第18話 「エピソードV 後編」

(by みなみさん)

ナレーション「いったいこの大袈裟な話はどこまで続くのか?Vレンジャーはどこへ行ってしまったのか?これは、正義と友情に命をかけた若者たちの物語、のはずであった」


マサユキンたちの乗った宇宙船は共和国へ着陸しようとしていた。
ナカイ・ガン「キムダラ王女、もうすぐ共和国へ着きます。」
キムダラ「とうとうここまでやってきたな。でも戦いはこれからですね。」
ナカイ・ガン「われわれも及ばずながら力になります。」
キムダラ王女の手を両手で握るナカイ・ガン。そこへゴロクミが部屋へ入ろうとドアを開ける。が、

ゴロクミ「あら、やだ。このドア通り抜けられなくなってる。また太っちゃったのかしら。ゴロクミ、ダイエットしてるのに。」

キムダラ「ダイエットしてるなら、食うなって言ってるだろ。もうすぐ共和国に着くんだから、船から出られないならここに置いてくからな。」

ナカイ・ガン「お、王女・・・。その言葉遣い・・・」
ゴロクミ「もう着陸するから用意してくれって言ってたわ。ゴロクミこのドア通れないから、降りる支度はキムダラちゃんお願いね。」

キムダラ「ふっ、ふざけんじゃねえ!」
ナカイ・ガン「まあまあ。だったら誰か手伝いに寄こしますから。」

マサユキンがキムダラ王女の部屋へ行く。
マサユキン「失礼します。お手伝いにまいりました。」
キムダラ「ありがとう。いよいよ共和国だけど、お前はどうするつもり?」
マサユキン「俺はマスター達についていきます。ジャニイになりたいんです。」

キムダラ「きっとなれる、お前ならだいじょうぶ。スマー星のダンスの優勝者なんだから。」

マサユキン「王女・・・。がんばります。きっとオーディションに受かってみせます。」

その時、宇宙船にわずかな振動が走る。
キムダラ「着いたみたいですね。さ、行きましょう。」

彼らの宇宙船を迎えにやって来たのは、一人の若い男である。その男を見るなりキムダラ王女が声をかける。

「シンゴン議員!いま、スマー星では大変な事態になってます。すぐにも共和国で裁判を!」

シンゴン「まあ待ってください。こちらでも憂慮しています。しかしよくご無事で。」

ナカイ・ガン「キムダラ王女、こちらは?」
キムダラ「わが星からの代表として共和国の議会に入っているシンゴン議員です。」

シンゴン「こちらの方々はどなたです?」
キムダラ「私の脱出に力を貸してくれた人々です。ジャニイの騎士たち。」
シンゴン「ジャニイ?しかし彼は?」
シンゴンはマサユキンを見つめている。
オオゲ・サン「彼はいま修行中の身です。」
シンゴン「修行中?それにしては年がいってるようですが。」
ナカイ・ガン「それは年齢で決まることじゃあない。その人間の持つ精神と身体だ。」

シンゴン「なるほど。でもそんなにオーディションは甘くないと聞いてますが。それよりスマー星と通商連合の問題ですが、連合はかなり強硬な姿勢に出ています。われわれは議長に直接王女から働きかけ、会議のイニシアティブをとる必要があるんです。」

キムダラ「なるほど。では議長のところへ行って話をしましょう。」
シンゴン「彼はいまタノキン星で視察中です。いまなら通商連合にじゃまされずに接触できるでしょう。」

キムダラ「タノキン星・・・。そんな所まで。ナカイ・ガン、オオゲ・サン、マサユキン、あなた達もついて来てくれますか?」

3人「もちろんです、キムダラ王女。」

宇宙船に乗り込むキムダラ王女、ナカイ・ガン、オオゲ・サン、マサユキン、そしてシンゴン議員。船は全速力でタノキン星へ向かう。

オオゲ・サン「共和国で本当はジャニイのオーディションを受けてもらうつもりだったんだが。しかたないさ。この旅から帰ったら、すぐに応募しよう。」

マサユキン「あのシンゴンって議員ですが、なんか気にいらねえ。」
オオゲ・サン「何を言うんだ。ちょっと年のことをあてこすられたからって。」

マサユキン「ちがう。そうじゃねえ。俺の野性のカンが受け入れねえんだ。」

ナカイ・ガン「たしかに。俺もちょっとうさんくせーと思うぜ。」
オオゲ・サン「マスターまで!かりにも共和国の議員、それもスマー星の人間ですよ。」

ナカイ・ガン「そうだといいんだが。ま、気をつけることだ。」

タノキン星に着陸する宇宙船。ところが、着陸するやいなや兵士たちに囲まれてしまう。

ナカイ・ガン「な、な、なぜだ?どういうことなんだ?」
兵士「お前らがここへ来ることなんて、マッチ様にはちゃ〜んとお見通しなんだ。」

ナカイ・ガン「マッチだって!そんなバカな・・・。」
キムダラ「マッチとは誰ですか?」
ナカイ・ガン「ジャニイの宿敵ですよ。ダークサイドの力に魅せられ、それを駆使する。何人ものジャニイの騎士が殺されたり、堕落させられたりしてるんです。」

