投稿時間:01/09/04(Tue) 23:21 投稿者名:よりいっそうビンボー藤原
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タイトル:坂本家の難儀な新学期
夏休みも終わった新学期の坂本家は異様な殺気に包まれていた。 「おい、見せろよ、健。俺、明日日記提出なんだよ。お前の写させろよ」 「やだよっ。日記なんて自分で書かなきゃ意味ねえじゃん。今までさぼってた剛が悪いんだろ?」 「兄が困ってる時に助けるのが弟ってもんだろ?ほら、さっさとよこせよ」 「ヤダっ!」 健の日記帳を巡って繰り広げられるバトル。必死で日記を胸に抱え込む健とそれを横取りしようとする剛、2・3歩離れた場所で准一がぼーっとそれを眺めている。 「おいおい、お前ら何やってんだ?」 長男の快彦がつかつかと近づくと、もみ合う二人を引き分けた。 「こらこら、剛。お前去年も健の日記丸写しして、先生にバレてたじゃねえか。今年もどうせバレるに決まってるだろ?だからさ」 と快彦は健に向かってにっこりした。 「俺に写させて?俺とお前だっから学校も違うからだいじょうぶだよ」 「あーっ!兄ちゃんずるい!横取りする気かよ?」 「ずるいも何もないの。ね?健ちゃん、俺に貸してくれるよな?」 いったんは快彦に感謝した健だったが、ふたたび眉をひそめて仏頂面に戻った。 「やだね。だいたい中学生が日記なんかでおたおたしてるのってみっともねえよ。なんだよ?ちゃんと日記書いたのって、俺と准一だけ?」 「俺も書いてへん」 ぼそっと答える准一に兄3人の視線がきっと向けられた。 「じゃあお前も提出明日じゃねえかよ。何やってんだよ」 「お前、毎日一生懸命なんか書いてなかったっけ?」 「あれは毎日食うたもんつけてただけや」 「食いもん日記かよ。それでもいいじゃん。俺に写させろよ」 「けど、毎日あまり書くことなかってん」 「見してみろって」 剛が准一の日記を取り上げると広げると、そのまま固まった。 「な、なんだ?これ。こんだけかよ?」 「うん」 「何?なんて書いてんの?」 「読んでみてよ、剛」 快彦と健も興味津々で聞いてくる。剛はぶすっとした声で読みだした。 「○月×日 朝 ぬき、昼 そうめん 薬味なし、夜 白いメシ 梅干し 味噌汁」 快彦と健はふむふむと頷いた。 「まあ、そんな日もあったよな」 「母ちゃん、夏休みは食べる口が多くて食費がかさむから我慢しろって言ってたもんね」 「おい!」 と剛が日記を叩きつけながら大きな声を出した。 「わかってねーな。これがこの後10日間続くんだ」 「はあっ?何だ?それ。准一、お前さぼっちゃダメじゃないか〜」 「べつにさぼってなんかないわ」 「そういえば、やけになじみのあるメニューのような?」 「俺たちが毎日食わされてるからじゃねえか!」 坂本家に一瞬の沈黙が訪れた。だが、それは儚くもすぐに破れる運命にあった。 「ひでー!ちょっとそれはひどすぎるぜ。俺たち成長期だぜ?」 「暑さで身体がだるいんだと思ってたけど、栄養不足のせいだよ、これは」 「俺なんてクラスで一番チビなんだぜ?みんなにチビだの頭悪いだの言われてんだぜ?」 熱弁をふるう剛を快彦は覚めた目でちらっと見た。 「あのさ、チビはともかく頭は関係ねーんじゃねえか?」 「関係あるっ。頭まで栄養が回らねえんだよっ」 「けど健は同じもん食って優等生だぜ?」 「こいつは食いすぎなんだよ。ちっとは俺にもよこせってんだ」 「何言ってんだよ?同じもん食ってんじゃん。自分のバカを人のせいにすんなよ」 「なんだと?このヤロー!」 剛が健の胸に掴みかかり、ふたたびバトルが始まった。上になり下になりもみあううちに剛の手が健の日記帳を取り上げた。 「やった!これもらってくぜ。もう俺のもんだかんな」 「あっ、卑怯者!返せよっ」 健があわてて日記帳をひったくろうとする。健の手が日記帳の端をつかんだと思うと、それはビリビリと音をたてて裂けてしまった。 「あ”〜っ!!!!」 「お、俺知らねー」 超高音の悲鳴をあげる健に、台所にいた博子があわてて飛んできた。 