第17話 「エピソードV 中編」

(by みなみさん)

ナレーション「マサユキンに乗っ取られてしまった「Vレンジャー」。ダンス・バトルの勝者ははたしてどちらか。マサユキンははたしてあこがれのジャニイの騎士になることが出来るのか?そしてキムダラ王女の救出作戦は成功するのか?
これは、正義と友情に命をかけた若者たちの物語である、はずである」


会場に音楽が流れ始める。次々に正確なステップを踏んでいく二人。
サノ・ミズーキー「くそっ、6カ所だと感じがつかみづらいな。」
マサユキンすかさずターンを決める。わっと会場がどよめく。
サノ・ミズーキーも負けじと連続ターン。会場から拍手が起きる。
だが、最後にマサユキンはバク転を決めてフィニッシュ!
サノ・ミズーキー「お前、今日はなかなかやるじゃん。」
マサユキン「6つってのがなぜか俺に合ってる。イメージしやすいんだ、配置とか。」

サノ・ミズーキー「ふうん、そんなものか。」
一瞬の暗転の後、クサナーギにライトが当たる。
クサナーギ「さあ、いよいよ優勝者の発表です。優勝したのは、果たしてどちらか?シニアのトップ、サノ・ミズーキーか。ジュニアのベテラン、マサユキン・サカイモートーか。」

シーンと静まり返った会場。クサナーギの声が響く。
クサナーギ「勝者は・・・マサユキン・サカイモートー!」
一瞬の沈黙の後、割れんばかりの歓声が場内をつつむ。

ナカイ・ガン「やったじゃん、あいつ!助かったべ。」
オオゲ・サン「では、彼を我々と一緒に連れて行けるんですね?」
ナカイ・ガン「あったりめーじゃねえか。だが、ジャニイになれるかどうかは俺には保証できないぜ。それより、いいか。表彰式のときにキムダラ王女を救い出すんだ。」

オオゲ・サン「えっ、表彰のときですか?ふっ、船はどうするんですか。」
ナカイ・ガン「宇宙船なんか、ここにあるのを拝借すりゃあいいじゃん。俺にまかせとけって。それより、あいつに協力させるんだ。あいつが直接王女から表彰されるんだからな。」


ステージ上のマサユキン。まだ、ぼーっとしている。
サノ・ミズーキー「おい、握手くらいしようぜ。」
マサユキン「あ、ああ。まだ信じられないよ。俺が、俺がここから出て行けるなんてさ。」

サノ・ミズーキー「えっ、それほんとかよ?お前、奴隷だったはずじゃ。」
マサユキン「これに優勝したら、自由になれる約束だったんだ。」
サノ・ミズーキー「自由であるために、か。それじゃ、俺が負けたのも無理ないか。がんばれよ、俺、応援してるぜ。」

マサユキン「ありがとう。お前もがんばれよ。」

そこへオオゲ・サンがやってくる。
オオゲ・サン「やったな、おめでとう!本当にすごかったよ。」
マサユキン「俺、本当にあんたらと一緒に行けるんだよな?」
オオゲ・サン「もちろんだよ。ただ、その前にひとつ手伝ってもらいたいことがあるんだ。それが、そもそも俺たちがこの星へ来た理由なんだが。」

マサユキン「いったい何を手伝うんだ?」
オオゲ・サン「キムダラ王女をこの星から救い出す。」
マサユキン「なんだって?王女をこの星から連れ出すってのか?」
オオゲ・サン「ああ、このままでは通商連合のやつらのいいようにされてしまう。そこでだ、表彰式のときにお前に王女を連れ出してもらいたい。脱出経路は俺たちがなんとかしておく。」

マサユキン「そういうことなら・・・。わかったよ、協力する。」

会場のすみでナカイ・ガンとオオゲ・サン。
ナカイ・ガン「おい、どうだった?あいつはやれそうか?」
オオゲ・サン「だいじょうぶです。マスター、船はどうなりました?」
ナカイ・ガン「ああ、下に確保してある。しかし、通商連合の船がうようよいやがるぜ。」

オオゲ・サン「思ったよりも勢力を伸ばしてますね。裏にダークサイドの力が働いているという噂は本当でしょうか。」

ナカイ・ガン「わからねえ。だが、そうだとしたら大変なことだぜ。」
オオゲ・サン「ある名前を聞きました。マッチ・・・とか。」
ナカイ・ガン「それは口に出したらいけねえ。ジャニイでは禁断の名前なんだ。あいつはソロで活動している。だが、つねに自分のパートナーを探しているんだ。


オオゲ・サン「パートナーですか?」
ナカイ・ガン「昔はトシというやつと組んでいたそうだ。トシってのはジャニイの騎士だったんだが、あいつの誘いにのってダークサイドに引きずられて脱退しちまったんだ。」