オオゲ・サン「それがとうとう現れたのか。」
マサユキン「またダークサイドか。そのマッチとかいうやつが、ダークサイドなのか?」

ナカイ・ガン「そうだ。マサユキン、ダークサイドの力は恐ろしいべ。生半可な精神力では立ち向かえない。いいか、絶対にあいつの言うことを聞いちゃだめだ。」


マッチの前に引き出される4人。
マッチ「ようこそ、タノキン星へ。お待ちしてましたよ、キムダラ王女。あとはジャニイの騎士と、ん?なんだ、お前は?」

マッチはマサユキンのほうをじっと見ている。そこへ口を開いたのは、
シンゴン「この男はマサユキン・サカイモートー。ただのジャニイの見習いですよ。あなたがお気になさるような者ではない。」

キムダラ王女がはじかれたようにシンゴン議員を振り返る。
キムダラ「シンゴン議員!あ、あなたは、まさか、この男と・・・」
シンゴン「私もせっかく議会にまで出たのだから、それなりの力が欲しいってわけですよ。権力とか財力とかそういったものです。」

キムダラ「スマー星ではたくさんの人が苦しんでいるっていうのに。あなたは故郷の人々を平気で裏切れるのですか?」

ナカイ・ガン「キムダラ王女、言ったって無駄ですよ。この男にそういった力を求める心があるかぎり、ダークサイドの力は彼を支配できるんです。」

オオゲ・サン「やはりマサユキンとマスターの言ったとおりだったのか。」
ナカイ・ガン「ああ、あいつのカンはすごいよ。前もって覚悟してたからな、あまりあいつに対して憎しみを感じなくてすむ。」

マサユキン「憎しみ・・・。それは訓練で捨てろと言われた・・・。」
オオゲ・サン「憎しみの心はダークサイドへ通じるんだ。それだけじゃない。マスターが打ち勝てと言ったすべての感情はダークサイドにつけいられやすい。」

マッチ「ふうん。それほどのカンを働かせられるとは、お前ただの見習いではないな。」

マサユキン「いまはただの見習いだ。だが、親父もジャニイの騎士だった。俺は必ずジャニイになってあんたをやっつけてやる。」

ナカイ・ガン「おい、よせ!かまうんじゃない。」
マッチ「なるほど。どっかで見たような気がしたんだが、お前の親父だったか。」

マサユキン「親父を知ってるのか?」
マッチ「昔、俺とコンビを組んでた。途中で力つきて自ら脱退してしまったがな。いいパートナーだったのに。」

ナカイ・ガン「パートナー?」
オオゲ・サン「まさか・・・。」
マッチ「来い、マサユキンとやら。お前ならきっと親父以上のパートナーになれる。」

ナカイ・ガン「マサユキン、だめだっ!そいつの言うことを聞くな!」
マサユキンは魅せられたようにマッチを見つめている。
マッチ「力が欲しくないのか?私ならお前にその二人以上の力を与えてやれる。」

オオゲ・サン「マサユキン!しっかりするんだ!」
ふらふらとマッチに引き寄せられるマサユキン。

キムダラ「待ちなさい!いままで何のためにがんばってきたの?」
その言葉にはっとなるマサユキン。
マサユキン「お、俺は、いま、いったい・・・。」
マッチ「俺の支配から抜け出すとはたいしたやつだな。お前、王女が好きなのか?」

マサユキン「王女は私をいつも励ましてくださる。大切なお方だ。」
マッチ「なるほど。だが、王女のほうはどうかな?」
ナカイ・ガン「なっ、なにを言うんだ!」
マッチはナカイ・ガンを指さし、
「おおかたそいつがものにしてるんじゃないのか?」
オオゲ・サン「マ、マスター、それは本当ですか?」
マッチ「王女に聞いてみろよ、どっちを取るのかって。お前か、その男か。」

マサユキン「キムダラ王女、ほんとですか?あなたはマスターのことが・・・。」

キムダラ「・・・。ごめんなさい、マサユキン。あなたのことはとても感謝しているし、応援しています。でも、この先私がスマー星のために共に歩きたいのはこの方なのです。」

