その夜は、昌行と准が障子側に、井ノ原が廊下側に寝た。
時折、雨戸に竹の葉があたって擦れる音がして昌行の目を覚まさせたが、無事に朝を迎えることができた。
朝食が済むと、准は、
「ちょっくら待ってておくんなさい」
と言ってでかけ、すぐに戻ってきた。手に脇差しを持っている。
昌行がそれを目にして、
「そういえば、昨日、薬を買って戻ってきたときには持ってなかったな」
と言うと、准は脇差しを抜いて見せた。以前は真っ赤にさびていたが、今は鈍く光っている。
「えへへ。研いでもろたんや。薬屋のそばに研ぎ屋があってな。とりあえず切れるようにはなる、言われたんで頼んだんや」
それを聞いて、井ノ原が笑って言った。
「あれだけの錆を一晩で落とすのは、大変だったろうな」
「けど、そんなに悪い品でもない、言われましたんや。大根ぐらいならスパスパ切れるそうや」
これには長野も声を出して笑った。
准が、昨日から沈みがちになっている気分を、少しでも明るいものにしようとしているのが、長野にもよく分かった。
支払いを済ませ、外に出ると、准はまた皆を待たせて裏へ行き、すぐに戻ってきた。こんどは、竹槍を担いでいた。昌行が前に作ってやったのと同じように、枯れた竹でできている。
「おっ。やる気だな」
井ノ原が笑顔で言うと、准は、今度は緊張した面もちで頷いた。
宿を発った頃から、西風が吹き始めた。
壬生通りは、小山のすぐ北の喜沢(きさわ)で日光街道から別れている。
もとは東照宮造営に際して使われた道なのだが、宇都宮城主となった本多正純が、元和年間に、宇都宮から日光までの道を整備し、そちらが日光への本通りとなったのである。
それでも、日光街道を行くよりは近いため、日光西街道などと呼ばれ、日光への道にこちらを選ぶ者が多かった。松尾芭蕉も、『奥の細道』の旅の時に、この道を通っている。
剛毅とケインの足は、昨日よりはいくらかよくなっているようだったが、それでも歩みは遅かった。
喜沢を過ぎたところで、井ノ原の提案で、二人は慣れた靴に履き替えることにした。
一刻を争うのであれば、少しぐらい目立ってもやむを得ない。また、襲われたときに、逃げるのにも、慣れた履き物の方がよい。
二人が靴を出すと、准は早速尋ねた。
「それは何ちゅうんや」
「shoes」
剛毅が答えると、
「はあ、シュズちゅうんか」
と、感心している。
靴に履き替えた後は、歩くのが楽になったようだった。
やはり、長野と井ノ原が先頭に立ち、剛毅とケインを挟んで昌行と准が後ろについた。
長野は、歩きながら、准が慎吾を竹槍で突いた時のことを話して聞かせた。それを聞いて、井ノ原は准を振り返り、感心したように頷いて見せた。
准は、汚れた合羽を翻し、少し誇らしげに竹槍を担いで歩いた。
道行く者が、珍しいものを見たと思って、竹槍を肩に担いでいる准を振り返りながら通り過ぎたが、全く気にする様子はない。
風は、飯塚を過ぎたあたりから北風に変わった。正面から風を受けながら歩くことになる。
冷風が顔に吹き付け、合羽を巻き上げる。土埃が舞い上がり、足を止めることもしばしばだった。
昌行は時折振り返ったが、あとをつけられている様子はなかった。
壬生の宿には昼前に着いたが、少し風が収まるのを待つために、早めに昼食にした。
「蕎麦でもうどんでもないものが食いたい」
という准の要望があり、長野は、泥鰌(どじょう)鍋と書いてある店を選んだ。
ほかに客はいなかった。
鍋を三つ頼んだ。泥鰌鍋には、笹掻きの牛蒡(ごぼう)が入っており、割り下で煮込んであったが、泥鰌は頭も骨も取ってない。