オオゲ・サン「そうだったんですか。知りませんでした。」
ナカイ・ガン「力を求める者にとってダークサイドの力は大きな魅力だ。だが、いったん引きずられたが最後、自分のすべてをなくしてしまう。気をつけろよ。」


ステージでは、表彰式が始まろうとしていた。
ステージ上の全員がキムダラ王女の登場を待っている。
クサナーギ「さあ、いよいよキムダラ王女から表彰状が手渡されるわけですが、どうですか?いまの気持ちは?」

マサユキン「な、なんて言ったらいいのか・・・。王女にお目にかかるのも初めてです。」

クサナーギ「優勝者には王女からお礼のキスが贈られますよ。」
マサユキン「キ・・キスですか?そ、そんな・・・。」
真っ赤になるマサユキンとそれをにこにこと見守るクサナーギ。と、いよいよファンファーレが鳴って、キムダラ王女がステージ中央へ上がってくる。

会場は大きな拍手で王女を迎える。
キムダラ「ありがとう、みなさん。そして、おめでとう、マサユキン。あなたがこのダンス・バトルの勝者です。」

キムダラ王女がマサユキンに表彰状を手渡そうとするが、マサユキンはキムダラ王女の顔を見つめたまま動けないでいる。


ナカイ・ガン「おい、だいじょうぶか?あいつ。美人の王女に見とれてやがる。」

オオゲ・サン「たぶん間近で見たことなんてないでしょうからね。少し目を覚まさせたほうがいいかもしれません。」

オオゲ・サンが手のひらをマサユキンに向け、気を発すると、マサユキンは衝撃を受け、はっと目が覚める。

マサユキン「お、お、俺・・・。あ、ありがとうございます、王女。」
マサユキンはキムダラ王女から表彰を受け、王女の祝福のキスを左の頬に受ける。

マサユキン「王女、いまです。我々と一緒にこの星を抜け出しましょう。」
キムダラ「えっ?でも人々を置いたまま、出ていくわけにはいきません。」
マサユキン「このままでは、いずれ通商連合のいうままになってしまいます。抜け出して共和国へ行き、通商連合の非を訴えるんです。」

キムダラ「・・・・。お前が連れ出してくれるの?」
マサユキン「はい。私と二人のジャニイの騎士が。」
キムダラ「わかりました。そうと決まったら早いほうがいい。すぐにも!」

マサユキンとキムダラ王女、王女のおつきの侍女・ゴロクミは、回りを固める兵士たちのふいをつき、会場のほうへと逃げ込む。会場では、すでにナカイ・ガンとオオゲ・サンが逃げ道を確保すべく待機している。

ナカイ・ガン「おい、こっちだ。オオゲ・サンとともに行け。ここは俺がくいとめる。」

オオゲ・サン「マサユキン、キムダラ王女、それとそのデブの、いやお肥えになった、いや肥満体の、あ〜もうどうでもいい、こちらです。」

先に逃げるオオゲ・サンとマサユキンとキムダラ王女とゴロクミ。追いすがってくる兵士たちをナカイ・ガンが倒していく。

ナカイ・ガン「おい、下へ逃げろ。宇宙船が待ってるはずだ。」
宇宙船のある方向へ逃げる4人。通商連合の兵士たちの追跡を振り切り、ついに宇宙船の中へ逃げ込む。すぐさまエンジンを始動し、離陸。空中へ出るとすぐさま方向転換し、追ってこようとする通商連合の宇宙船を撃ち落とし、そのまま猛スピードで宇宙空間へ脱出!


ナカイ・ガン「やったな。これでしばらくは追ってこれないべ。」
マサユキン「これで俺は自由の身か。本当に自由なんだ。」
オオゲ・サン「そうだとも。俺たちと一緒に行こう!」
キムダラ「ありがとう。あなたたちに感謝します。勇敢な戦士たち。」
ナカイ・ガン「いっ、いや、それほどでも・・。」
なぜか照れるナカイ・ガン。
オオゲ・サン「マサユキン、せっかく一緒に旅してるんだ。いまからジャニイの訓練を始めよう。」

ナカイ・ガン「おい、ちょっと待て。」
オオゲ・サン「マスター・・・。」
ナカイ・ガン「言ったはずだぜ。ジャニイに入るのは難しいって。いま下手に訓練なんかしないほうがいい。」

マサユキン「ジャニイに入れない!それはなぜなんですか?」
ナカイ・ガン「お前は入るにはちょっと年がいきすぎてるんだ。たしかに才能は優れてるが、訓練を始めるには遅すぎる。」

マサユキン「そ、そんな・・・。いままでの下積みはなんだったんだ。」
オオゲ・サン「マスター、私が彼を指導します。いまから少しでも早く始めれば、オーディションに通る可能性だって。」

