第10話 「気になる仲間」


 ナレーション「次々に襲い来る鉄板DISH。とにかく今日もまた、新たな刺客が襲いかかろうとしていた。これは、正義と友情に命をかけた若者たちの物語である」

 学校の帰りらしい制服姿の加藤あい。グランドの横を通りかかると、元気のいい少年たちの歓声が聞こえてくる。
 見ると、ラグビーの試合をしている様子。岡田の姿も見える。岡田は、パスを受け取ると、次々にタックルしてくる敵をかいくぐり、一気に駆け抜けトライ。ひときわ大きな歓声が上がる。岡田はガッツポーズ。
あい「ふうん。結構かっこいいじゃん」
 あいは、金網の向こうの岡田を目で追う。

 坂本の秘密工場。
 一人でぶつぶつ言っている坂本。
「何なんだ一体。偉そうなこといいやがって、どいつもこいつもちっとも役に立たねえじゃねえか。何が鉄板DISHだ。鉄板焼き食わせて貰う方がまだましだ」
 そこへ、ドアが開く音。坂本はドアに目を向け、急にニコニコして立ち上がる。
「やあ、待ってたよ」
 入って来たのはアイランド・ジョーとトモヤ。
ジョー「今度こそ期待してええで。こいつのでかさで何とかしてみせる」
 トモヤはぼけーっと突っ立っている。
 坂本は笑顔で、
「いつも悪いね。ほんと助かってるよ。見るからに強そうじゃないか」
と言いながら、トモヤの肩をたたく。トモヤはちょっと頷く。
「さ、座って座って」
 腰を下ろす三人。
ジョー「こいつはな、体はでかいし、体力はあるし、ほんますごいで」
坂本「ほんとうにいい体してるねえ。力がありそうだ。名前は何ていったっけ」
男「ロング・トモヤ」
坂本「はあ。見たまんまだね」
ジョー「もともとの名前がそうなんや」
坂本「しかし、みんな一昔前のプロレスラーみたいな名前だけど、本名じゃないんだろ」
ジョー「そらそうや。言ってみりゃあ芸名みたいなもんや。俺もトモヤも本名は別にあるがな。たとえば俺の本名は……」
 坂本はそれに耳を傾けず、トモヤに向かって、
「力もありそうだし、無口なのがいいね。気に入ったよ」
 トモヤが黙っていると、ジョーが横から、
「ほんまや。ペラペラペラペラしゃべるやつに限って、大したことないんや。口のうまいやつは信用でけん」
 坂本はジョーを無視し、
「君の本名は何ていうの」
 トモヤが黙ってジョーを見ると、ジョーが代わりに答える。
「こいつの本名はな、瀬戸物屋、や」
坂本「瀬戸物屋?」
トモヤ「何で俺が瀬戸物屋なんだよ」
 トモヤも怪訝な表情でジョーを見る。
ジョー「ええか。名前が瀬戸物屋、名が瀬戸物屋、ナガセトモヤ……」
 それを聞いたとたん、トモヤが吹き出し、身をよじって笑い出す。
「最高っすよ、それ。さすがリーダー。ぎゃーはっはっは……」
ジョー「そうやろ。俺としても会心の出来や。これぐらいはできんとリーダーはつとまらん」
 笑い転げているトモヤと満足そうなジョーをよそに、凍りついている坂本。

 Vレンジャー本部。
 巨大モニターに町の様子が映っている。森田と三宅がそれを見ている。大袈裟はコンピューターに向かっている。
森田「おっ、あの女の子かわいい。あっ、あっちの子もいいねえ」
 三宅はあきれて森田を見ているが、ふと気づいて、
「博士、このモニターって、どこでも映せるけど、どこでどうやって撮影してるんですか」
 大袈裟は顔を上げ、
「ん? それはだね……」
三宅「それは?」
大袈裟「それは……言えない」
三宅「ほんとは自分も知らないんじゃないの」
大袈裟「そ、そんなことはないっ! 断じてないっ!」
 そこへ森田が大袈裟の方へ身を乗り出し。
「ね、ね。どこでも映せるんならさ、女の子の部屋の中とかさ、お風呂とかも……」
三宅「何考えてんだよ」
 大袈裟は立ち上がると、モニターの前に立ち、
「いいかい。君たちはVレンジャー、正義の戦士なんだ。不謹慎なことを考えるんじゃない」
 三宅が森田を指さし、
「考えてんのはこいつだけだよ」
 森田は全く意に介さず、胸の前に両手を置いて、
「でもさ、Dカップとかさ、ね、ね、見たくない?」
大袈裟「Dカップ……。そ、そりゃあ……」
と言いながらモニターの方へ体を向け、
「そうだなあ……。ちょっとくらい……」
と言いかけたところへ加藤あいが入ってくる。大袈裟は慌てて、
「とにかく、だ。君たちは正義の戦士としてだねぇ……」
あい「どうしたの」
森田「あ、あいちゃん。相変わらずかわいいね。今度二人でどっか遊びに行こ」
三宅「こいつ……」
 そこへ井ノ原と岡田も入ってくる。
 あいはニッコリして、
「あら、岡田くん。こないだ試合でかっこよかったね」
岡田「おっ、見てくれたんか。俺の活躍で大勝や。俺にかかったら不可能なことはない。やればできる」
あい「今度試合がある時は教えてね。応援に行くから」
岡田「ほんま? うれしーわあ」
 森田は面白くなさそうに二人を見ている。