「まるのままや」
そう言って准は箸をとった。
「夏でもないのにどじょう鍋とは珍しいな」
そう言って、井ノ原も食べ始めた。
風の音を聞きながら、長野たちは、コリコリという泥鰌の骨の感触を楽しみながら食べたが、剛毅とケインの口には合わないようだった。
泥鰌は最初から食べようとしなかったが、牛蒡も、一口食べて吐き出し、あとは飯ばかり食べていた。
准はそれを見て、
「もらってええか」
と言うと、剛毅とケインの鍋にも箸をのばした。
井ノ原が、女中に、
「この寒いのに泥鰌を取るのは大変だろう」
と言うと、
「水が凍りさえしなければ、泥を掘ると取れるんですよ」
という返事だった。
長野は、満腹すると、茶を貰い、女中に、
「この風はやみそうか」
と尋ねたが、
「さあ、どうでしょう。吹く日は一日中吹きますから。もっとひどく吹く日もありますよ」
と言う。そこで長野は、
「やれやれ、これ以上ひどくなられてはたまらん。早いところ出るとしよう」
と言うと、まだ鍋の底をあさっている准をせき立てて出立した。
外は相変わらずの風だった。
宿場を出ると、ひび割れた田圃が続いた。ところどころに、稲掛けの竹竿が残っていた。
その竿は、強い風が吹くたびに、ぶぉぉぉと音をたてた。
竹竿の割れ目に風が当たって立てる音である。
「虎落笛(もがりぶえ)だ」
長野が言うと、井ノ原は、
「虚無僧がいるようですな」
と言って笑った。
昌行は、歩きながらさかんに口を気にしていた。指で口から何かをつまみ出そうとしている。
「どないしたん」
准が尋ねると、
「牛蒡がはさまっちまってな」
と言う。准が笑って、
「兄貴は歯がすいとるからな」
と言うと、
「やかましい」
と、一つ小突いた。
寒さのせいか、風のせいか、他に道行く者の姿はなかった。
西には、上野(こうずけ)との国境の山並みが続いている。振り返れば、筑波の嶺がかなたに見えた。
剛毅とケインの足を気にしながらも、次の宿場、楡木(にれぎ)までの半ばを過ぎた。
日は斜めに一行を照らし、右斜め前に影を作り出している。
茶屋があった。二つの床几に、浪人が五人、別れて腰を下ろしている。
長野と井ノ原は顔を見合わせたが、素知らぬ顔をしてその前を過ぎた。
昌行と准も緊張しながら茶屋の横を通った。浪人達は、草鞋の具合を見たり、帯を締め直したりしながら、六人を見送っただけだった。
しかし、通り過ぎた後、井ノ原は昌行の横に並び、准に、
「お前は少し前に出てくれ。待ち伏せがあるかもしれん。怪しい奴がいたら、知らせろ」
と言った。准は頷き、竹槍を担いで足を早め、長野よりも前に出て、どんどん先へ行った。
それを見送り、井ノ原は昌行に話しかけた。
「どう思う。さっきの浪人」
「へえ、切り合いの用意をしているように見えました」
「やはりな」
井ノ原と昌行は振り返って後ろを見た。距離を置いて浪人たちが歩いてくる。
先行していた准が足を止めた。その前方に道祖神があり、その前に、浪人者が一人、腰を下ろしていた。
「全部で六人か」
井ノ原はそうつぶやくと、
「長野殿、前の一人は、長野殿に何とかしていただくしかないようだ」
と、声をかけた。長野は立ち止まり、前の一人と後ろの五人を見た。そして、剛毅とケインに向かって、
「敵でござる」
と言うと、左手の親指を鍔に押し当て、鯉口を切った。
剛毅とケインは、それぞれ懐に手を入れた。
長野たちは、准が立ち止まっているところに来た。准は青ざめた顔で昌行を見た。
