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一 括 講 読

投稿時間:00/07/17(Mon) 09:53
投稿者名:さこ
Eメール:sako2000@kj8.so-net.ne.jp
URL :
タイトル:愛の伝道師・マーサ坂本 その1
先週、上司が出張でいなかったんです。
急ぎの仕事もなかったんです。
はっきり言って暇だったんです。
何もしないでお給料を頂くのは、とても心苦しかったので
仕事の代わりに、これを書きました。
(って、何か間違ってる気が…)

* * * * * * * * * * * * * *

俺の名は、マーサ坂本。西に恋に悩む人あれば行って励ましてやり、東に愛に泣く人あれば行って一緒に涙を流してやる。そんな俺を人はこう呼ぶ『愛の伝道師・マーサ坂本』。愛の迷い子たちを救うため今日も俺は旅をする。

おっ、前方に色白の青年発見! 何やら悩んでいる様子。おぉ、あのため息はまさしく恋に悩む者の証。どうしたのだ若者よ。さぁ、その胸の内を俺に明かすのだ。

「ハア〜イ!」
「うわっ! 何もんだよ、あんた!」
「俺の名前はマーサ坂本。人呼んで愛の伝道師」
「愛の伝道師だか何だか知らないけど、何なんだよその紫サテンのシャツは!」
「古(いにしえ)より紫は高貴の色、そして光るサテンは愛の輝き」
「そのカスタネットは」
「天啓を告げる愛の鐘」
「その目ん玉指輪は」
「全てを見透かす愛の瞳」
「そのジャラジャラした金鎖は」
「体に染み入る愛の重み」
「じゃあ、その歯についたノリは」
「あっ、これはちょっと、その、昼飯の盛りソバの…」
「もういいよ、俺は真剣に悩んでんだから。頼むから、あっち行ってくれよ」
「その悩み、話してごらん、若者よ byマーサ」
「って何俳句なんか詠んでんだよ! うるさいな、あんたなんかに俺の気持ちは
 分かんないよ」
「分かるかどうか言ってみなきゃ分かんねーだろ」
「それもそうだな。そう言や年寄りの言う事は聞くもんだって、おばぁちゃん言ってたよな」
「そうそう、年寄りとなすびの花には無駄が無い、って、誰が年寄りだっつーんだよ!
 いいから、吐け!」
「どっちにしたらいいか、俺、決めらんないんだよ」
「(小声で)おいおい、大人しそうな顔して二股かよ」
「どっちも俺の好みだし。それぞれにいいとこあるし」
「ほう、ほう。で、一体どう言った感じなんだ?」
「片方は、自己主張はあんまりないんだけど、何て言うかこう、ほっと出来るって言うか、
 毎日でもいいんだ。でも、もう一方は、全然違ってかなり濃厚なんだ。だから最後の方は
 結構きちゃって、だけど暫らくすると無性に恋しくなるんだ。思い出すと居ても立っても
 いられないって言うか、体が欲しがるんだよ」
「(小声で)おいおいおい、人は見かけによらないって言うが、純情そうな顔して
 とんでもねぇ野郎だな、コイツ」
「ああ、俺は一体どっちに決めればいいんだ〜!」
「そんな時は他にも目を向けてみるのだ、若者よ」
「他に目を向ける?」
「そう、そうすればきっとその二つを兼ね備えた新しいものに出会えるであろう」
「二つを兼ね備えた…そっか、そう言う手があったんだ! よし、決めた! ありがとう!」
「おい! ちょっと待てよ、まだ話は終わってねーぞ! まっ、いっか、取り敢えず
 迷いは吹っ切れた様だし。愛の伝道師、これにて伝道完了!」


「よし、行くぞ!」
意を決した様にドアを開ける青年。 

「ヘイ、らっしゃい! おっ、長野くん。今日は醤油と豚骨のどっちだい?」
「今日はね、その二つを兼ね備えた新しいヤツ、『豚骨醤油』!」
「珍しいねぇ、いっつも決まって醤油か豚骨なのに」
「新しいものに目を向けることも大事だって、さっき道で会ったホストの人に言われたんだ」
「ああ、仕事帰りにラーメン食ってく人多いからね、あの仕事の人たち。ヘイ! お待ち!」
「うっ、美味〜い! 幸せ〜!」

