第2話 「新たな味方」



(映像)巨大シオマネキと苦しんでいる人々の顔。坂本の不気味な笑い顔や大袈裟の苦渋に満ちた表情。
ナレーション「謎の科学者坂本が作り出した巨大シオマネキのために人々が苦しんでいる。大袈裟博士は、特殊能力を持つ戦士を集め、坂本の陰謀を阻止するために立ち上がった。これは、正義と友情に命をかけた若者たちの物語である」

 ドアを抜け、秘密工場に足を踏み入れた四人。思わず立ち止まり、上を見上げる。
井ノ原「で、でけえ」
岡田「すごいやん」
森田「でも……」
 巨大ロボットが足の方から映されていく。胴までは緑がかった普通のロボット。そして顔は巨大なブロッコリーの形。
三宅「かっこわるい」
 そこにヘルメットの中のスピーカーから大袈裟博士の声。
「それが君たちのために用意した巨大戦闘兵器、ブロッコ・ロボだ」
井ノ原「何でブロッコリーなんだよ」
大袈裟「それもスポンサーの意向だ」
 ロボットの背中が映ると、そこにも大きく「おもいっきり商事」の文字。
森田「やっぱ、やめるわ」
大袈裟「そう言わないで乗ってくれ。君たちの力が必要なんだ。あの怪物を倒せるのは君たちしかいないんだ」
岡田「俺らも命がけなんやろうし、ただというわけにはいかんで」
大袈裟「わかった。スポンサーに交渉して、せめて食事ぐらいは食べ放題で出してもらおう」
岡田「よっしゃ、俺はやるで」
井ノ原「俺も。ニヒルな男は見た目で嫌ったりしないのさ」
森田「わかった、俺もやろう」
三宅「もっといいスポンサー探してよ。今回はしょうがないけど」
大袈裟「ありがとう。近くに梯子があるだろう」
森田「ああ、あるよ」
大袈裟「それで上っていくんだ」
井ノ原「え?」
三宅「もっとかっこいいのないの?」
大袈裟「そこまでは予算が回らなくて……」
岡田「俺は行くで」
 そう言うと、岡田は梯子を登り始める。ほかの三人もしかたなくそれに続く。
大袈裟「肩の高さまで来たらロボットに移ってくれ」
 四人はロボットの肩に移り、中に入っていく。

 盛んに潮風を起こしている巨大シオマネキ。狂気じみた笑顔の坂本。

 操縦席に着いた四人。席は五つある。森田が中央。右に岡田。左に三宅、井ノ原の順に腰を下ろす。
森田「どうやって操縦するんだ」
大袈裟「席の前に棒が二本たってるだろう」
 四人はそれを握り動かそうとするが、全く動かない。
森田「動かないぞ」
大袈裟「それは、操縦席から振り落とされないようにつかまるための棒なんだ」
三宅「そ、そんな……」
大袈裟「いいかい、ここからが重要だ。そのロボットは君たちの意識に連動して動くようになっている。つまり、こうしたい、と思えばその通りに動くんだ」
井ノ原「四人がバラバラなことを考えたらどうするんだよ」
大袈裟「操縦できるのは一人だけだ。操縦するためにはパスワードを言わなくてはならない」
岡田「けっこう本格的やん」
森田「で、そのパスワードってなんだ」
大袈裟「これは絶対に他人に漏らしてはならない。地球の運命がかかっているんだ」
森田「それは分かったから早く教えてくれ。パスワードは?」
大袈裟「いいか、よく聞いてくれ。パスワードはこうだ。『ラーメン大好きツル!』」
 茫然とする四人。
大袈裟「これを言った人間の意思の通りに動くように作ってある」
森田「必ずそれを口にしなくちゃだめなのか」
大袈裟「そうだ。くどいけど、絶対他の人に教えるなよ」
三宅「そんなの人に言えないよ……」
大袈裟「さあ、頼む。出発してくれ」
井ノ原「レッド、まずは君に任せよう」
森田「何だよ。自分がリーダーになりたいってさっき言ってなかったかよ」
井ノ原「いや。俺はニヒルだから。ニヒルな男はいきなり前に出たりしないのよ」
岡田「さあ、行こうで、レッド」
三宅「レッド、頼んだぞ」
 森田は三人をにらみ回し、観念したようにつぶやく。
「ラーメン大好きツル」
 その途端、操縦席が明るくなり、様々な計器が色とりどりに光り出す。
 四人は思わず操縦席を見回す。
森田「ブロッコ・ロボ、発進!」
 ブロッコ・ロボが上昇し始める。

 おもいっきり御殿。
 広い居間でテレビを見ているみの。家が揺れ初め驚いて外を見ると、広い庭の真ん中が左右に開き、ブロッコ・ロボの頭が出てくる。
みの「おっ、いよいよ始まったね」
 ブロッコ・ロボの全身が出ると、一八〇度回転し、みのの方に背中を向ける。そこには「おもいっきり商事」の文字。
みの「よし。これぐらいやってくれなくちゃね」
 轟音と共に、ブロッコ・ロボが宙に浮く。

