HAPPY BIRTHDAY!

(by ぷらねっとさん)

「おはよー」

 楽屋に入った途端にいのっちが「HAPPY BIRTHDAY」を奏いてくれた.

「岡田っおめでとー!」

 ぱぱぁんっ!

 皆はクラッカーでお祝いしてくれた.

「ありがとぉ」

 何となくちょっとはにかんだ笑いになる.

 昔に戻ったみたいな.

 何か…照れくさいやんか.

「准はさぁ,大人になってるはずなのに誕生日が来ると14歳の時の表情(かお)に戻っちゃうよねぇ」

 いつもみたいにヒロシの隣に座ったら頭をわしゃわしゃ撫でられた.

 そらそうや.

 俺変わってへんもん.

 変わってへんけど…….

「岡田も19歳かぁっ」

 いのっちが感心したみたいに言う.

「でもまだ19歳」

 まーくんが何となくさみしそーに見えるのは俺の気のせい?

「ガキじゃん」

 なんて言いながら剛くんの顔は笑ってる.

「凄いねぇっ,早いよねぇ」

 健くんが多分俺よりにこにこして俺とヒロシの間からひょこんと顔を出す.そして俺に満面の笑顔を向けて
「パーティはどーしよっか?」なんて言いながらいのっちの肩にへばりついた.

「准」

「ん?」

「なに考えてるの?」

 不意に言われて,俺はいつのまにか床を見ていた顔を上げた.

 ヒロシはちょっと色の薄い優しい茶色の瞳で俺の顔をじっと見てる.表情に少しだけ笑みを混ぜて.

 何か…考えてなかった訳やないけど.

 言ったら笑われてまうかな.

「ん…あんなぁ」

 ちらっとそんな気持ちがよぎったけれど,俺は口を開いた.

「うん?」

「俺誕生日やけど……昔とちっとも変わってへんから」

 その後…なんて言うたらいいのか解らへん.言葉に出来ないもやもやが喉に引っかかる.

 どう言うたらええんやろ?

「あ,何か岡田が哲学者モード」

 まーくんが珍しい物でも見るように俺らの側に寄ってくる.

「じゃぁ何じゃぁ何?岡田は俺たちが変わったと思うワケ?」

 いのっちも健くんとギターを抱えたまんまでこっちに来る.健くんも興味津々の顔で俺の顔を覗き込む.

「うん…思う」

「じゃ,どこが?」

 答えてすぐに聞こえてきたのは剛くんの声やった.

「う……ん」

 そう聞かれると困るんやけど…….

「……仮に俺たちが変わったとしてさ.そしたらどーして岡田は変わんなくちゃいけないの?」

 健くんが俺の前に座り直して聞いてくる.

「そーだよ.どーして変わった方がいいって思うんだよ?」

 い…いのっちまで…….

 そんなにいっぱい質問されても混乱してまうやんかぁっ.

「あのな」

 頭をわしっっとつかまれて,俺の顔はまーくんと向かい合う形になった.

「変わったって変わんなくたって,お前はお前だろ?」

「だ…って,皆変わって,カッコ良くなって……」

「そんなのカンケーねーじゃん?」

 関係…ないんやろか……?

 頭の上に?がいっぱい浮かんでくる.

「余計混乱させてどーすんの,坂本くん」

 笑い交じりの声が聞こえた.

 自由になった頭を動かすと,それはヒロシやった.

「あのね,准一?」

「?」

「変わってなくてもね,変わろうと思ってる准一は,『カッコイイ』よ」

「それにさ」

 健くんがにこっと笑う.  

「岡田はそのまんまでじゅーぶんいーじゃんっ」

「そーそー.そのまんまでいーの,そのまんま」

 いのっちがみょーに悟った言い方で頭をぐりぐりしてくる.…ちょっと痛い.

 けど…ホントそのまんまで俺ってえーんやろか?

「鈍いから気付かねーんじゃねーの?」

 やっぱり冷めた口調の剛くん.

 そーゆーもんなんかなぁ…?

「自分が変わってくことなんてフツー気付かないもんなんだからさ」

「だからお前はお前でいればいーんだよ」

 ヒロシとまーくんが笑ってくれた.



 そーなんや.

 19歳だからって変わることないんや.

 俺は俺でいれば.

 そして皆と一緒に歩いていこう.

 今までみたいに.

 これからもずっと.



「今日1番のプレゼントやな」

「何が?」

 独り言やったはずやのに,皆に聞かれてた.

「ん…内緒」

 俺は笑った.恥ずかしかったから.

 俺の心の中だけで.



 10代最後のプレゼント.



 それは.



 皆の言葉と,笑顔……….

                              −END−

(1999.11.18up)


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