こうしてマーサは今日も一人の迷える若者を幸せへと導いたのであった。

投稿時間:00/07/18(Tue) 09:48
投稿者名:さこ
Eメール:sako2000@kj8.so-net.ne.jp
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タイトル:愛の伝道師・マーサ坂本 その2
俺の名は、マーサ坂本。西に恋に悩む人あれば行って励ましてやり、東に愛に泣く人あれば行って一緒に涙を流してやる。そんな俺を人はこう呼ぶ『愛の伝道師・マーサ坂本』。愛の迷い子たちを救うため今日も俺は旅をする。

おっ、前方にアフロヘアーにチューリップハットの青年発見! 何やら悩んでいる様子。おぉ、あの焦点の定まらぬ(って言うかどこを見ているのか分からない)瞳はまさしく恋に悩む者の証。どうしたのだ若者よ。さぁ、その胸の内を俺に明かすのだ。

「ハア〜イ!」
「はぁ〜い、はぁ〜…」

うっ、この俺の姿を目にしても驚かないとは、これはそーとー重症なのか、はたまた細すぎて視界に入っていないのか? 

「何か悩みでもあるのか、若者よ」
「いや、実はさぁ…って、うわっ! ダセ〜、何だよその格好!」
「ってお前に言われたかねぇぜ、パンタロン野郎!」
「いいじゃねぇかよ、俺がどんな格好してようとあんたにゃ関係ねぇだろ」
「そりゃそうだが、悩める者を正しき道に導くのが俺の使命」
「俺の使命って、一体あんた何者なんだよ?」
「よくぞ聞いてくれました。俺の名前はマーサ坂本。人呼んで愛の伝道師!」
「で? その愛の伝道師とやらが俺にいったい何の用なの?」
「何ってまぁ、なにやら悩んでる様だったからちょいと話でも聞いてやるかと」
「冗談じゃねぇぜ、この俺の熱き思いが他人なんかに分かってたまるかよ」
「あっ、そ。じゃ、まぁ、そーゆ事なら今回は他をあたるか」
「ちょ、ちょっと待って! ちょっと待ってよ〜。まだ、相談しないとは言ってないじゃな〜い」
「だったら早く話せ」
「俺さぁ、今、悩んでんのよ」
「それは分かってる」
「どっちにしたらいいか決めかねてんのよね」
「(小声で)おいおいおい、その顔でお前も二股かよ」
「片方はさぁ、もう超人気者なわけよ。だからそれなりに金もかかるわけよ。
 もう一方はさ、ちょっとマイナーなのよ。でもその良さは分かる人には分かるって言うか、
 なんかこう心引かれんだよね」
「(小声で)なんだ、こいつ“みつぐ君”か。なら話は分かるぜ、うん」
「けどさぁ、今、あの超人気者のあいつを連れてたら注目の的だしなぁ」
「目先の華やかさに心を惑わされてはいけない、若者よ。5年先、10年先を想像するのだ。
 『美人は三日で見飽きる』。たとえ今は地味でも、お前の心の揺らぐ方が、将来的には
 お前に大きな喜びをもたらすであろう」
「将来的に大きな喜び…。そうだよな、やっぱりそれが大事だよな。サンキュー、まーさん!」
「まーさんって、俺はマーサだ! まっ、いっか、取り敢えず心は決まったようだし。
 愛の伝道師、これにて伝道完了!」

「よし、決めた!」
意を決した様にドアを開ける青年。

「よっ、いのっち! どっちにするか決めたか? 吉本多香美の直筆サイン入りレナちゃんフィギュアと
 ウルトラマン・キッズのソフビ?」
「やっぱさ、ソフビにするわ」
「あれ? 昨日まではレナちゃん人形に心傾いてるみたいだったけど、どう言った心境の変化?」
「いやぁ〜、実は今ここに来る途中でさ、何とかって言う宣教師に説教されちゃって。5年先、10年先の
 利益を見越して物事は決めろって。レナちゃん人形はさ、今、これだけ人気があるって事は、将来的にも
 持ってる奴は山程いるわけじゃん。それに引き換え、ウルトラマン・キッズの方はあんまいなさそうだし。
 でもウルトラマンシリーズがヒットすればその希少価値は上がる。数の少ない物にはプレミアがつく。
 即ち高く売れる!」
「へぇ〜、さすがは宣教師、いい事言うな。はいよ、ソフビ」
「ど〜も〜。いやぁ〜、やっぱいいよなぁ、この3頭身。かっわい〜い!」