「准、無理に突くな。相手の刀を叩くんだ。たたき落とせればそれで上等だ。とにかくしっかり握ってろよ。竹槍を払い落とされたらそれまでだ」
昌行がそう声をかけると、准は黙って頷いた。手に力が入っているのが傍目にも明らかだった。
前にいた浪人はゆっくりと立ち上がった。
月代(さかやき)がのびていたが、袴の裾のほつれは丁寧にかがってある。こけた頬の上に、表情のない暗い目があった。
後ろからの五人が迫った。すでに刀の柄に手をかけている。
前の浪人はゆっくりと道の中央に立った。風を背に受け、袖がはためいている。身につけているのは、綿入れではなく、袷(あわせ)のようだった。
「何かご用か」
長野が一歩前に出て尋ねた。相手は沈んだ声で答えた。
「問答は無用」
そう言うと、左足を引き、刀の柄に手をかけ、やや腰を落とした。一行の背後から迫った五人はそれが合図ででもあったかのように刀を抜いた。
昌行もすぐに脇差しを抜き、進み出て身構えた。
井ノ原はその後ろで懐に手を入れ、五人の様子をうかがっていた。
准は、身を硬くしながら竹槍を振りかぶり、前の浪人をにらみつけている。剛毅とケインはその後ろにいて、前と後ろを見比べている。
後ろから来た五人の先頭にいた男は、昌行の身なりと脇差しを見て、侮るような笑みを浮かべ、一行の前にいる浪人に声をかけた。
「稲垣さん、あんたの出番はなさそうだな」
そう言うと、すぐに昌行に目を移し、
「邪魔だっ」
と叫びながら、大きく踏み込み、切りつけた。
昌行は身軽にそれをかわし相手の後ろに回った。勢い余って相手は前へつんのめったが、それを待ちかまえていた井ノ原が、十手を首の後ろにたたきつけた。相手は体勢を崩したが、しりもちをつきながらも、刀を振り回そうとする。しかし、その右腕は、ピシリッという音とともに力を失い、刀を取り落とした。ケインが鞭を手にしていた。
井ノ原は、笑顔で頷くと、
「この刀は俺が使わせて貰おう」
と言って、右手には十手を持ったまま、左手で、落ちた刀を拾い上げ、構えた。倒れた相手は、しりもちをついたまま、後ずさって道から外れていき、水のない水路に落ち、あぜ道にはい上がったが、今度は乾いた田圃に落ちた。
昌行には、背後で起こったことを見る余裕はなかったが、不安はなかった。次に斬りかかってくるのが誰かを見極めることにのみ、意を注いでいた。
井ノ原が昌行の横に並んだ。そして、右手に持った十手をかざして見せた。
「これを見ろ。俺は関東取締出役(かんとうとりしまりしゅつやく)だ」
背後からの敵、残る四人のうち、右端の男はそれをみてやや気後れしたようだった。
昌行は、その男には構わず、その隣の男に向かって刀を突きだした。相手はさっとそれを横に払うや、刀を振りかぶり、切り下ろした。しかし、昌行はさっと飛びすさっていた。
「あぶねえあぶねえ」
そう言いながら昌行は笑って見せた。昌行の動きを見て、右端の男が、完全に戦意を喪失したのがわかった。
井ノ原は、十手をもう一度高くかざし、
「これを見せても引き上げねえんなら、俺もやるしかあるまい」
と言うと、十手を懐にしまい、刀を右手に移した。
一方、長野と、稲垣と呼ばれた前方の男との間には、張りつめた空気があるばかりで、動きはなかった。
准は、長野の横に並び、しばらく相手をにらんでいたが、耐えきれなくなり、竹槍を水平に構えると、踏み込みながら前に突きだした。
それに合わせて、稲垣の右手が横に弧を描き、竹槍を払う。
准は、教えられたとおり、しっかりと竹槍を握りしめていた。
