投稿時間:00/07/02(Sun) 14:18 投稿者名:ピンキー藤原
Eメール:saorio@wave.plala.or.jp URL :
タイトル:坂本家の難儀な日々 第5話
7月に入ったというのに相変わらずの雨模様。 坂本家の夕食の席では、三人の子供達が母親が運ぶ夕食をスプーンでちゃぶ台を叩きながら待っている。 奥の畳間では、父親昌行が携帯と新聞を片手に生真面目な顔で会話中。仕事かと思えば競馬予想の意見の交わし合いである。 母「それにしても准は遅いわねー…。今夜は准の好きなカレーなのに」 快「そう言えばアイツが夕飯に遅れるなんて珍しいな」 健「誘拐された…ってことはないよね?」 剛「アイツが誘拐されるタマかよ」(ハメッチングの姿を思い出し下さい) 父「そんな言い方ないだろう!でも誘拐は困るな…。家には身代金なんて用意出来ねーし…」 母「あなた、また競馬に行く気?」 父「へ…?な、何言ってんだい母さん!明日は釣りだよ!大漁に釣ってくるからね!」 健「父さん…耳に赤鉛筆さしっぱなし…(ぼそっ)」 母「お父さんは今夜は晩ゴハンぬき!」 父「え!ちょ、ちょっと違うんだよ!母さん!博子ちゃん!機嫌直して〜!」 相変わらず威厳のない父親の嘆きに、息子達は知らん振り。 「ただいまー…」 「あっ!帰ってきた!」 待ちかねた准一の声に、母博子は昌行をエビ固めから解放するといそいそと玄関へと足を運ばせた。 「おかえ…」 博子の声が途切れた。昌行も不審に思い、咽ながら顔を覗かせる。 「…!」 そこには困ったような准一の足元で、一匹の子犬がびしょ濡れになって大きな黒目を瞬かせていた。
「ダメったらダメっ!!」 「父ちゃん…そんなこと言わんと…」 相当雨と泥にまみれていた子犬は、風呂に浴びせて綺麗にし、今は部屋の中で楽しそうに健たちとじゃれ合っていた。 准一の話では学校の帰り道、友達と一緒にこの子犬を見つけ、こんなに濡れて可哀想にな〜…と撫でていたら妙に懐いてしまい、友達と必死で逃げ回っていたが楽しそうに追いかけてくるばかり。友達の家では既に犬を飼っていて、准たちが飼えないか、と言われたが勿論この貧乏家にペットを飼う余裕などないのは知っている。しかし一向に離れようとしない犬がここまでついて来てしまったのだという。 「いいじゃん。コイツ可愛いし!オレ達も面倒見るの手伝うし」 「兄ちゃん…」 兄達は面白い玩具を見つけたようにゲラゲラ笑いながら子犬と遊んでいた。 「そりゃな、オレも動物は嫌いじゃないよ。でも家にはこれ以上生き物を育てる余裕はないんだよ」 「だったらオレの飯代から差し引いてもええから…」 「准…、これ以上父ちゃんを悩ますなよ…」 腕を組んで溜め息をつく父親を前に、准一は何も言い返すことが出来なかった。 そこへ、准一の心中を察したように子犬が尻尾を振りながら擦り寄ってきた。 「ごめんな…やっぱりお前のこと置けないみたいや」 准一は子犬の頭を撫でてやりながら、寂しそうに微笑む。 重い空気が漂う中で、誰もが口も利けず准一にじゃれる子犬を見ていた。 「…分かったら捨てて来い」 昌行が絞るような声で言った。
