投稿時間:01/03/11(Sun) 18:41 投稿者名:ナナ
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タイトル:恋のメロディー
どうも、ナナです。ちょっと思い立ったので、短編を書いてみました。 「愛のMelody」発売記念‥‥というわけではありませんが、恋愛モノです。 地味な話ですが(^^;)読んでみて、なごんで(?)いただければ幸いです。 ※なお、井ノ原快彦さんの年齢は実際より1歳年下に設定してあります。
* * * * * *
・恋のメロディー あるいは、ある寒い夜の出来事。
それは、春だというのに、まだ夜は冷え込む日の続く、週末だった。
時刻はPM11:30。 働いている者、寝ている者、帰宅する者、これから出て行く者。 都会の夜というのは様々な人間が入り乱れる時刻である。 そんな夜には、しばしば、ちょっとした事件が起こるものだ。 たとえば、本来無縁の者同士が、妙なタイミングで出逢ったりする―――
舞台は、ある8階立てのマンションだ。 道路をはさんですぐ向かいに、コンビニエンスストアが建っている。 そのコンビニを通り過ぎてすこし行けば24時間のファミリー・レストラン。 同じ敷地内にある駐車場の裏通りに入ると、すこし薄暗い住宅街になる。 その住宅街には派出所があり、いざというときにはすぐ駆け込める。 徒歩20分の距離に駅もある、ちょっと便利で、ごく普通のマンションだ。
さて、立地の説明がすんだところで、物語の主人公を探そう。
と、マンションのエントランスに一組のカップルが入ってきた。 二人は何やらイチャイチャと談笑しながら歩いてきたが、 ふと、何かに気がついて足を止めた。 エントランスに、若者が一人、壁に背をもたれて立っているのだ。 「ねえ、またいるよ」と、女のほうが小声で男にささやく。 男も怪訝そうな顔をしていたが、「行こ」と短く言って、 二人は早足で、若者の前をとおりすぎていった。
若者は岡田准一。現在20歳、某大学で社会学を専攻している学生だ。 ちょっと(というか、かなり)顔がいいことをのぞけば、 講義とバイトに忙しくヒーヒー言っている毎日の、シケた男である。 彼は、ここの住人ではない。では何をしているのかというと、 ここで、人を待っていたのだ。もう1時間近く前から、ずっと。 彼こそが、本編の主人公である。
時同じくして、駅に一人の男が降り立った。 スーツを着て片手に鞄をもった彼は、辺りをキョロキョロ見回すと、 駅の地図でマンションの位置を確認して、歩き始めた。 男は井ノ原快彦。現在23歳、某製薬会社の営業部に勤める会社員だ。 そして彼もまた、もう一人の主人公だ。
快彦はマンション近くのコンビニにやってきた。 夜でも煌々と明るい店内は、誰が何をしているのか外からでも丸見えだ。 「いらっしゃいませー」と、店員がヤル気のなさそうな挨拶をする。 快彦は入ってすぐ、店内を軽く見回した。 レジには、ストライプの制服を来た茶パツにピアスの店員がひとり。 雑誌のラックでは、スウェット上下の若い女がファッション雑誌を、 オタクっぽい男が週刊のマンガ雑誌を立ち読みをしている。 弁当コーナーでは、自分と同じくスーツの男が商品を吟味している。 そして、ドリンクコーナーの陳列を見ている准一の姿が目に入った。 快彦はそれを見つけると、さり気なく立ち読みをはじめる。 准一はホットの缶コーヒーを1本とると、レジに並んだ。 途中、レジのわきに置かれた商品を見たりしている。 「226円になります。ありがとうございましたー」 店員の声を聞いて、快彦は雑誌から顔をあげると准一の様子を見た。 准一が出ていく。 それを見送って、快彦も雑誌を棚に戻し、後を追うように出ていった。 「ありがとうございましたー」 という店員の気だるそうな声が、背中に聞こえた。