竹槍は、刀を受け付けず、乾いた音を立てた。准平は、左に流れた竹槍を一度引き、再び突こうとした。すると相手は、払った刀をそのまま横に構え、准平が突くのを待った。
准平は突いた。そして、稲垣は、刀を左へ払った。
パキッ。
准平は、しっかりと竹槍を握りしめていた。しかし、その竹槍は、相手の刀を挟み込むように割れていた。竹槍に稲垣の刀が食い込んでいる。稲垣は、正面から突き出された竹槍の繊維に沿って刀を払ったのだ。竹槍には割れ目が生じ、准の方へ延びてきている。
准は慌てて槍を引こうとしたが、稲垣は許さなかった。准が引くのに合わせて踏み込みながら刀をねじる。
割れ目が広がった。そして、さらに准の手に近いところまで延びた。
しかし、稲垣は深追いはしなかった。すぐに刀を引き、二歩下がった。横にいた長野は、刀を抜きはしたものの、手の出しようがなかった。
准の竹槍は先が二つに割れ、槍としては使い物にならなくなっていた。准は、割れた槍先を見つめ、細かく震えだした。
稲垣は、准の様子を見て刀の向きを長野に変えた。
長野は正眼に構えた。
稲垣はじりじりと間合いを詰めながら、刀を左下に構えた。
長野は動けない。
稲垣は、さっと、すくい上げるように長野の右腕を刀で払った。長野はかろうじて刀で受ける。稲垣は長野の刀に沿って自分の刀をすりあげ、上段に振りかぶり、そのまま切り下ろそうとした。長野は一歩退いてそれを受けようとしたが、足が滑った。体勢を崩し、左脇を稲垣に向けてしまった。稲垣の目が光り、踏み込みながら、刀を振り下ろす。
銃声が響いた。
稲垣の動きが止まった。そして左手を柄から離し、右胸を押さえた。押さえた手の指の隙間が赤くなり、血が流れ出た。
長野が体勢を直した。稲垣は左手を肩から離し、手に着いた血を着物で拭うと、刀を左手に持ち替えた。そしてその刀でまっすぐに長野を突いた。長野は一歩下がる。
その時、横から振り下ろされた竹が、稲垣の刀をたたき落とした。准が、竹槍を振り下ろしたのだ。稲垣は准に目を向けた。准は竹槍を逆に持ち、根本の方で稲垣に殴りかかった。
後ろでは、昌行が右端の男に脇差しを向けていた。相手は、銃声を聞いて完全に腰が引けている。田圃に落ちた男は、銃声を聞いて、背を見せて逃げていった。
昌行は、体を右にずらしながら相手の横に回り込んだ。相手は、それに合わせ、味方を背にして立つことになった。
「そりゃっ」
昌行が脇差しを突き出すと、相手は腰を引いたまま刀を横に振るった。昌行はさっと脇差しを引き、相手が刀を横に払うのをやり過ごしてから体を密着させ、突き飛ばした。相手は背中から味方に当たる。しかし昌行は、突き飛ばした相手から体を離さずについていき、相手を楯にして、その後ろにいた男に刀を突き立てた。
手応えはあった。うめき声が起こる。
突き飛ばされた男は、後ろへ首をねじり、何が起こったのか理解した。
慌てて昌行と仲間との間から抜け出したが、そこには井ノ原が立っていた。
「勘弁してくれ」
男は泣き声になっていた。井ノ原が、何の感情も込めず、
「逃げるなら逃げろ」
と言うと、男は向きを変えて元来た道へ逃げていこうとした。
しかし、他の仲間はそれを許さなかった。逃げようとした男が自分の横を取るのを待って、その胴を払った。
「ぐわわっ」
男が叫びながら倒れる。乾いた土はその血を吸ったが、吸いきれなかった血が道に広がっていく。
