第16話 「エピソードV 前編」

(by みなみさん)

ナレーション「地球の平和を守るため、戦い続けるVレンジャーとその生みの親・大袈裟博士。自分の身を犠牲にしてまで世界中の人々を助けようとするその精神はいったいどこから生まれてきたのであろうか?これは、正義と友情に命をかけた若者たちの物語である」


Vレンジャー本部。
森田「あいつら、けっこうしつこかったよな。」
岡田「そうやな。DISHは甘くなかった。」
あい「あい、しつこいの嫌い。暗いのもいや。」
三宅「じゃ、俺たちなんていいんじゃん。正義の味方なんだしさ。ねっ。」
妙にまじめな顔で考え込んでいた井ノ原がついに口を開いた。
井ノ原「あ、大袈裟博士。」
大袈裟「ん?なにかな。」
井ノ原「あの坂本って人のことなんですけど、なんだってあんなに博士に敵対心を燃やすんですか?」

妙に寂しそうな目をして大袈裟が言った。
「うん、できるならずっと黙ったままでいたかったんだが。仕方ないな。そろそろ君達に話す時期かもしれない。」

井ノ原「えっ、ほんとですか?」
森田「とかなんとか言っちゃって、またつまんねー昔話か大法螺じゃねーの?」

大袈裟「な、なんてことを!これは正義のエピソードだ。われわれが地球を守る正義の戦士となったのは、まさに運命なんだ。」

岡田「運命?それ知ってるわ。”弁当と便”とか言うやつやろ?」
三宅「ベートーベン!お前、そんなことも知らねーの?」
大袈裟「音楽の話じゃないんだ。これはもっと壮大な、スケールのでっかい、わかりやすい話なんだ。」

あい「ようするに大袈裟な話ってことね。」

スクリーンに夜空の星々の映像が写り、STAR WARSのテーマが流れる。

画面の手前下方から前方に向かって文字が流れていく。
「遠い昔、はるかかなたの銀河系で・・・。
共和国の統治により秩序と平和が守られていたが、通商連合がしだいに辺境の星からその勢力を伸ばしつつあった。そんな折り、共和国の辺境の星・スマー星の盟主であるキムダラ王女がプールに通商連合大使の息子を「イエー!」と叫びながら放り込むという事件が発生。激怒した通商連合はスマー星に駐留しキムダラ王女を監禁して圧力をかけていた。共和国はその守護者たるジャニイの騎士2名をスマー星に派遣し、調査と事態の改善をはかることにしたが、彼らは通商連合の罠にはまり、いまやその脱出の機会をうかがっていた。」


スマー星。
2名のジャニイの騎士、マスター=ナカイ・ガンとその弟子オオゲ・サン=ヒローシは、壊れた宇宙船の部品を買うために奔走していた。
ナカイ・ガン「おい、どうするべ。キムダラ王女を救い出して、ここから脱出しなきゃいけないってのに、部品を買う金もねーじゃねーかよ。だいたいお前がラーメン食いすぎるからいけねーんだよ。」

オオゲ・サン「マスター、そんなこと言わないでくださいよ。ラーメン代なんて微々たるものじゃないですか。それよりマスターの変な服と役にたちそうにないコタツってな代物のせいじゃないんですか?」

ナカイ・ガン「あの炬燵ってのはな、年中使えるべ。一人暮らしには必需品だったの。たしかにもはやアンティークだけどな。」

オオゲ・サン「それより部品をどうにかしないと。あそこの部品屋で交渉してみますか。」


2人が入っていった部品屋では、ひとりの若い男が店番をしていた。
男「え〜い、らっしゃ〜い!」
ナカイ・ガン「なんか八百屋の呼び込みみてーだな。」
オオゲ・サン「すいません、実はこれだけの部品が必要なんですが。」
とオオゲ・サンは男にリストを見せ、
「持ち合わせがこれだけしかないんですよ。」
と正直に持ち金をさらしてみせた。
男「これじゃあ、ちょっと無理だな。機械の修理なら俺がなんとかしてやれるけど、部品がなきゃ、どうにもなんねぇ。」

オオゲ・サン「君は修理が得意なのかい?」
男「ああ、これを見てくれ。ガラクタから作ったロボットなんだ。」
男が見せたロボットは人型の家事用ロボットだった。だが、部品が足りないらしく、ほとんどの表面が配線むきだしになっている。

