第28話 「Vブロウガン」

ナレーション「次々に襲い来る鉄板DISH。そして坂本も新たな作戦を立てた。新しい武器を手にしたものの、Vレンジャーの苦闘は続く。これは、正義と友情に命をかけた若者たちの物語である」

 空を舞う人面鳥。

 カロチン・ロボ操縦席。
 三宅は首のアクセサリーを気にしている。
森田「いつまで飛んでるつもりだ」
 カロチン・ロボの手に拡声器が現れる。
森田「そこの怪しい鳥、すぐに地面におりなさい」
 人面鳥は素直にカロチン・ロボの前に降り立つ。
人面鳥「はあ、待ちくたびれたで」
森田「何なんだ、お前」
人面鳥「何、言われても困るけどな」
岡田「何困っとんのや。へたなことすると関西人の恥やで」
人面鳥「まあ、そない言わんかてええやん」
井ノ原「何しに出て来たんだよ」
人面鳥「そ、そらあ……ま、話でもしよかと思うてな」
あい「絶対いやだ」
三宅「お前、名前は何て言うんだよ」
人面鳥「名前? そ、それは……」

 坂本の秘密工場。
 ヘルメットをかぶったまま困っているタイチ。マボが何か耳打ちする。

 人面鳥とカロチン・ロボ。
人面鳥「俺の名前はシャベックリーや」
森田「しゃべくり?」
人面鳥「シャベックリーや。凍らしたお菓子とちゃうで」
 カロチン・ロボ操縦席。意味が分からず顔を見合わせる五人。
森田「何言ってんだろう」
岡田「シャーベットのことやないか」
井ノ原「なるほど」
人面鳥「とにかく、思いっきりしゃべらしてもらうで。最近存分にしゃべらせてもらえんことが多くってな。言いたいこと言えんとな、急いでて、特急電車に乗ってても遅く感じるようなもんや。その気持ち、分かるか」
森田「また訳の分からねえこと言ってる」
岡田「特急でも遅い……特急に不満……特急不満……欲求不満のことかいな」
井ノ原「さすが関西人同士」
人面鳥「誰かて欲求不満になるのはいややろ。そやからこうしてしゃべる機会を作らしてもろて……」
井ノ原「しゃべりたかったら一人でしゃべれ」
人面鳥「まあ、そない言わんと付き合ってえな。どうせお前ら、俺らにやられてもうすぐこの世に野村のよっちゃんや」
 カロチン・ロボ操縦席。期待して岡田を見る四人。
岡田「そんなに何もかも分かるかいな」
人面鳥「ザ・グッバイや」
五人「……」

 坂本の秘密工場。
坂本「ネタが古すぎる」
マボ「化石だね」

 Vレンジャー本部。
 モニターを見ている大袈裟。
「僕と坂本君には分かるけど……」

 人面鳥とカロチン・ロボ。
人面鳥「古すぎたか。ま、そういうことを言いたいんや。globeのボーカルが食事するんや」
井ノ原「ずいぶん飛んだな」
あい「globeのボーカルってkeikoっていう人よね」
岡田「keikoが食事……けいこが食う……けいこくう……けいこく……警告か」
三宅「よく分かるね」
井ノ原「恐るべし、関西人」
あい「なんかオヤジくさくっていやだ」
人面鳥「だいたいみんな俺のセンスについてこれんのがあやんのや。猫が寝込んだとか、ふとんが吹っ飛んだとか、そういう基本を理解せんやつが多い」
 思わず吹き出す岡田。
森田「お前ってすぐ笑っちゃうんだな」
人面鳥「おっ、受けたようやな。どうや、Kinki Kidsの片方欲しいか」
 顔を見合わせるVレンジャー。
人面鳥「どう? もっとこう言って欲しい? ……どうもっとこういっちほしい……どうもとこういちほしい……」