ナカイ・ガン「だがな、それが危険なんだ。生半可な訓練はダークサイドに惹かれやすい。」

マサユキン「俺はそんなものに惹かれたりしないっ!お願いだ。俺を特訓してくれよ。」

オオゲ・サン「マスター、彼もこう言ってます。私は彼の訓練を始めます。」


宇宙船の船内でジャニイの訓練を始めるオオゲ・サンとマサユキン。それを遠巻きに見つめるナカイ・ガン。

オオゲ・サン「いいか。君はいままで身体を自分の意のままに動かすことを練習してきたはずだ。それはもちろん大切なことだ。だが、ジャニイでは精神を自分の意のままにしなくてはならない。それがなによりも大事なことなんだ。」

マサユキン「精神を自分の意のままに、そんなことができるんですか?」
オオゲ・サン「それをしなくてはいけない。それができなければ必ずダークサイドの力に取り込まれることになる。」

それを聞いていたナカイ・ガンが二人の訓練に口をはさむ。
ナカイ・ガン「おい、そんなことはいま話すな。」
マサユキン「ダークサイド?前も言ってたな。ダークサイドってなんのことなんだ?」

ナカイ・ガン「お前はまだ知らなくていい。いいか、まず自分の心の中の敵に打ち勝つんだ。迷い、恐れ、過剰の自信、欲、憎しみ、そういったすべてのものに勝て。」

マサユキン「どうすれば勝てるんですか?」
ナカイ・ガン「それはこれから教えることだ。お前は俺たちを信じてついてこい。」

オオゲ・サン「マスター、それではマサユキンの訓練を・・・。」
ナカイ・ガン「ああ、どうせやるなら中途半端にするな。徹底的にジャニイの精神をたたき込め。いつかそれが役立つ日がくるだろうよ。」

マサユキン「お願いします!なにがあってもついていきます!」

ナカイ・ガン「よし、じゃあこれからだ。この棒を持ってみろ。」
ナカイ・ガンがマサユキンに手渡したのは、野球のバットのような棒である。

ナカイ・ガン「いいか、ここにあるこの球をそいつで打ってみろ。」
野球ボールのような球体が空中に浮かんでいる。
マサユキン「これを打てばいいんですか?簡単ですよ。思いっきりいってもいいんですか?」

ナカイ・ガン「打てるもんならな。」
マサユキンはバットをかまえてボールを打とうとするが、ボールはすっと移動してかすることさえできない。

マサユキン「な、なんなんだ、このボールは。」
オオゲ・サン「マサユキン、心の目で見るんだ。心の中にある力を使え。」
マサユキン「心の目?そんなもん・・・。」
マサユキンは心を静め、両目をつぶった。そして集中する。
オオゲ・サン「マスター・・・。」
ナカイ・ガン「ああ。」
マサユキンはバットを前後左右に少しずつ動かす。するとボールの動く気配が感じられる。そのボールめがけてバットを振るマサユキン。バットにコーンという音が響きわたり、確かな衝撃の感触が両手に感じられる。

マサユキン「やった!」
オオゲ・サン「すごいっ。こんなにすぐにマスターできるなんて、見たことがない。ジャニイの中にもこんなに覚えの早い者はいません。彼こそはジャニイになるべくして生まれた者ですよ。」

ナカイ・ガン「たしかにたいした才能だ。だが、俺の思い過ごしだといいんだがな。あいつには少し不吉なものを感じるんだ。」

オオゲ・サン「マスター・・・。」

船内のキムダラ王女の部屋。
キムダラ王女、ゴロクミ、マサユキンが室内にいる。
キムダラ「ありがとう、マサユキン。お前のおかげで無事脱出できたわ。」
ゴロクミ「そうよぉ。すっごいかっこよかったわ。あー、でも安心したらおなかすいちゃった。」

キムダラ「もう食べるんじゃねえっ。これ以上、部屋が狭くなるのはがまんできないから、食べるんなら出ていってもらう。」

ゴロクミ「ひどいわ。」
マサユキン「でも王女、私の力ではありません。あれはマスターとオオゲ・サンの・・・」

キムダラ「でもお前がダンス・バトルに優勝したからこそできたこと。それにお前にはジャニイの騎士になるたぐいまれな素質があると聞いたよ。」

マサユキン「王女・・・」

ナレーション「無事キムダラ王女を脱出させたオオゲ・サンたち。そしてついにジャニイになるべく訓練を始めたマサユキン。ナカイ・ガンの不吉な予感はいったい何なのか?この話はVレンジャーへと戻ることができるのか?行け!マサユキン。やるからにはジャニイのスターとなれ!」

TO BE CONTINUED!


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