「何耳障りな声出してんのっ!近所迷惑でしょ?!」 「あ、母ちゃん、その手に持ってるもんは何や?」 「え?」 ふと見ると、博子の右手にトウモロコシが握られている。 「あ、あら。ほほほほ。お隣さんにさっき頂いたのよ」 「自分一人で食ってたのかよ?」 快彦の細いが凄みのある目に睨まれて、博子はひきつった笑顔を浮かべた。 「な、なに言ってんのよ?みんなで食べようと思ってたわよ」 「けど、それほとんど囓ってあんじゃねーかよ」 「食ってたな。歯の間にコーンがはさまってるぜ?」 「可愛い子供に食わせんと一人で食うんか?」 「あ、あら、そんな。ついおなかすいちゃったもんだから、ちょっとだけ」 四人の子供にじりじりと追いつめられた博子はついに手の中のトウモロコシを放り出して逃走した。 「おっ、俺のトウモロコシ!」 「モロコシに手出すんじゃねえっ」 「俺だって食いたい!こっちによこせよっ」 「モロコシや、モロコシや」 たった1本の(しかもほとんど食べさしの)トウモロコシに四人の欠食児童が群がった。トウモロコシをめぐる戦いはその後10分間続いた(らしい)。
「あのさ、日記のことなんだけどさ」 トウモロコシ騒動が一段落した頃、快彦が言い出した。 「あっ、そうだ、日記!まったくどうしてくれるんだよ?俺の日記までダメになっちゃったじゃないか〜!」 「お前がしつこく食い下がるから悪りぃんだよ。さっさと最初から俺に写させてればさ」 「俺の話を聞け!」 長男に一喝された次男と三男は口をつぐんだ。 「俺の友達んちにパソコンがあんだよ。そいつんち、家にインターネットひいてんだ」 「ミ、ミスコン?それって美女選びのアレ?」 「ちげーよ、バカ兄。パソコンも知らねーの?で?インターネットがどうしたの?」 ここでは三男にバカにされてふてくされる次男の図をご想像いただきたい。 「それがさ、そいつが言うにはインターネットではいろんな人が日記を公開してるってんだ。それをさ、見せてもらってさ」 「なるほど!丸写しするわけか」 次男は思わず手をぽんと叩いた。 「バーカ。丸写しなんかしたら、すぐにバレちゃうだろ?適当に参考にしつつ自分でアレンジするの!」 「うっせーんだよ、いちいちてめえはよ」 ふたたび三男につかみかかろうとする次男の髪の毛を、長男は後ろからつかみ上げた。 「いっ、いててて!何すんだよっ」 「うるせえ。時間がねえんだ。とにかく見せてもらいに行こうぜ!ケンカは宿題が終わってからにしろ。准一、お前はどうする?」 さっきからいるのかいないのかわからない四男にもいちおう聞いてみる。 「俺もいく。なんか食えるかもしれん」 「よし!じゃあ、友達に電話してみるよ。おい、母ちゃん、こういうわけだから電話使ってもいいよな?」 台所の陰からのぞき見していた博子が大きく頷いた。 「そのかわり早くすますのよ。電話代高いんだから。それと、いい?時間をかけて、ちゃんと晩ご飯までご馳走になってくるのよ!みんなの分は用意しないわよ?」 快彦はため息をつくと受話器を取った。
「よう。よく来たな。俺の部屋にあがれよ」 快彦の友人の松岡は、機嫌良く四人を迎えてくれた。 「みんな前見た時よりおっきくなったなあ。あ、お前はそうでもないか」 軽く言って、剛にぎろっと睨まれる。 「こら!剛。悪いな、松岡、それは禁句なんだ」 「ああ、悪い、悪い。さっ、こっちだよ。けどな、ホントに四人とも日記できてねえのか?」 「いや、健はできてたんだけどさ、兄弟げんかでビリビリに裂けちゃってさ」 「なるほどな。まあ、だったら早く始めよう。親父のパソコンも借りてきたから2台使えるぜ。日記の登録サイトを出してやっから、その中から適当なの選んで写せよ」 松岡は自分の部屋に四人を案内し、2台のパソコンの前に座らせた。快彦と剛で1台、健と准一で1台。 「じゃあ、これで探してみな。飲み物とおやつおいとくから適当に食えよ」 と松岡が姿を消してから、四人の初インターネット体験がスタートした。 「なんだ?これ。あ、ここを押すんだな。わっ、なんだ?これ」 「うわっ、すげーっ。