 坂本の秘密工場。
マボ「リーダーが乗り移ってるみたいだね」
タイチ「自分でもこわいよ」

 Vレンジャー本部。
 計器を見ている大袈裟。
「大変だ。みんなの精神パワーが低下している」

 カロチン・ロボ操縦席。重く沈んだ雰囲気。
 三宅のヘルメットのスピーカーから大袈裟の声がする。
大袈裟「ブルー。あの武器を使ってみてくれ」
三宅「あんな大きい相手に?」
大袈裟「君の声なら大丈夫だ」
三宅「やってみる」
 三宅はアクセサリーを口に当て、
「黙れ! うるさい!」
と叫ぶ。すると人面鳥がもんどり打って倒れる。
森田「何だ、今の」
三宅「これが僕の武器なんだ。声を衝撃波に変えて相手を攻撃するんだ」
井ノ原「武器の名前は? 変なのじゃない?」
 そこへ大袈裟の声。
「おいおい。もっと僕を信じてくれよ。ブルーの武器は、Vブロウガンだ」
井ノ原「ブロウガンって何だ」
大袈裟「吹き矢のことだよ。VはVレンジャーのVとvoiceにかけてある。すごいだろう」
あい「あたしのもそういう名前がよかったなあ」
岡田「あっ、あいつ、立ちよったで」
三宅「もう一回だ」
と、アクセサリーを口に当て、
「消えろ!」
と叫ぶ。再びもんどり打って倒れる人面鳥。
三宅「やった」
 人面鳥はよろよろと立ち上がり、
「やられてもうた。もうだめや。これで女の兄弟、これでシマイや。Vレンジャーには勝てん」
と言うと姿を消す。

 坂本の秘密工場。
坂本「よくやった。これでいい」
マボ「うまいねえ」
タイチ「リーダーになったつもりでがんばったよ」
マボ「リーダーのつもりなら、やられても格好悪くないしな」
タイチ「ほんと、ほんと。リーダーだと思ったら、何やったって恥ずかしくないよ」
坂本「お前ら……」
 あきれて二人を見る坂本。

 カロチン・ロボから降りてそれぞれのスクーターにまたがる森田、井ノ原、岡田、あい。
 そこへ、エミリがかけてくる。井ノ原の顔をのぞき込み、
エミリ「やっぱり」
 エミリが首にかけた携帯電話が揺れている。
井ノ原「君は……。こないだぶつかった」
エミリ「はい。やっぱりVレンジャーだったんですね。ニュースで顔を見たことがあったんです」
井ノ原「そう」
 いかにもうれしそうな井ノ原の顔。ほかの三人はそれを見て、笑いながら走り去る。
 カロチン・ロボも空を飛んでいく。それを見送るエミリ。
エミリ「すごいんですね、Vレンジャーって」
井ノ原「いやあ、それほどでも」
エミリ「あんな怪獣もやっつけちゃって」
井ノ原「よかったら、お茶でもどう」
エミリ「えーっ、いいんですか」
 エミリは大喜び。井ノ原もニッコリ。

 坂本の秘密工場。
 携帯電話を耳に当てて聞いている坂本。
「うまくいきそうだ」
マボ「じゃ、俺らいったん帰るから」
坂本「ああ、ご苦労だった」
 立ち去るマボとタイチ。

 喫茶店。向かい合って座っているエミリと井ノ原。窓の向こうにスクーターが止めてあるのが見える。エミリが首にさげている携帯電話が揺れる。
エミリ「Vレンジャーって、どうして戦ってるんですか」
井ノ原「そ、それは……。ま、俺たちの街は俺たちで守るって感じかな」
エミリ「恐くないんですか」
井ノ原「恐くなんかないさ。君のような人を守るんだもの」
 見つめ合う二人。

 坂本の秘密工場。
 携帯電話を耳に当て、何か聞いている坂本。ニヤリと笑う。

ナレーション「ジョーになりすましてわざと恥をかいた鉄板DISH。お前ら本当はリーダーのことをどない思うとんのや。とにかく行け、Vレンジャー。底抜けにナイスな戦士たち」

(今回は双葉。さんのアイディアを参考にしています)

TO BE CONTINUED!


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