ろうよ」
岡田「結構おもろいで」
 梯子を登り始める森田。それに続く三宅、井ノ原、岡田。あいもしぶしぶ登り始める。

(ナレーション)「ついに五人そろったVレンジャー。しかし、この五人で、謎のチーム・鉄板DISHに対抗できるのか。そして、坂本の陰謀をうち砕くことができるのか。本当の戦いは今度こそ本当に始まった」

TO BE CONTINUED!


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