呆然と立ちすくむマサユキン。
マッチ「そうら見ろ。それがお前の敬愛する王女と尊敬するマスターだ。」
オオゲ・サン「マサユキン、今日までのジャニイの訓練を思い出せ。マスターがどういう人かも王女のこともお前にはわかっていたはずだ。」

うつむいたままのマサユキン。

その時、上空に何隻もの宇宙船が飛来するのが見える。
マッチ「ん?なんだ?」
兵士「マッチ様、共和国の軍がやってきました!」
マッチ「よし、この4人を連れて離陸しろ。」
マサユキン「待った。連れて行くのは俺だけでいい。」
マッチ「何だと?」
ナカイ・ガン「なに言ってんだ。やめろって。」
オオゲ・サン「マサユキン!しっかりしろ。」
マサユキン「わかってる。あんたらは別の船で逃げろ。こいつは俺がくい止める!」

そう言うとともにマッチに向かって行く。
マッチ「く・・くそっ!はなせ!」
兵士「マッチ様、早く逃げないと時間がありません!」
マッチ「お、おぼえてろっ!しかたない。こいつは俺がもらっていく。かならず俺のパートナーに仕立ててやる。」

マサユキンを連れ、宇宙船に乗り込むマッチ。すぐに船は離陸し、空へと消えていく。

オオゲ・サン「マサユキン・・・。」
ナカイ・ガン「あいつは立派だった。だが、いつかあいつは俺たちの一番の敵になるだろう。」

キムダラ「仕方のないことです。いまは私達も共和国へ急ぎましょう。通商連合を訴えるのです。」

そして彼らは共和国の宇宙船に乗り、旅だってゆく。

その後、共和国の攻勢により、通商連合はスマー星から手を引き、マッチの勢力はジャニイに抑えられた。だが、マサユキンがふたたび共和国に戻ってくることはなかった。

そして月日はめぐり、偉大なマスター=ナカイ・ガンが最期の時を迎えようとしていた。

オオゲ・サン「マスター、しっかりしてください。」
ナカイ・ガン「オオゲ・サン、後のことはお前にまかせたべ。ただ、ひとつ心に残っていることがある。」

オオゲ・サン「わかってます。マサユキンのことですね。」
ナカイ・ガン「そうだ。俺たちは結局あいつを救ってやることはできなかった。あいつはいまもダークサイドに囚われたままだ。もしこのままあいつが死ぬようなことになれば、生まれ変わるたびにダークサイドに狙われることになる。いいか、お前はあいつが生まれ変わるたびにその傍らであいつを悪の手から守るんだ。そしていつか必ずあいつの魂を救い出せ。俺もそばにいてやれればいいんだがな。」

オオゲ・サン「マスター、マサユキンのことは私が。あなたにはキムダラ王女がいるじゃありませんか。マサユキンを最初に連れ出したのは私なんですから。」

ナカイ・ガン「ああ、じゃ頼んだぜ・・・・。」
オオゲ・サン「マスター・・・。」
こうしてマスター=ナカイ・ガンは息をひきとった。オオゲ・サン=ヒローシは決意を胸にひとりで戦いへ赴く。彼が見いだし、彼が育てたマサユキン・サカイモートーとの戦いへ・・・・。

                             (完)

・・・おっといけない、忘れてた・・・
Vレンジャー本部。
大袈裟「こういう前世の使命を背負って私はこの世に生まれてきたのだ。君達はその私が見つけだしたジャニイの騎士なんだ。」

井ノ原「なるほど。それで博士と坂本って人は地球に生まれ変わったってことですか。」

森田「ほんとかよー。なんかうそくせーな。それ、昨日見た夢かよ?」
三宅「ジャニイの騎士ねえ。SF映画の見すぎなんじゃねーの?」
あい「でも、ちょっとかっこいい。」
岡田「ほんまやったらな。なんせこの人は大法螺ふきなんやから。」
遠い目をしてスクリーンの星空を見つめる大袈裟。彼の胸に去来しているものは果たしてなんなのか。地球の輝く未来なのか、それとも前世からの因縁だと称する坂本のことなのか。


ナレーション「こうしてSTAR WARSは終わり、戦いの場所は地球へと移される。
坂本と大袈裟の宿命の対決は、はたして前世からの因縁か、それとも単なる大袈裟の法螺か妄想か。だが、行け!Vレンジャー。地球の未来は君達にかかっている。ジャニイの騎士のごとく悪に立ち向かえ!」

TO BE CONTINUED!


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