第12話 「亀裂」


ナレーション「どういうわけか鉄板DISHに負けることなくここまできたVレンジャー。平和を守るための戦いは続く。Vレンジャーに休息の時はない」

(映像)ねそべってマンガを読んでいる森田。

ナレーション「Vレンジャーに休息の時はない」

(映像)鏡に向かって顔のてかりをとっている加藤あい。

ナレーション「Vレンジャーに……」

(映像)犬の散歩をしている三宅。

ナレーション「休息の時は……」

(映像)ギターを弾いている井ノ原

ナレーション「ない……」

(映像)口をぽかんと開けて昼寝している岡田。

ナレーション「少なくとも大袈裟博士には……」

(映像)恍惚の表情でラーメンを食べている大袈裟。

ナレーション「……とにかく今日も、新たな刺客が襲いかかろうとしていた。これは、正義と友情に命をかけた若者たちの物語である」

 坂本の秘密工場。
 憮然とした表情の坂本。回りに鉄板DISHの五人。
 六人でこれまでの鉄板DISHとブロッコ・ロボの戦いの映像を見ている。反省会、というところ。
坂本「やる気があるのかよ、お前ら。ブタとかラーメンとか、ろくなもん出さないで、これで勝てるわけないだろう」
五人「……」
 ジョーはちょっと済まなそうな顔をしているが、マボは扇子をパタパタやり、タツヤはタオルでさかんに汗を拭き、トモヤはぼーっとしている。
ジョー「俺らが信用でけん、ちゅうんか」
坂本「できるわけないだろう。揃いも揃ってわけがわかんねえことばっかりやりやがって」
 それまで名乗らずにいた男がポツリ。
「俺はまだ何もやってないよ」
 一同がその男を見る。
男「結局みんなやられちゃって、残りは俺だけってことだよな」
 一同は黙っている。
男「坂本さんのいう通りだよ。みんな口ばっかりじゃん」
ジョー「そない言うけどな、結構きっつい相手なんや」
男「もういいよ。俺がやっつけてやるから。任せときな。真打ち登場といこう」
ジョー「さ、さよか。なら、頼むわ。俺らはここで失礼することにしよ」
 ジョーはタツヤ、マボ、トモヤをうながして出ていく。
 それを不機嫌な顔で見送る坂本。ジョーたちが出ていくと、残った男の方に向き直り、
「名前は?」
男「カントリー・タイチ」
坂本「大丈夫なのか」
タイチ「何が」
坂本「勝てるのか、あいつらに」
タイチ「勝つって言ってもさ、あんた一体どうしたいの」
坂本「え?」
タイチ「最初に、俺らに暴れ回ってくれればいいって言ってたよね」
坂本「ああ」
タイチ「それだけじゃどうすればいいのかわかんないじゃん。あんた、一体何が目的でこういうことやってるんだよ」
坂本「目的……」
タイチ「ただのいやがらせか? それとも夢は大きく世界征服か?」
坂本「そう言われると……」
タイチ「ただ暴れ回ってくれって言われたってどうすればいかわかんないんだよ。もっと指示を明確にしてくれなくちゃ。具体的にはどうして欲しいの」
坂本「そ、それは……」
タイチ「何だよ。自分でもわかんないのかよ」
坂本「……とりあえず、あのロボットをやっつけてくれ」
タイチ「あのブロッコリーか」
坂本「徹底的にたたき壊してくれ」
タイチ「わかった、やってみよう」

 公園の一角にあるグランド。そのグランドのわきの空き地では森田がサッカー・ボールを蹴っている。
「岡田くーん、がんばってー」
という声が聞こえ、グランドに目をやると、加藤あいが客席で誰かに手を振っている。その方向を見ると、ラグビーの試合が行われていて、岡田も走り回っている。
 森田は岡田の方をにらむ。
 何も知らずボールを持って走る岡田。

 坂本の地下工場。
 コードのついたヘルメットを手にしたタイチ。
「だいたいね、さっきのVTRを見たって、みんなちゃんと戦ってないよね」
坂本「確かに」
タイチ「直接敵と接触してたのはリーダーだけじゃん」
坂本「そう言われてみれば」
タイチ「ちゃんと格闘しなきゃ。ロボットものって言ったら、最初は殴ったり蹴ったりするじゃないか」
坂本「するな」
タイチ「だから、オーソドックスに格闘する武器を出すのがいいと思うんだ」
坂本「賛成だ」
タイチ「格闘するのには、あんまりゴテゴテしてるのはだめだよ。宇宙空間じゃないんだから、空気抵抗なんかも計算にいれなくちゃ」
坂本「能書きはいいから……」
タイチ「すっきりしたデザインで、しかも誰が見ても格闘用だってわかるような武器にしよう」
坂本「話はもう分かったから……」
タイチ「せっかく日本が舞台なんだから、日本ならではのものにしたいよね。それでいて外国の人にもすぐに分かるものがいいな」
坂本「……」