准一は、コンビニの袋を手にマンションに戻ってきた。 ふたたびエントランスに入ろうとしたとき、 「待てよ!」という声がした。 振り返ると、快彦が少し駆け足でやってくる。 「よおっ」 快彦が明るい調子で言った。 准一は、怪訝な顔で快彦を見た。 「岡田准一くんだろ?」 快彦はあくまでにこやかに、そう言った。 「‥‥‥‥‥」 准一も少し思案していたが、ハッとすると、快彦に歩み寄った。 「一度、会って話がしたいと思ってたんだよ」 快彦は軽くそう言ったが、顔は笑っていなかった。 准一も、緊張した表情で頷くと、快彦の正面に立った。 二人のあいだに、嫌な空気が流れていた。
AM0:00。 二人の男は、ファミリー・レストランにいた。 すこし奥のほうの席に、テーブルをはさんで向かい合って座っている。 傍目から見ても、あきらかにわけありの様子だ。 快彦が、准一よりは余裕のある様子でネクタイをゆるめた。 「メシ食ってもいいかな、こんなときにアレだけどさ」 准一は硬い表情で、「どうぞ」とだけ言った。 そのとき、ウェイトレスが注文を取りにきた。 「アメリカンコーヒーひとつ。」 准一がすぐに答えると、快彦が口を開いた。 「おごってやるか?」 「?!」 准一が快彦を見る。 「金、ねえんだろ。貧乏学生って聞いてるぜ」 快彦が淡々と言った。 「関係ねぇだろ!」 准一が思わず声を荒げると、ウェイトレスが驚いて准一を見た。 「そんなに怒るなよ」 快彦が飄々とした口調で言った。 准一は怒りを抑えて、黙り込んだ。
しばらくして、コーヒーとハンバーグセットが運ばれてきた。 准一が、暗い表情で薄いコーヒーをすすっているのに対し、 快彦は平然とした様子で、手と口を同時に動かしている。 「聞いてるかもしれないけど、小枝ちゃんとは実家が隣でさ。 親同士も仲良かったからね。まあ、幼なじみってやつ? とにかく、俺にしてみればずっと昔から知ってるし、 大学も先輩後輩だったからさ、前から話は聞いてたのよ、色々と」 准一は黙って聞いている。 快彦は准一の様子をうかがいながら、続けた。 「だから、まあ‥‥今度のこともだいたいは知ってる。 他人が口出しするようなことじゃないとは思ったけど‥‥ 今回だけは、話が違うからな」 快彦はそこで言葉を切ると、ナイフとフォークを置いた。 「考えてもみろよ。毎晩毎晩、女の子が一人暮らししてる部屋の前で 男が待ち伏せなんかしてたら、他人はどう思う? 他の部屋の人にも変な目で見られるし、帰るに帰れなくて迷惑してるって」 「‥‥‥‥‥」 「言いたくないけどな、それってストーカーだよ。お前」 准一は黙ってうつむいている。 「みっともないと思わねーのか?」 准一はまだ黙っている。 「‥‥なんとか言えよ」 快彦は椅子の背もたれに寄りかかると、待つ体勢に入った。 気まずい沈黙が流れる。 ウエイトレスが、好奇の目で二人の様子をうかがっている。 准一が、うつむいたまま口を開いた。 「‥‥あいつが‥‥小枝がそう言ったんですか。迷惑だって。 困ってるから、なんとかしてくれって、あんたに」 快彦が准一を見る。 准一は、わずかに躊躇したが、はっきりと快彦の目を見て続けた。 「だったら‥‥もし、小枝がそう言ったっていうんなら、 こんなの納得いかない。別れるにしても、自分からちゃんと話してほしい。 ‥‥そう言っといてください。失礼します」 准一は軽く頭をさげると、コーヒーの代金を置いて席を立とうとした。 だが、すぐに快彦が准一の顔を見ずに言った。 「待てよ」 准一が立ち止まる。 「まだ終わってない」 快彦は、准一の顔を見ないまま言う。 准一がふたたび緊張した面持ちになって座りなおした。 