オオゲ・サン「これはたいしたものだ。君にはロボット作りの才能がある。」

ナカイ・ガン「なにごちゃごちゃ言ってんだよ。で、部品は手に入んのか?」

男「俺もこの店で雇われてる奴隷だしな。部品のことはちょっと無理だ。」
オオゲ・サン「しかたないさ。他の店をあたってみるよ。」
男「ちょっと待った。」
ナカイ・ガン「なんだよ。まだなんかあるのかよ。」
男「あんたら、ジャニイの騎士だろ?」
2人は思わず顔を見合わせる。
ナカイ・ガン「なんだよ、それ。わかんねーな。」
男「わかるんだよ。俺、ずっとあこがれてたからさ。な、もしあんたらが本当にジャニイの騎士だったら、俺が部品代稼がせてやるよ。」

オオゲ・サン「どういうことだい?」
男「ここではみんなが夢中になってるゲームがある。ギャンブルさ。あんたら、ダンス・ダンス・レボリューションって知ってるかい?」

ナカイ・ガン「ダンス・ダンス・レボリューション!ナウいべ。」
オオゲ・サン「マ、マスター、いまじゃあゲーセンでも廃れかけてますよ。」

男「この星じゃ、このバトルに金を賭けてる。二人とも、その有り金を俺に賭けてみろよ。」

ナカイ・ガン「ダンスだったら俺だって得意だぜ。」
オオゲ・サン「まあ待って。こう言うんだから、彼にやらせてみませんか?君、なんて言うんだい?私はオオゲ・サン=ヒローシ。」

ナカイ・ガン「俺はマスター=ナカイ・ガンだ。」
男「俺はマサユキン・サカイモートー。顔も見たことねーが、親父はジャニイの騎士だったらしい。」

オオゲ・サン「よし、じゃあ行こう!」

ダンス・ダンス・レボリューションのバトル会場。
大勢の出場者の中、マサユキンはすでに待機している。
ナカイ・ガン「すげえな、すげえ熱気だ。おい、お前、だいじょうぶか?」
マサユキン「ジュニアの中じゃ、俺が一番うまい。」
オオゲ・サン「なんだ、そのジュニアってのは?」
マサユキン「キムダラ王女の正規軍になる前の予備軍だ。ここではダンスが必須なんだ。」

オオゲ・サン「キムダラ王女もダンスが好きなのか?」
マサユキン「もちろんさ。王女ご自身がステージ中央に立たれてパラパラをされることもある。それに、このバトルの優勝者はキムダラ王女じきじきに表彰されるくらいさ。」

ナカイ・ガン「そうか。これはひょっとするとチャンスだぞ。」

バトル会場では、マサユキンが快調に勝ち抜いていく。
1次予選、2次予選と次々に突破していき、ついには決勝戦に勝ち進む。
ナカイ・ガン「やったじゃん!あいつ、すごいよ。賭けも順調だしさ。そろそろ部品代に手が届くぜ。」

オオゲ・サン「マスター、彼はジャニイ並みの運動神経ですよ。どうでしょう?彼の主人と話し合って、決勝戦を賭けてもし勝ったら、彼を我々に引き取らせてもらうということにしたら?」

ナカイ・ガン「引き取ってどうするんだ?」
オオゲ・サン「彼にジャニイの訓練を受けさせるんです。」
ナカイ・ガン「・・・・。難しいと思うぜ。」
オオゲ・サン「な、なぜですか?」
ナカイ・ガン「わかってるだろ?年がいきすぎてる。いまからジャニイの訓練を受けるには遅すぎるんだ。だが、お前がそういうなら、とりあえずあいつの主人と話はつけてもいいぜ。」

オオゲ・サン「マスター、ぜひ!ぜひお願いします。」

決勝戦前。マサユキンのもとへオオゲ・サンが行く。
オオゲ・サン「言うだけのことはあるんだな。すごいよ。マスターも感心してた。」

マサユキン「彼があんたのマスターか。なんでもジャニイの騎士は弟子をひとりずつ持つって話だな。」

オオゲ・サン「ああ、口とセンスは悪いけど、すばらしいマスターだよ。それより決勝はだいじょうぶかい?」

マサユキン「あそこにその相手がいる。」
マサユキンが指さす方向には、マサユキンと同じくらいの年の男が立っている。

オオゲ・サン「あいつ、うまいのか?でもジュニアでは君が一番うまいって。」

マサユキン「あいつはジュニアじゃねえ。シニアなんだ。」
オオゲ・サン「シニア?なんだそれ?」
マサユキン「正規軍にはなれねーが、ジュニアを卒業したやつらだ。あいつはサノ・ミズーキー。俺はシニアにはなりたくねーと思ってたんだ。だが、シニアのやつらはたしかにうまい。」