昌行に刺された男は、一歩下がり、よろめきながらも刀を振りかぶり、昌行めがけて振り下ろしたが、昌行は難なくかわし、脇から突き込んだ。相手は膝を突く。昌行は相手の腹に食い込んだ脇差しを、ひねりながら抜いた。相手は苦痛にうめいた。刀を杖に立ち上がろうとするが、体が言うことを聞かない。血があふれ出す傷口を押さえながら、ついにはうつぶせに倒れ込んだ。
それを見届けてから振り返ると、井ノ原は残る二人のうち一人を切り伏せていた。もがく相手の胸に刀を突き立て、とどめを刺したところに、残った一人が切りつけた。井ノ原はかろうじて身をかわしたが、相手は井ノ原の背後にまわり、刀を突き立てようとした。昌行の脇差しは届かない。しかし、その敵の刀が井ノ原に届くことはなかった。
刀を突き出そうとした敵の背中には、ケインの投げた斧が食い込んでいた。
動きの止まった相手に、昌行が体当たりをするようにして脇差しを突き立てた。相手は昌行をにらみ、その肩をつかんだが、その力はすぐに失われた。
昌行は相手を振り払うと、准のところへ走った。准は滅茶苦茶に竹槍を振り回している。稲垣は受けきれず、だいぶ顔を叩かれていたが、隙を見て、左手で竹を握ると、ぐいとひいた。准がつんのめる。体勢を直そうとしたところに、竹を押し戻すと、准はしりもちをついた。稲垣は竹槍の柄の方を准に突きつけた。
「待て」
長野が准の前に立ち、稲垣をさえぎった。
「話を聞きたい」
稲垣の動きが止まった。
准は大きく息を吐いて立ち上がった。そして、自分の横に来た昌行の顔を見た。
「准、よくやった」
昌行が准の肩を叩いた。
長野は稲垣に歩み寄った。稲垣は竹槍を投げ捨て、右胸を押さえて、かろうじて立っている。長野は刀を収めた。
「誰に頼まれた」
稲垣は少し笑った。
「答えるわけがなかろう」
井ノ原が長野の横に立った。
ケインは、倒れた敵の背から斧を抜き、血を拭うと、剛毅とともに稲垣のそばに寄った。六人で稲垣を囲む格好になる。
稲垣は腰を下ろすと目を閉じた。
「潔いな」
井ノ原が言うと、稲垣はせき込みながら答えた。
「弾が突き抜けた。どのみち助からん」
背中も血で黒く染まっていた。
「金で雇われたのか」
長野の質問に、稲垣は頷いた。
「金がなければ暮らしはたたん。剣では食っていけんのだ。剣に打ち込むよりも、短筒でも買うべきだったな。もはや剣の時代ではないのだ」
そう言って苦笑する。剛毅は自分の手の拳銃を見た。
六人は無言で稲垣を見下ろした。稲垣は右手を懐に入れた。昌行が身構える。しかし、稲垣は紙入れを出しただけだった。
「頼みがある」
そう言うと稲垣はせき込んだ。口に当てた掌に血がついた。
「楡木の宿の手前に、地蔵堂がある。その前に子供を連れた女がいる」
「奥方ですかい」
昌行の声に稲垣は頷いた。
「妻にこれを渡してくれんか。命を狙って失敗した男の頼みなど捨て置かれても仕方がないが、妻と子を飢えさせるわけには……」
長野が進み出た。
「渡せばよいのだな」
稲垣は長野の顔をじっと見つめて頷いた。
「確かに引き受けた」
「ありがたい。妻の名はめぐみと申す」
稲垣は長野に紙入れを渡し、目を閉じ、またせき込み、血を吐いた。そして、苦しい息をしながら、
「ここでしくじった場合、東照宮では、もっと大人数で待ち受けるつもりらしい」
と言うと、仰向けに横になった。
息はしているが、だんだん弱くなっていく。
「参ろう」
長野は歩き出した。五人が無言で続く。
戦いの間に、風はいくぶん弱くなっていた。
日が傾いていき、六人の影が長くなった。
(続く)
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