ちいさい夏の島 〜3部〜

(by あやっぺさん)

次の日。

「ひゃっほ〜っ!」

翔の兄がボートを運転し、翔と南はボートの上ではしゃぐばかり。
昨日の約束どおり“あの島”に向かっている。

「もう着いちまうぜ!・・・おい、南?」

南は急に座り込んでしまった。

「・・・なんか・・・気持ち悪い」

「船酔いか。お前も結構ヤワだな」

「・・・そういう言い方ないじゃん・・・!」

「ハハッ」

怒ってもあまり迫力のない南はなんだか笑える。
少しも優しい声を掛けようとしない翔の隣で南は膨れっ面。

「おい、お前ら!着いたぞ」

兄の声を聞いた翔はパッと島の砂浜に飛び降りる。
南もフラフラと立ち上がった。

「・・・・・ほら!」

「?」

翔が右手を差し出しているが、南は意味がわかっていない。

「手だよ、手!危ねぇだろ!」

「あっ、ありがと」

翔の手を借りて南も砂浜に降りた。
一見何も考えていないような翔だが、さりげなく気遣える優しい奴なのだ。

「んじゃ兄貴、7時にココ」

「言っとくけど、俺はお前らの家来じゃねぇんだからな!」

「恩にきます!」

「よろしい」

翔が頭を下げると兄はボートで戻っていった。

「さてっ、島探検といきますか!」

翔は目をキラキラ輝かせている。
“休ませて”なんて誰が言えるものか。

「いこうか」

「そう来なくっちゃ!」

翔と南は砂浜から森の中へと入っていった。
二人の姿が見えなくなると、どこからか声が聞こえてくる。

「ウルサイのが来たわ。
 ・・・でもおもしろそうやな、あの二人」


−森の中

「な〜んだ。普通の森かぁ」翔は口を尖らせる。

「“普通じゃない森”が見てみたいよ」

呆れて南はボソッと呟いた。その時・・・

「イテテテッ!!」

突然、上から何か降ってきた。

「ん〜?どした?」

翔は南に目を向けようとせず、何かないかとキョロキョロしているだけ。

「なんか降ってくるよぉ」痛そうに頭を抑える。

「はぁ?なんだって?」

翔が南の方へ振り向くが、それと同時に“何か”は降ってこなくなった。

「あれ?」ゆっくりと上を見上げる。

「なんでもね〜じゃん!うるせぇ奴だな」

「だって今まで・・・。まさか翔がやったの〜!?」尚も上を見上げる。

「俺が出来るか、バカ!・・・イテッ!!」

今度は翔である。前を向いた途端、後ろから小石が飛んできた。
後ろからということは・・・

「南!!いくらなんでも石投げることはねぇだろ、石!」

「俺、石なんて投げてないよ!それより早く白状したら!?」

「俺は無実だって言ってんだろ〜が!!」

二人の言い争いは収まりそうもない。
そこへ・・・

「ハハハハッ♪」
なんだか楽しそうな声。

(「・・・お前?」)

(「ううん。翔・・・じゃないよねぇ」)

(「違う」)

あまりの驚きに、顔を見合わせて目と目で会話をしている。
お互いのどちらでもないことを確認すると、恐る恐る声のする方へ目をやる。

「ハハハハッ!ハ〜ッハッハッ!」

ビクビクしている翔と南がおかしかったのか、腹を抱えて笑っている少年。

(「なんだよ、コイツ」)南はムッとする。

この少年がイタズラしたのだと確信した翔は、少年にズカズカと近づいていく。

「おいっ!テメーなにしやがんだ!!」ギロリと睨む。

「・・・ハハハ・・・失礼します!」

少年は逃げようとするが、翔が見逃すわけがない。
少年の服を鷲掴みにする。

「簡単には許せねぇ」

「見逃して〜な。・・・って、俺が見えるんか!?」

「・・・?」

また顔を見合わせる翔と南だった。



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(1999.8.13up)


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