オオゲ・サン「で、勝てるのか?いままで勝ったことは?」
マサユキン「いままで勝ったことはねえ。だが今日は勝つ!」
そこへナカイ・ガンが帰ってくる。
ナカイ・ガン「おい、うまくいったぜ。もし、こいつが勝ったら俺たちが引き取るって話、あっさり承諾しやがった。」

オオゲ・サン「マ、マスター、じつは・・・・」
マサユキン「そ、それは本当か?それが本当なら、俺はどんなことをしても必ず勝つ!」


決勝戦バトルに向かうマサユキン。それをジャニイの騎士二人が見送る。
ナカイ・ガン「なんだって?一回も勝ったことないって?なんでそれを早く言わないんだ!それじゃあ俺たちの賭けは負けじゃんか!あいつがあっさり賭けに乗るはずだよ。」

オオゲ・サン「まあまあ、彼もがんばるって言ってることですし。それにもう負けても部品代くらいはだいじょうぶでしょう。」

ナカイ・ガン「おっ、俺、あいつと引き替えにコタツ賭けちった。」
オオゲ・サン「それは助かった・・・じゃない、とにかく彼を信じましょうよ。」


決勝戦会場。
決勝戦の観戦のため、キムダラ王女がみんなの前にあらわれる。
キムダラ「会場にお集まりのみなさん、のってるか〜い!イエー!」
会場がウワーッとすごい熱気で盛り上がる。
ナカイ・ガン「おい、おい。すっげえ美人の王女様じゃん。」
オオゲ・サン「たしかに美形ですよね。」
キムダラ「私の不祥事から、この星にこのような憂慮すべき事態をまねいたことは深く反省しています。でもっ、私には許すことはできません。弱い者を食いつぶすような通商連合のやり方はっ。」

会場から「そのとおりっ!」という嵐のような賛同と割れるような拍手が寄せられる。

通商連合の兵士二人がキムダラ王女を左右から押さえつけようとする。
キムダラ「(兵士に向かって)もうちょっとだから、さわんなよっ!みなさん、決して暴力に屈してはいけませんっ。このダンス・バトルでこの星の人間の魂を見せてくれることを期待します。」

拍手のあと、司会のクサナーギが競技の説明にはいる。
クサナーギ「キムダラ王女ありがとうございました。それでは決勝種目ですが、新しいマシンで行います。これです。」

クサナーギの声とともにステージに登場してきたのは、ステップの踏み台がいままでの4つから6つに増えたマシンである。

クサナーギ「さあ、これで戦っていただきましょう!戦士はこの2名です!」

マサユキンとサノ・ミズーキーがライトをあびる。ライトを全身に浴びて、しばし恍惚とした表情の二人。

クサナーギ「赤のサイド、いままでに5回の優勝を飾っているサノ・ミズーキー!」

会場から割れるような拍手がわき起こる。
クサナーギ「青のサイド、ジュニアナンバーワン・ダンサー、マサユキン・サカイモートー!」

再びわき起こる拍手。

二人のダンサーはマシンのほうへと移動する。
サノ・ミズーキー「今回も俺の勝ちだな。今日優勝したら、俺、正規軍に入れてもらえるかもしれないんだぜ。」

マサユキン「そいつは気の毒だったな。俺にも負けられねーわけがあるんだ。今日だけは勝たせてもらうぜ。」

サノ・ミズーキー「できるもんならな。」
マサユキン「俺はなぜか6という数字にはツイてる。まあ、覚悟してな。」
マシンの定位置につく二人。かたずをのんで見守る会場と二人のジャニイの騎士。


ナレーション「ついに決勝まで勝ち進んだマサユキン。このバトルの決着ははたしてどうなるのか?そしてこの大袈裟な話はいったいどういう展開をみせるのか? はたしてこれは「Vレンジャー」なのか?いや、そんなことはもういい、ええい、
やけだ。行け!マサユキン。シニアに勝ってデビューをつかみ取れ!」

TO BE CONTINUED!


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