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一 括 講 読

投稿時間:00/11/18(Sat) 23:32
投稿者名:あやっぺ
Eメール:ayappe@rose.ocn.ne.jp
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タイトル:ずっと変わらぬもの
「俺もとうとうハタチかぁ〜」

普段より語尾のトーンが少々上がり気味の岡田の声。
11月18日の今日、彼は20回目の誕生日を迎えた。

「・・・・・耳にタコだよ」

「だぁって、イノッチがデビューした歳より一個上になんねんで〜?」

「それも聞いたって」

なんだかんだ言いつつ、剛も健も本当に優しい笑みを浮かべている。


雑誌の撮影時間。
岡田への祝福の声は後を絶たず、
今日の会話といえば、もっぱら“岡田がハタチ”ネタ。
最近は「大人の雰囲気」と言われることも少なくない岡田の表情も、
今日ばかりは緩みっぱなしである。

まずは個人撮影。健がカメラの前へ立つ。
なんとなくその様子を眺めつつ、本格的に撮影が始まると、
岡田はいつも通りドラマの台本を捲ったりして、静かに出番を待っていた。
そして、同じく出番を待つ剛は・・・

「・・・・・」

―――なんだろう。
変にモヤモヤして仕方がない。
本当に・・・本当に“いつも通り”なのだけれど、
やけに岡田のことばかりが気になっていた。

(「うーん・・・」)

やっぱり大人になったんだなぁ、と思う。
絶対に口に出してなど言えないけれど、
本当は考えるのも自分のポリシーに反するようで嫌なのだけれど、
今は素直にそう思う。

“グループより、まず自分” ずっとこれでやってきた。
さすがにデビュー当時も自分のことで精一杯。
でも、そんな心の余裕もない毎日だとしても、
岡田をカバーするということを忘れたときは無かったような気がする。
確かに隣りに立っているだけなどというのが常だったけれど、
心のどこかでそんなことを考えていた。
別に同情していたわけじゃない。
それも自分のためと片付けてしまえばそれまでのこと。

「・・・・・」

どうしてもひねくれた答えしか出てこないな、と剛は少し苦笑いする。

「剛くんっ」

「・・へ!?」

岡田が少し呆れた顔でカメラのほうを指差している。
次は剛の撮影だ。
慌てて頭を下げながら撮影に向かう剛を見送り、岡田は小さく微笑んだ。



同じとき、トニセンは今日のコンサート2公演を無事に終え、
のんびりとした時間を過ごしていた。

「岡田は何やってるかね〜」

少しも疲労の様子を見せず、井ノ原はニコニコと口を開く。

「やっぱハタチだもんねぇ。
 みんなに祝ってもらえたんじゃない?」

目尻を下げて微笑む長野。

「いい加減、岡田も“ハタチ、ハタチ”ってうるさいんだけどさ〜」

「“イノッチのデビューより一個上〜”ってな」

坂本も楽しそうに笑顔を見せる。


本当は面と向かって誕生日を祝ってやりたかった。
もしかすると、岡田本人以上に彼らはこの日を“特別”にしたかったのかもしれない。
今日会えない分、昨日「おめでとう」をたくさん伝えたつもりだったけれど、
やはりなんだか物足りないのだ。

「「「・・・・・」」」

確かに笑っているのに、お互いの寂しさを嫌というほどに感じてしまう。

(((「―――愛してるんだねぇ」)))

しみじみそんなことを思うと、なんだか可笑しくて、
誰からともなく吹き出すような溜息をついた。



「なにボーッとしてんだよ〜」

「うるせっ」

健はすれ違いざまに剛にダメ出しすると、
小走りにやってきて剛が座っていたイスに腰掛けた。
岡田は台本から目を離さない。

「・・・・・」

いつの間にか、健は無心に岡田のことを眺めていた。

最近、暇さえあれば岡田は台本を開いている。
「芝居が好き」そう彼が言うのを何度も聞いたことがあった。
勉強熱心過ぎて周りのほうが心配してしまうこともあるくらい。

(「負けてられない」)

少なからず、デビュー当時は上京してきたばかりの岡田への優越感があった。
どこかでその気持ちに頼りながら過ごしていた。
しかし、いつからだろう。
岡田がどんどんと成長していくその著しさに、
“焦り”どころではない別の何かを感じ始めたのは。

一つしか違わないのに、とてもそうとは思えないほど真剣で純粋な眼差し。
何度も何度もそれを見てきた。
その度に自分を奮い立たせた。
別に競争しているわけじゃない。
そんな暑苦しい空気の中におさまるほど、
安っぽい関係でいる気など毛頭無かった。

「―――岡田?」

「ん?」

「・・いや・・・あっ、次っ・・岡田の番」

「はーい」

岡田は席を立つ。

(「・・・よかったぁ・・・」)

タイミングよく出番の声が掛かり、安堵した健が一息つく。
今どうして岡田の名前を呼んだのか、それは自分でもよく分からなかった。



(「誕生会できるといいんだけどなぁ」)

井ノ原は何度もこの言葉を頭の中に思い浮かべた。

以前、岡田に内緒で計画した六人での誕生会がとても懐かしく思える。
みんなが集まっていたことに驚き、耳まで真っ赤にして怒った岡田。
しかし、そんなの建前のうちで、その日の岡田はいつまでも幸せそうに笑っていた。
それが今でも忘れられない。
どんなに「うるさい!」と言われても、
そんな岡田を知っているから可愛く思えて仕方がないのだ。

思い出し笑いを隠しきれず、
井ノ原は鏡に映る自分から恥ずかしそうに目を逸らしていた。


(「ハタチねぇ・・・」)

コーヒーを口に運ぶ長野。

そういえば、岡田に「ヒロシ」なんて呼ばれるようになったのはいつからだっただろう。
正直、初めは驚いたけれど、変な違和感はまるで感じることがなかった。
むしろ嬉しかったくらいだ。
どこか気まぐれな岡田だからこそできることなのだと思う。
何でもケロッと言いのけて見せる。
そんな姿がたまに羨ましかったりもして。

そこは“大人”になっても変わらないだろうな、と長野は一人で納得する。


(「全員10代卒業か」)

坂本は右手のボールペンを、意味も無くテーブルにカチカチと打ち付けていた。

最年少が14歳。
あまりにも漠然とし過ぎていて、どうしていいか分からなかった。
まあ、それが逆におもしろいと思ったことも事実だったけれど。
下の三人には毎日のように説教を繰り返し、
何の仕事をさせるにも心配で気が気ではなかった。
そんな最年少が、今日でもう20歳。
すぐにでも目に浮かぶ立派になったその姿。

坂本は静かに微笑んだ。


三人は無償に末っ子に会いたくて仕方がない。

(((「―――やっぱり愛だよ(笑)」)))



「アイツ、また背ぇ高くなった気ぃすんだけど」

「んあ〜」

カメラの前の岡田を見ながら、二人はなんとなく呟く。

「顔も男らしくなったっていうか・・・」

「・・・無い物ねだりか?(笑)」

「っんだよ、それぇ!」

「ヒャヒャッ」

「・・・前はいつもほっぺ真っ赤だったのに、今は全然赤くなんねぇもん」

「“全然”ってことはねぇだろ〜」



二人は何を企んだのか、あからさまに不敵な笑みを浮かべている。
岡田がそれに気付いたとき、すでに周りのスタッフは岡田を囲むようにして立っていた。

「岡田くん、ハタチの誕生日おめでとう!」

スタジオ中にその声が響き渡る。
岡田は少しだけ恥ずかしそうに笑った。



やっぱり、りんごのように真っ赤なその頬で―――



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