こうしてマーサは今日も一人の迷える若者を幸せへと導いたのであった。

投稿時間:00/07/19(Wed) 09:49
投稿者名:さこ
Eメール:sako2000@kj8.so-net.ne.jp
URL :
タイトル:愛の伝道師・マーサ坂本 その3
俺の名は、マーサ坂本。北に失恋の寂しさに震える人あれば行ってその肩を抱いてやり、南に愛の歌を歌う人あれば行って一緒にビブラートを聞かせる。そんな俺を人はこう呼ぶ『愛の伝道師・マーサ坂本』。愛の迷い子たちを救うため今日も俺は旅をする。

おっ、前方に(このクソ暑いのに)革ジャン革手袋の青年発見! 何やら悩んでいる様子。おぉ、あの額に流れる汗(って言うか暑いなら脱げよ!)はまさしく恋に悩む者の証。どうしたのだ若者よ。さぁ、その胸の内を俺に明かすのだ。

「ハア〜イ!」
「はぁ〜? 誰だよあんた?」
「俺か? 俺はなぁ、この世の全ての人に愛する事の素晴らしさを説く、
 人呼んで愛の伝道師・マーサ坂本」
「愛のテントウ虫、ばーさん坂本ぉ?」
「ちがーーーーーーう! 愛の伝道師、マーサ坂本!!」
「どうでもいいけど、何なんだよそのぴらぴらしたレースは」
「あっ、いや、ちょっと衣替え。いや〜、やっぱ夏場のサテンは厳しいわ。
 お前こそ何なんだよその格好は。このクソ暑いのに革はねぇだろう、革は」
「うるせーな! これは俺のユニフォームなんだからいいんだよ」
「それよりお前、何か悩みごとがあるだろう?」
「ねえよ、そんなもん。うるせーな、ほっとけよ」
「いやいやいや、他の誰はごまかせてもこの愛の伝道師マーサ様の目は
 ごまかせない。ぜったいに何かある!」
「ない!」
「ある!」
「ない!」
「ある!」
「ない!」
「ない!」
「ある! あっ…」
「けっこう単純な奴だな、お前」
「くっそーーー! まいっか。実はさ、ここ2、3日、彼女が家に
 戻ってこないわけよ。でもって部屋の中ガサ入れしたら、
 俺の知らない奴と撮ったプリクラとか出てきて」
「(小声で)なんだよこいつ、意外と女々しいな」
「名簿とかアドレス帳とか調べて取り敢えず居所だけは分かったんだけど
 俺が行っても、全然取り合ってくんねぇし。おまけにヤマンバみてぇな
 顔でガァーーーって言い返えしてきて超こえぇし」
「(小声で)おまけにビビリやか?」
「もう俺一人の力じゃどうにもお手上げなわけよ」
「そんな時は、他人に頼る事も必要なのだ、若者よ」
「他人に頼る?」
「誰か親しい人に一緒に行ってもらってお前の気持ちを伝えてもらうのだ」
「親しい人かぁ…。そっか、あの人だ! そうと決まりゃ銭は急げだ」
「それを言うなら善は急げだ」
「どーだっていいじゃんかよ、そんなのどっちでも。じゃ、あばよ、ばーさん!」
「だから俺はマーサだっての! それにしてもあんな硬派な格好してても
 女に振り回されるたぁ、まだまだガキだな。まっ、青少年に正しい恋の手解きを
 してやるのも俺の使命だがな。愛の伝道師、これにて伝道完了!」