 空を飛んでいるブロッコ・ロボの操縦席。
 四人は面白そうに地上を見下ろしている。
岡田「おっ、おったで」
 指さす方に巨大シオマネキ。
森田「よし、着陸するぞ」
 ブロッコ・ロボは巨大シオマネキから少し離れたところに着陸する。

 ヘルメットをかぶった坂本。
「何だ、これは」

 どよめく市民。テレビのアナウンサーは、興奮して、
「ご覧ください。今、新たな怪物が現れました。あ、何かに似ています。ブロッコリーです。巨大なブロッコリーです」
 巨大シオマネキに向かって身構えるブロッコ・ロボ。
アナウンサー「あっ、背中に何か書いてあります。ご覧いただけますでしょうか。お……おもいっきり……おもいっきり商事です。あの、健康食品のおもいっきり商事の名前が書いてあります。これは……なんとも悪質な宣伝です。こんなことが許されるのでしょうか」

 テレビの前でずっこけるみの。

 操縦席。ヘルメットのマイクを通じて話をする森田と大袈裟。
森田「どうやって戦うんだ。何か武器があるんだろ」
大袈裟「武器は君たちが作り出すんだ」
四人「作り出す?」
大袈裟「そのロボットには、イメージを物質化する機能があるんだ。レッド、君の好きなものはなんだ」
 森田がちょっと考えた途端、ブロッコ・ロボの前に大きなサッカーボールが現れる。
井ノ原「何だよ、ボールじゃないか」
大袈裟「それでいい。好きであればあるほど大きなエネルギーがあるんだ。それを蹴って敵にぶつけるんだ」
 ブロッコ・ロボが足を振り上げ、ボールを蹴ると、見事巨大シオマネキに命中。当たった瞬間にボールは消え、巨大シオマネキはひっくり返る。
森田「やった」
 しかし、すぐに立ち上がる巨大シオマネキ。
井ノ原「面白そうじゃない。俺にもやらせろよ」
 そう言って井ノ原は何か考えるが、何も起こらない。
大袈裟「あのパスワードを言わなくちゃだめなんだ」
井ノ原「え……。しょうがない。ラーメン大好きツル!」
 たちまちブロッコ・ロボの手に巨大なボウリングのボールが現れる。
井ノ原「いくぞ」
 井ノ原が投げると、ボールは轟音と共に転がっていき、ぶつけられた巨大シオマネキはもんどり打って倒れる。
井ノ原「けっこうきいたみたいだな」
 巨大シオマネキはよろよろと立ち上がると、海の方に向かって逃げ始める。
井ノ原「ちぇっ、まだ生きてたか」
岡田「今度は俺や。いくで。ラーメン大好きツル!」
 そう叫ぶと、ブロッコ・ロボの頭に、ラグビーのヘッド・ギアが現れる。
岡田「体当たりや」
 ブロッコ・ロボは走り出し、逃げる巨大シオマネキの背中に猛烈な体当たり。巨大シオマネキは遠くにはね飛ばされ、海に落ちると、そのまま海中に姿を消す。

 地下工場。
 ヘルメットをかぶったまま、苦痛に顔をゆがめる坂本。

 心配そうに巨大モニターを見ている大袈裟。

岡田「あかん。もぐってしもうた」
三宅「今度は僕の番だね。ラ……ラ……ラーメン大好きツル!」
 ブロッコ・ロボの頭からヘッド・ギアが消え、ビキニタイプの水泳パンツが現れる。ブロッコ・ロボは海に駆け寄り、頭から飛び込む。大きな波が岸辺に打ち寄せる。
 海中。海底を逃げていく巨大シオマネキ。それを泳いで追うブロッコ・ロボ。もう少しで手が届きそうになった時、突然巨大シオマネキが消える。
三宅「消えた」
岡田「どうなっとんねん」

 モニターを見ていた大袈裟。
「よくやった。いったん引き上げてくれ」
森田「このままでいいのか」
大袈裟「ひとまず大丈夫だ。敵は今回は諦めたらしい」

 ヘルメットをはずし、肩で大きく息をしている坂本。顔中汗まみれ。

 Vレンジャー本部。四人は本の姿に戻り、大袈裟の前に立っている。
大袈裟「やはり、四人では勝てないらしい」
岡田「なら、あんたが乗ればええやん」
大袈裟「それはできないんだ」

 地下工場。電話をしている坂本。
「はい、そうなんです。ちょっと人手が足りなくて……。はい、そうしていただければ助かります。それで、誰を……。え……鉄の皿? たしかそんな名前? はあ、わかりました。恩に着ます。ありがとうございます、マッチさん」
 電話を切り、にやりと笑う坂本。

 Vレンジャー本部。
森田「残りはどういうやつなんだよ」
大袈裟「それは私にもわからないんだ」
井ノ原「いい加減だな。何かもういやになってきた」
 その時、入り口から、
「どうなってんのよ、これ」
という少女の声。そちらへ目を向ける五人。

 地下工場。鉄の扉の前に立っている五人の男の後ろ姿。扉が左右に開くと、中にいた坂本が笑顔で迎える。
ナレーション「Vレンジャーの五人目の仲間は誰か。そして坂本のもとに現れた五人は何者か。本当の戦いは今度こそ本当に始まろうとしていた」

TO BE CONTINUED!


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