 Vレンジャー本部。
 モニターにはブロッコ・ロボが映っている。
 三宅は本を読み、岡田は無心にカレーライスを食べている。井ノ原は壁につけられた鉄棒で懸垂。大袈裟はコンピューターの操作。
 そこへ森田が入ってくる。
大袈裟「やあ。ラーメン食べるかい」
森田「いらねえ。それより博士さあ」
大袈裟「ん?」
森田「戦闘用ロボットって、あれしかないの」
と、モニターのブロッコ・ロボを指さす。
大袈裟「どうして」
森田「五人一緒じゃなくて二人乗り用とかないの」
井ノ原「二人乗り? いいねえ。俺、あいちゃんと二人で乗ろう」
大袈裟「そういうのは、ない」
森田「じゃあ、作ってよ。三人乗りか四人乗りでもいいから」
 怪訝な顔で森田を見る大袈裟。
三宅「どうしたんだよ」
森田「気に入らねえんだよ」
三宅「何が」
森田「俺は、大阪弁のやつと、おでこの広いやつは嫌いなんだよ」
 みんなは岡田の方を見るが、岡田はカレーライスに集中していて何も聞いていない。
大袈裟「何かあったのか」
 それには答えず岡田をにらみつける森田。岡田は相変わらず気がつかない。

 坂本の秘密基地。
 ヘルメットをかぶり何か思い浮かべているタイチ。坂本とタイチの前に、人間の形をした白いものが姿を現す。
坂本「お、おい……。これは……」
 坂本は驚愕の表情。ニヤリと笑うタイチ。

 Vレンジャー本部。
 あいが入ってくる。何となく気まずい雰囲気にみんなを見回すあい。岡田は顔を上げ、あいをみてニッコリ。あいもほほえむ。森田はあいを見て少し表情を和らげていたが、岡田とあいがほほえみ合うのを見て前にもましてきつい表情で岡田をにらむ。岡田は初めて森田の視線に気がつく。
あい「どうしたの?」
井ノ原「い、いやあ。夫婦ゲンカは犬も食わないってね」
三宅「違うだろ」
大袈裟「とにかく、みんなが力を合わせないと……」
 そう言いかけたとき、壁の赤ランプが点滅し、ブザーが鳴り響く。
大袈裟「何だっ」
 岡田も顔を上げ、モニターを見ると、遠くに巨大な白い人影が見える。
井ノ原「また人間のかっこうか」
大袈裟「とにかく、Vレンジャー出動だ」
 森田、三宅、井ノ原、あいは玉を出して変身するが、岡田はまだカレーライスを食べている。
 森田はその襟をつかみ、
「何やってんだよ」
岡田「あと一口」
森田「そんな場合じゃねえだろう。そんなにカレーが大事ならVレンジャーやめろ」
岡田「そないに言わんでもええやん」
 岡田は森田をにらみながら玉を出して変身。不安そうに顔を見合わせる大袈裟、井ノ原、三宅、あい。
 森田を戦闘に隣の部屋へ行くVレンジャー。あいはドアのところで三宅を捕まえ、森田と岡田の方を見ながら、
「ねえ、あの二人って仲悪いの?」
三宅「えっ。そ、そんなことないよ。ほら、ケンカするほど仲がいいって言うじゃん」

 坂本の秘密工場。
 緊張した面もちでモニターを見ている坂本。
坂本「これは……。放送できないんじゃないか」
タイチ「何だよ、放送って」
坂本「いや、なに、一応テレビ・ドラマってことになってるから。これの名前は何ていうんだ」
タイチ「J-1(ジェイ・ワン)だ」
坂本「どういう意味だ」
タイチ「リンたまって見てない?」
坂本「キン……」
タイチ「違うよ。それこそ放送できないじゃないか。リンたまだよ。『リングの魂』っていって、ナンちゃんが夜中にやってるんだよ。それでJ1っていうのやっててね」
坂本「Jって何だ」
タイチ「柔道のことだよ。K1のパクリ。分かる?」
坂本「さっぱりわからない」
タイチ「……。まあいいや、とにかくそれで、芸能人の柔道王決定戦やったりするんだよ。それに出てるんだ」
坂本「強いのか」
タイチ「まあまあだね」
坂本「まあまあ? チャンピオンじゃないのか」
タイチ「俺って、チャンピオンより、ちょっと哀愁が漂ってる方が好きなんだよね」
 不安そうにモニターを見る坂本。

 空を飛ぶブロッコ・ロボ。
 森田は不機嫌な顔で操縦席に座っている。

 巨大な白い人影の背中。頭はマッシュルーム・カットらしい。白く見えるのは柔道着。人影の向こうに地響きを立てながらブロッコ・ロボが降り立つ。

 ブロッコ・ロボ操縦席。五人の顔に浮かぶ驚きの表情。
森田「ええっ」
井ノ原「まさか」
三宅「そんな」
岡田「ほんまかいな」
あい「何なの、これ」

ナレーション「坂本も驚くタイチの兵器とは何か。そして、Vレンジャーに生まれた不協和音の行方は。不安を抱えたままブロッコ・ロボは戦場へと降り立った」

TO BE CONTINUED!


 「第12話」と「第13話」は、Miyake EmiさんとT hiroseさんから寄せられたアイディアを参考にしています。

hongming


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