こっ、こんなのが好きなだけ見れるわけ?」 そう言ったきり快彦と剛はうひゃうひゃ喜びながら画面に見入っている。不審に思った健が後ろから覗き込むと、画面いっぱいに下着姿の女の子の写真が広がっている。 「な、なに見てんだよっ。日記探すんじゃなかったのかよ?」 「うっせーよ。ここにも日記あんだよ。これでいいよな?剛」 「うん、いい、いい。あ、俺たちココの日記丸写しにするから」 「ほんっとにしょうがねえなあ」 健はため息をつくと自分のほうのパソコンに戻った。准一が一生懸命にノートに写している。 「あれ?もう日記写してんだ。どれ?どんなやつ?」 画面を覗き込んだ健の眉間に皺が寄った。 「○月×日 起きた。メシ食った。昼寝した。ゲームした。メシ食った。寝た・・・。なに?これ。これだけ?」 准一の頬が不満そうにふくらんだ。 「けど、これランキング1位になってんで?」 「ウソつけ。こんなのに人気でるわけないじゃん」 「ほら、ここに(1)って書いてるやん」 「ちげーよ。これ、昨日の閲覧者数だよ。これさ、昨日1人しか来なかったってことなの。書いた人以外誰も見てねーの」 「じゃあ、俺が見たから明日は(2)になるわけやな?」 「まあね」 気にする様子もなく写し続ける准一を、健はあきれ顔で眺めた。前のパソコンからは、相変わらず下卑たうひゃひゃ笑いが絶えない。 「昨日はぁ、エッチな夢見ちゃいました・・・だって!わー、こんなの書いちゃっていいの?」 「こっちのがもっとだよ。彼ったらぁ、電話でエッチなこと言うんです、だって!わーっ、すげーっ。きっと読んだ先生心臓バックンバックンだよ」 「あのさ、ホントにそんな日記写して出すわけ?」 おそるおそる聞いた健に、二人は大まじめな顔で答えた。 「なんで?当たり前だろ?」 「出すよ?悪い?」 健はふたたび一人で大きなため息をついた。 「しかたない。せめて俺だけはまじめに自分で書こう・・・」
おやつを食べ、ついでに晩ご飯までご馳走になって、四人はにこにこ顔で坂本家に引き上げてきた。 「あら、お帰りなさい。みんな、どうだった?」 四人分の食費がういてご機嫌の博子に四人は笑顔で答えた。 「うん、うまかったぜ。俺、ご飯3ばいおかわりしちゃった」 「俺さ、生まれて初めて腹いっぱいに食った気がした」 「おかずが3つも並んでるなんて、うちじゃ見たことなかったよ」 「うまかった、うまかった、うまかった」 それを聞いて昌行一人が苦い顔をした。 「なんなの?昌行さん。しかたないのよ。あなたの働きが悪いから、みんなにまともに食べさせてあげられないんだから」 「いや、そうじゃねえ。なんだって子供らはご馳走食って、俺だけ梅干しと味噌汁なんだ?」 「やだっ、そーんなぁ!」 博子が力にまかせて、昌行の背中をばーん!と叩いた。昌行は思わずゴホゴホッと咳き込んだ。
次の朝、子供たちは意気揚々と学校に登校した。 「みんな宿題もちゃんとやって、いい子ばかりだわ」 と博子は満足の笑みを浮かべて見送ったが、快彦と剛の通うそれぞれの学校から呼び出しの電話を受けたのは、それから3時間後のことだった。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 みなさまおひさしぶりです。もはや私のことを知らない方ばかりだと思います。誤解のないように申し上げておきますが、私はピンキー藤原さんやボンバー藤原さんとは別人です。以前、ビンボー藤原のHNで投稿したことがありますが、物いりだったため、よりいっそうビンボーになって戻ってきました。苦情や暴動や討ち入りは、決してピンキーさんやボンバーさんになさらないでください。そういうものはhongmingさんにしていただくと、きっと正しく私に届くものと信じます。それでは、貴重な内職の2時間を使ってしまいましたので、いまから取り戻すべくがんばります。明日は一日日雇いの下水工事にいそしんでおりますので、見かけたら声をかけてやってくださいませ。
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