「よし、今日こそ連れて帰るぞ!」
意を決した様にドアを開ける青年。

「あ、来た、来た、剛くん。あかんわ、全然帰る気ぃないみたいや」
「そうか、そんなこともあろうかと思って、今日は強力な助っ人を用意した」
「助っ人?」
「そう。それでは、お父さん、お願いします!」
「はい。たま子、戻って来なさい、お母さんも心配している」
「やぁ〜だね〜」
「そうか、それならお父さんにも考えがある」
「んだよ〜」
「一緒に帰らないと言うなら、お父さんはここでカミセンの
 "Born to run" を歌うぞ。しかも振りつきだ。なんなら衣装も着るぞ」
「わっ、わぁったよ、帰るよ、帰る! 帰るからそれだけはヤメて!」
「っしゃーー! 『プチ家出娘救出作戦』大成功! やったね!」

こうしてマーサは今日も一人の迷える若者を幸せへと導いたのであった

投稿時間:00/07/20(Thu) 09:49
投稿者名:さこ
Eメール:sako2000@kj8.so-net.ne.jp
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タイトル:愛の伝道師・マーサ坂本 その4
俺の名は、マーサ坂本。北に失恋の寂しさに震える人あれば行ってその肩を抱いてやり、南に愛の歌を歌う人あれば行って一緒にビブラートを聞かせる。そんな俺を人はこう呼ぶ『愛の伝道師・マーサ坂本』。愛の迷い子たちを救うため今日も俺は旅をする。

おっ、前方に子犬と戯れる青年発見! 何やら悩んでいる様子。おぉ、あの涙にグズついた鼻はまさしく恋に悩む者の証。どうしたのだ若者よ。さぁ、その胸の内を俺に明かすのだ。

「ハア〜イ!」
「…こんにちは」
「あっ、いや、その、そんなあらたまって返されると…」
「何かご用ですか?」
「ご用と言うか、何と言うか、そのぉ、私、一応、愛の伝道師などと言うものを
 やっております、マーサ坂本と申しまして、お見受けしたところ、何と言いますか
 その、そちら様が涙ぐんでいらっしゃる様に見えましたので、何かお悩みでも
 あるのかと思いまして、はい。出来ればその解決のお手伝いなんぞさせて頂こうかと」
「ああ、今日はちょっと花粉が多いもんで」
「あっ、花粉症でいらっしゃいましたか。これはまたとんだ早とちりを」
「でも、悩んでいる事があるのは事実なんです」
「そのお悩み、宜しければお聞かせ願えますでしょうか?」
「僕、ダメなんです」
「駄目、とおっしゃると?」
「何をやっても駄目なんです。一生懸命やればやる程、上手くいかない。
 頑張れば頑張る程、空回りしちゃうんです」
「(小声で)典型的なパターンだな。追えば追う程逃げられる」
「みんなみたいに気の利いた事も言えないし、出来ないし」
「(小声で)これこれこれ! こう言う悩みを俺は待ってたのよ〜。
 純情な若者に愛する事の勇気と喜びを教える。
 これこそ愛の伝道師の醍醐味ってもんでしょ〜!」
「どうしたらいいのか分かんなくなっちゃって」
「そんな時には、自分の心に素直になるのが一番ですよ」
「自分の心に素直になる?」
「無理は禁物。人に合わせると言う事も時には必要ですが、本当は自分は
 どうしたいのか。何が一番やりたい事なのか。まずはそこから考え直してみては
 如何ですか?」
「自分が一番やりたい事…。そうですね、僕、間違ってました。
 何も無理する事はないんだ、自然体でいけばいいって事ですよね。
 ありがとうございました!」
「どういたしまして。かぁ〜! いいねぇ、こう言うの! 何て言うかこう
 仕事したーーって感じがするねぇ〜。愛の伝道師、これにて伝道完了!」


「よし、頑張るぞ!」
意を決した様にドアを開ける青年。

「あっ、来た来た、三宅くん。今度の罰ゲームの衣装の件なんだけど」
「その事ですけど、やっぱり自分が一番自分らしくあれるものにしたいと思うんです」
「自分らしくあれるもの?」
「はい。これまでは意外性やウケを狙おうとして色物、キワ物に挑戦してみましたが
 やっぱり僕のキャラクターには合わないと思うんです」
「そうかなぁ、三宅くんがあそこまでやるなんて、って感心してる人もいるけど」
「でも、やっぱりどこか僕らしくないって言うか、キレイじゃないし」
「じゃあ、どんなのがいいのかな?」
「こんなのどうでしょうか」

