ちいさい夏の島 〜2部〜

(by あやっぺさん)

「どして?」一瞬の間の後、南が男の子に話し掛ける。
 
「あの島に行くと、二度と帰ってこれへん」

「なんでそんなことわかんの?」

「・・・あの島、たくさん死人が出とんねん」 
 
「!」

「そやから、絶対あの島には近づかんようにって言われとる。
 あんたたちも近づかんほうがええと思うよ・・・」

男の子はチラッと遠くの島を見つめると、その場を離れていった。
残された翔と南。翔はうつむいてつまらなそうな顔をしている。

「翔、仕方ないよ。諦めよう」

「・・・」翔は表情を隠して俯いたまま。

「翔?」

「・・・みなみぃ〜・・・!」

「えっ!?どっ、どしたの!?」いきなり翔の泣きそうな声を聞いてビックリしてい
る。

「クククククッ!」笑いをこらえている翔。

「?」

「うひゃひゃひゃっ!だぁ〜れが諦めるって言った?俺は行くぞ!あの島!!
 行って島がどうなってんのか確かめてきてやる!
 どうする?南、行く?」

「え〜!俺は・・・」

「なになに!?ヒビッてんの?は〜ずかしい奴!!」

「・・誰も行かないなんて言ってねぇよ!
 ビビッてる?俺が?笑わせんな!ビビッてんのは翔じゃねーの!?」

かなり怒った南。プンッと翔に背を向けてしまった。

「ごめん、ごめん。そんなに怒るなって!」口調に反省のいろは無く、笑っている。

「・・・」

「南ってノセやすいからおもしれ〜んだよなぁ」

自分にしか聞こえないくらいの小さな声で、ニヤニヤと納得しながら翔は呟いた。

「なーんか言った?」地獄耳の南。

「いやいや!何も!」

「・・・で、どうやって行くか考えた?」

「ふふ〜ん。じ・つ・は・・・」

どんな策があるというのか、得意げに笑う翔。


−海が見える一軒家

翔の後について歩く南。
玄関につくと、チャイムも鳴らさずに翔はいきなり家のドアノブを引いて言った。

「こんばんはぁ〜。兄貴ぃ〜居る〜?」

この声で、翔の兄の友達が顔を出した。翔とは顔見知りである。

「おっ、なんや翔やん。ちょっと待っとき。隆志〜!」

「・・なんだよ。・・・って、翔!お前何しに来たんだ?」

翔の突然の訪問に兄である隆志は驚いている。
それに構わず、翔は話を進める。

「ちょ〜っと頼みたい事があってさ」

「?・・・まぁ上がれよ。・・・南!久しぶりだな」翔の後ろにいた南に気付く。

「お久しぶりです!」

 
−部屋

ここに来た理由を翔が説明した。

「・・・で、あの島に行きたいってワケ。
 でも俺らボート運転できねぇじゃん。だから兄貴だけが頼り!頼むよ!」

翔の兄は大型ボートの免許を持っている。
免許をとってからは、夏になると必ず地元の友達がいるこの海に通っているのだ。

「・・・」兄は腕を組み、何も言わない。

「・・・ねぇ・・・兄貴!!」この雰囲気に嫌気がさした翔が怒鳴る。

「・・・」それでもそのまま。

「兄貴!!」

「おもしろそうじゃん、それ!」

「はぁ!?」拍子抜けした返答に呆れる。
 
「俺も連れてってよ」
 
「連れてってもらうのは俺ら!兄貴はいいの!」

「な〜んで?」

「そんなの・・・ったく歳いくつだよ、歳!」

「わかったよ!連れてってやる!だから怒鳴るなって」

漫才のような会話の中、黙っていた南がポツリと・・・

「・・・やっぱ兄弟だよねぇ・・・」

「な〜んか言った?南!」翔と兄、自然と二人の声が揃った。

「い〜やなんにも。・・・ふぅ」南は溜め息をつくばかり。



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