「‥‥‥‥‥」 「‥‥‥‥‥」 「‥‥こうやって、避けてられるってことは、 もうお前の顔も見たくないってことだと思わないのか」 准一が、一瞬、固まった。 快彦は准一の顔を見ると、意を決したように続ける。 「この際だから言わせてもらうけどな。俺だって、小枝ちゃんは 幼なじみだからってだけでお前なんかと会ってるわけじゃねえぞ」 准一が驚いて快彦を見る。 「わかるだろ。こっちだって納得いかなかったんだよ、 なんで小枝ちゃんがお前みたいなのと付き合ってんのか‥‥」 「―――――」 「だから、俺は―――」 と、そのとき突然、携帯の着信音が響いた。 快彦が慌ててスーツのポケットから電話を取り出す。 「はい、もしもし‥‥‥なんだよ‥‥あっ、ゴメンゴメン。 いや、うん、今のは取り消すけど、ちょっと取り込んでんだ。ねっ」 「?」 快彦はさっきまでと打って変わって低姿勢に電話に向かっている。 「ああ、うん。‥‥ああ‥‥‥ああ‥‥わかった‥‥ ああ‥‥‥わかったって! うん。じゃあな」 快彦が電話を切ると、准一がここぞとばかりに口を開いた。 「こっちも、小枝からあんたの話は聞いてる。 何回か別れたりもしたけど、ずっと続いてる相手がいるって」 「そういうんじゃねえよ!」 快彦がムッとして言うが、准一も負けじと言い返す。 「だったら今すぐかけ直して、『二度と電話するな』って言えよ」 「――だから―――そういうんじゃねえって‥‥!」 そのとき、またしても電話が鳴った。 快彦がイラつきながらも出る。 「もしもし。‥‥取り込んでるって言ったろ!」 准一が余裕しゃくしゃくで、コーヒーを飲んだ。 「‥‥ちが、わかったよ、ゴメンって。だから今は‥‥ うん、うん。それじゃ‥‥え? 誰って、友達‥‥‥男だよ!」 快彦がため息をついて電話を切った。 准一がぽつりと言ってやる。 「友達になった覚えはないで」 快彦がムムッとなったが、言い返せず、電話をスーツにしまった。
AM0:35。 「なんでついてくるんだよ」 「勝手だろ?」 二人の男は、ぶちぶちと言い合いながら通りを歩いていた。 准一が、コンビニの袋からカイロを取り出して、封をあけた。 「‥‥言ったことあんのか」 「あ?」 快彦が聞き返す。 「小枝に、あんたから、」 准一が言いかけたが、快彦は誤魔化すように 「彼氏だからって、小枝ちゃんを呼び捨てにすんなよ!」と言った。 その言葉で、准一もなんとなく黙った。 二人は黙って、歩いていった。
結局、快彦がマンションのエントランスまでついてきてしまった。 さっき准一がいた場所に、今度は二人で座り込んでいる。 「なんでいるんだよ‥‥」 准一が小さく言ったが、快彦は聞こえない様子で 「さみー」などと言いながら、スーツを羽織りなおしたりしている。 相変わらず、エントランスに人気はない。 准一はカイロで手を温めていたが、口を開いた。 「‥‥あんたはこんなとこで待ってないで、小枝に、電話すりゃいいだろ」 「‥‥‥‥‥」 快彦は黙っている。 「?」 と、准一が快彦を見た。 快彦が目をそらす。 「‥‥頼まれたんだろ? あいつに」 「‥‥‥‥‥」 「‥‥嘘か?!」 准一が問い詰めると、快彦が急に居直った。 「俺に頼みにくるわけねーだろ。男と別れさせてくれ、なんて」 「人、バカにすんのもいいかげんに‥‥!」 准一が思わず快彦の胸倉をつかむ。 「あーわかったわかった!! 俺が悪かったっ‥‥‥‥?」 快彦が、准一が何も言わないので怪訝に見た。 「‥‥‥‥‥」 「‥‥お、おい?」 「‥‥よかった‥‥」 快彦が驚いた顔になる。 准一は、ほっとしたような、泣きたいような顔をしていた。 「‥‥嘘で、よかった‥‥‥もうダメだと思ってた‥‥!」 「―――――」
(後編へ)
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