  ****************

「は〜い、じゃあ次、三宅くん。思いっきり敵に向かってキックねぇ。
 あっ、でも中身見えないように、ちょっとは恥じらい持ってねぇ」
「は〜い。やっぱウエイトレスの制服は『マンマ・ミラーズ』に限るよなぁ。
 なんてったって可愛いし。嬉し〜い!」

こうしてマーサは今日も一人の迷える若者を幸せへと導いたのであった。

投稿時間:00/07/21(Fri) 09:47
投稿者名:さこ
Eメール:sako2000@kj8.so-net.ne.jp
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タイトル:愛の伝道師・マーサ坂本 その5
俺の名は、マーサ坂本。北に失恋の寂しさに震える人あれば行ってその肩を抱いてやり、南に愛の歌を歌う人あれば行って一緒にビブラートを聞かせる。そんな俺を人はこう呼ぶ『愛の伝道師・マーサ坂本』。愛の迷い子たちを救うため今日も俺は旅をする。

おっ、前方にランドセル姿の青年(って言うのかランドセルしょってる奴を?)発見! 何やら悩んでいる様子。おぉ、見事なまでのあの十円ハゲはまさしく恋に悩む者の証。どうしたのだ若者よ。さぁ、その胸の内を俺に明かすのだ。

「ハア〜イ!」
「うわっ、何やおっさんその格好は!」
「おっさんとは何だおっさんとは! 俺はまだ二十八だぞ!」
「四捨五入したら立派に三十やないか」
「んなもん四捨五入するな!」
「まぁ、ええわ。『亀の甲より年の甲』、『昔取った杵柄』とも言うしな。
 俺より長ごう生きてる分、なんぞいい知恵持っとるかも知れんし。
 ちょっと俺の悩み聞いてや」
「なんかムカつくものの頼み方だなぁ」
「細かい事は気にしなや。あんま考えすぎるとハゲんなんで」
「お前こそ、十円ハゲがあんじゃねぇかよ」
「これは、ええねん。あんたのと違ごうてまだ毛根死んでないから
 また生えてくる」
「うっ…」
「それよりなぁ、何か最近、マンネリ化してきてんねん」
「(小声で)なんだとぉ〜、まだケツも青そうな顔してマンネリだ〜?」
「何をしても驚いてくれへんねん。色々考えてやってみんのやけど
 なんやこっちの考え見透かされてる様で上手くいかへん。
 俺がさそっても何やかんや理由つけて逃げてまうし」
「(小声で)くっそ〜、こんなガキですらあんな事やこんな事してるってぇのに
 この俺ときたら、一体こんなとろこで何やってんだ」
「何やおっさん、さっきから一人でブツブツと」
「だからおっさんと言うな、おっさんと! 俺の名前はマーサ坂本。
 人呼んで愛の伝道師だ!」
「なぁ、なんかいい案ないやろか?」
「そんな時は初心に返るのだ、若者よ」
「初心に返る?」
「そう。初めての頃を思い出せ。お互いにまだ何も知らなかった頃。
 ヘタな小細工したり大きな事をやろうとしなくても、する事の全てが新鮮に思えた
 あの頃を。『シンプル・イズ・ザ・ベスト』」
「『シンプル・イズ・ザ・ベスト』かぁ…。せやな、ありがとうな、おっさん!」
「だから俺はマーサ坂本だ! って、まっ、いっか、取り敢えず道は開けたようだし。
 愛の伝道師、これにて伝道完了!」
 