 坂本の工場。
 コードのついたヘルメットをかぶって何か考えているトモヤ。坂本とジョーが見ている。坂本は明らかに不安そう。
 やがて目の前に、人間の形をしたものが現れる。

 Vレンジャー本部。
 井ノ原が大袈裟に向かって、
「用事って何だよ。まだ敵は出てきてないだろ」
大袈裟「いや、そろそろ出てきそうなんだ」
井ノ原「何でわかるんだよ」
大袈裟「私には分かる。だてに研究に没頭していない」
井ノ原「あんたさあ、研究ばっかやってけど、ほかにすることないの」
大袈裟「何だ急に。こう見えても趣味は広いぞ」
井ノ原「例えば」
大袈裟「まず、醤油ラーメンの食べ歩き」
井ノ原「それから」
大袈裟「みそラーメンの食べ歩き」
井ノ原「ほかには」
大袈裟「とんこつラーメンの食べ歩き。あとは塩ラーメンの食べ歩き。最近はとんこつ醤油ラーメンの……」
森田「わかった、もういい」
 井ノ原も少し気の毒そうな表情になり、
「友達、いないの?」
大袈裟「友達? 馬鹿にするな、友達ぐらい……」

(回想)大学の研究室。計器をのぞき込んでいる長野博(大袈裟博士の姿ではなく長野の姿)。長野が笑顔で振り返り、何か言うと、これも笑顔の坂本が器具を操作している。

 遠くを見るような表情のまま固まっている大袈裟。五人がその回りを取り囲み、 
「博士、博士」
と声をかける。
大袈裟「あ、あれっ。何の話だったっけ」
 三宅は小声で井ノ原に、
「友達のことは話題にしない方がいいみたいだね」

 坂本の工場。
 坂本、ジョー、トモヤの前に現れたのは、巨大なトモヤの姿。帽子にサングラス、釣り用ベストと、釣り人の格好。手にはリールのついた竿を持っている。
坂本「何だこれ」
トモヤ「俺の一番すきなもの」
坂本「戦えるのか」
トモヤ「もちろん」
ジョー「これの名前は何やねん」
トモヤ「ツリビト」
坂本「そのまんまじゃねえか」
ジョー「やっぱ、若いもんは今ひとつ芸がないな。ちょっと貸してみい」
と言うと、ヘルメットをひったくり、自分がかぶり、目を閉じて何か思い浮かべる。
 たちまち巨大ツリビトの服全体にLとVを組み合わせた模様がちりばめられる。
 ジョーはヘルメットをトモヤに返しながら、
「どうや。ブランドもんやで」
坂本「何なんだこれは」
ジョー「名付けて、『ツリヴィトン』」
トモヤ「最高っすよ。リーダー、ほんとすごい」
 トモヤは手をたたいて大笑い。坂本はほとんど死人になりかけている。

 Vレンジャー本部。
 警報が響き、みんなの顔に緊張が走る。
 モニターを見上げると、そこには丘の上に立つツリヴィトンの姿。
大袈裟「あ、あれは」
井ノ原「人間のかっこうしてるぞ」

 ツリヴィトンは休むことなくリール竿を振り、ルアーを飛ばす。ルアーは建物を通り抜けて数百メートルも飛び、町ゆく人に触れる。ルアーが触れた人間は急に表情を失い、立ちつくす。
 ツリヴィトンは次々にルアーを飛ばし、人間を無表情にしていく。

  Vレンジャー本部。
 モニターを見ている大袈裟博士と5人。
 モニターには、人々が次々に表情を失っていくのが映っている。
大袈裟「何が起こっているんだ」
三宅「みんなぼーっとなってる」
井ノ原「ぽかんと口あけちゃって」
森田「誰かさんの寝顔みたいだ」
 みんなが岡田の顔を見る。
岡田「な、何やねん」
 モニターは、丘の上で竿を振るツリヴィトンの姿を映し出す。

ナレーション「人間の姿をしたツリヴィトンは人間に対して一体何をしているのか。あっちにもこっちにも不安を抱えながら、Vレンジャーと鉄板DISHの新たな戦いが始まろうとしていた。行け、Vレンジャー、地球の未来は君たちにかかっている」

TO BE CONTINUED!


 「第10話」と「第11話」は、T hiroseさんと双葉。さんから寄せられたアイディアを参考にしています。

hongming


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