 
「よし、やったるでぇ!」
意を決した様にドアを開ける青年。

「おっ、岡田くん、何かいいハメッチングの案は浮んだかい?」
「はい。ここは一つ原点に立ち戻ってシンプルにやってみよう思うんです」
「シンプルに?」
「ええ。最近のはセット組んだり海外ロケ行ったり、ちょっと大掛かりすぎて
 却ってなんやこう、何かあるでぇ〜みたいな空気が漂ってる思うんです。
 せやからもっと単純って言うか、ベタって言うか、まさか今時そんなもんに
 ひっかる奴おらんだろうみたいな方がいい思うんです」
「そっか、それじゃぁこの『パッチンガム』なんてのはどうかな?」
「懐かしいなぁ。ええですね、それいきましょう」
「おっ、丁度いいところにお宅のリーダーが来た。さっそくいってみようか?」
「はい! お〜い、坂本く〜ん!」
「おう、岡田。あんまデカイ声だすなよ、頭に響くだろ」
「なんや、また二日酔いかいな。せや、ガムでも噛んでしゃっきりしい」
「おっ、気が利くな、じゃ遠慮なく…いっ、いってーーーーーーーぇ!」
「や〜い、や〜い、アホー。坂本くんのアホー。ひっかかった、ひっかかった、や〜い」
「てっめー、岡田! この、待て! この野郎!」
「『今日もあなたを、ハメッチングー!』。イェ〜イ!」

こうしてマーサは今日も一人の迷える若者を幸せへと導いたのであった。

投稿時間:00/07/23(Sun) 00:21
投稿者名:さこ
Eメール:sako2000@kj8.so-net.ne.jp
URL :
タイトル:愛の伝道師・マーサ坂本 おまけ
えっと、今回は一部18禁です(爆)。

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俺の名は、マーサ坂本。愛の迷い子たちに救いの手を差し伸べる為、東奔西走、この身を粉にして働いてきた。人の幸せは俺の幸せ。愛の鼻、じゃなかった花を咲かせるのが俺の使命。この仕事に誇りもある。だが最近ふと感じるこの胸の痛みはなんだ? この身をよぎる虚脱感。そして焦燥感。

「何を悶々としている」
「あっ、これは『肉体の伝道師』、東山さん」
「先程から見ていれば、あっちへウロウロ、こっちへウロウロ。
 シェークスピアではあるまいし、何を一人でハムレットるのだ」
「ハムレットる、って、東山さん、なに『ギャグの伝道師』錦織さんみたいな
 事言ってるんですか」
「これは、私とした事が。あ、いやなに、最近ちょっと青山あたりで
 ニシキとよく会うものでな。失礼した。それよりも、一体何を悩んでいるのだ」
「実は俺、最近将来の事とか考えると不安になっちゃって。
 いつまでもこんな事してていいんだろうかとか、そろそろ人の幸せより
 自分の幸せを探すべきなんじゃないかとか。そんな事考え始めたら
 夜も眠れなくて」
「なんだ、そんなつまらない事で悩んでいたのか。
 そんな事、この俺がすぐに解決してやる、さ、一緒に来い。
 お前に楽園を見せてやろう」
「はい!」

  ****************

「…あっ、東山さ…お、俺…もっ、もう…だ…」
「まだまだ、これからが本番だ」
「はぁ…でも…俺、これ以上…がま…ん、出来な…っ」
「辛くなったら息を吐け」
「そんな事いっ…あっ…もう…あっ…だっ、ダメでーーーーす」

  ****************

「だらしないな、まだたったの20キロしか走ってないじゃないか。
 少なくとも30キロは走らないとランナーズ・ハイの域には達っしないぞ。
 そして走り終わったら腹筋300回。それくらい体を酷使してやれば
 夜眠れないなんて事は絶対にない。さ、行くぞ、坂本! あと10キロだ」

  ****************

俺の名は、マーサ坂本。7月24日が誕生日。そう言や昔、誰かが言ってたな、人は本当は誕生日の1日前に1つ年を取ってるんだ、って。ってことは俺ももう二十九か…。『三十に、一つ足りない、二十九 byマーサ』。一つ足りない、か。まるで今の俺の様だな。何かが欠けてるんだ。俺の心を満たしてくれる何かが。その何かを求めて、今日も俺はあてのない旅にでる。

「えっと、取り敢えず明日の予定は…。『釣の伝道師』植草さんと山中湖か」

俺の名は、マーサ坂本。人呼んで愛の伝道師。
『二十台、最後の年の始まりは、恋の代わりにバスを釣る byマーサ』

…虚しい。



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