オレも一緒に行こうか?と言う兄達を断り、准一は「元居た場所に返してくる」と言って犬を抱き抱え、家を出ていった。 しかし一時間経っても准一は帰ってこなかった。 「この雨だし、車にひかれたってことはないかしら」 博子は居てもたってもいられないと、傘を片手に家を飛び出そうとする。 「オレ達が行くから、母さんは家で待機しててくれ」 昌行は博子から傘をむしり取り、快彦、剛、健と共に手分けして、准一の姿を探しに雨の中へと走り抜けた。 そう遠くへは行っていないはずだし、男達は准一が立ち寄りそうなところをくまなく探索する。 大声で弟の名前を叫びつづける息子達に対し、昌行は一人罪悪感に似た嫌悪感と准一の安否を気づかった。 「あ…」 公園の砂場の影で、はたして准一はいた。 傘もささずにしゃがんだまま、じゃれる子犬の頭を撫でている。 昌行は取り合えず安堵したが、いきなり呼ぶことも出来ず、黙ったままその准一の様子を木の陰から隠れるように眺めていた。 「ごめんな…。今度はもっと金持ちの家に拾われるとええな…」 悪かったな…貧乏で…。 昌行は准一の言葉にむっとしながらも、そのままで聞いていた。 「オレな、実は弟が欲しかってん…」 子犬の鼻に顔を近づけ、言い聞かすようにに顔を撫でる准一。 「一度おかんにな、弟欲しいって頼んだことがあったんや」 へー…初耳だな…。 「そしたらな、これ以上人間が増えたらアンタのご飯も半分になるわよって言われて、やむなく断念したんや」 准らしい諦め方だ…。 「おとんのこと、悪く思わんといてな…。あれで結構優しい所あんねんで」 おお!准ちゃんいい子だ!(泣) 「目つきも悪いし、ギャンブル大好きだし、おかんにはいつも包丁で追っかけまわされてる情けない父ちゃんやけど、ホントは優しいんやで」 あんまり誉められてる気がしないな…。 「オレな、実はお前と同じで捨て子かも知れへんねん」 は…? 「だってな、オレだけ何故か関西弁やし、B型なんやで。おかしいやろ?」 それは単に作者が面倒で何も考えていなかっただけなんじゃ…。 「なあ…このまま二人で本当の親捜しに旅に出ようか?」 本気とも冗談ともつかないような事を呟き、准一はしばらく子犬を見つめていたが、寂しそうに再度犬を力いっぱい抱きしめた。 「元気でな。車には注意するんやで」 准一は目に溜まった涙を拭うと、意を決したように立ち上がった。 「そいつ、弟にしたかったのか…?」 准一がはっとして声の方に振り返ると、傘を差し微笑む父昌行の姿があった。 「父ちゃん…」 「いいよ。家の五男坊にしよう」 「え…?」 「貧乏でも、そいつ一匹くらい養える金はあるさ」 「父ちゃん…ええの…?」 驚いたように聞き返す准一に、昌行は傘をさしてやりながら濡れた子犬の頭を撫でてやった。 「その代わり、ちゃんと面倒は見ろよ。散歩も毎日やる!分かったか?」 「うんっ!」 いつの間にか上がった雨に、快彦達も昌行達の姿を見つけ、大喜びで准一に抱きついた。 嬉々として博子の待つ家路へと向かいながら子犬を抱え、楽しそうに談笑する一家。 剛「なあ、准。コイツの名前もう考えたの?」 准「うんっ!考えたで!オレの初めての弟やから、嵐ッ!」 快「何で嵐なんだよ!」 健「読者は皆納得してるよ」 昌「嵐か〜!オレらも呑み込まれないように頑張らないとな〜!」 准「よしっ!お前の名前は今日から嵐やで!」 嵐を高く抱え上げ、准一が叫ぶと元気よくワン!と吠える。 そして見事坂本家の一員になれた嵐くん。健や剛、快彦が足元でじゃれまくる嵐を追っかけまわす。 その様子を微笑しながら見ていた昌行に、准一は話し掛けた。 「父ちゃん、ありがとな」 「まっ!しょーがねーべ。でもこれからは捨て子なんて二度と思うなよ!お前は正真正銘オレ達の息子なんだから」 「うん!でへへ〜!」 すっかり雨雲が消えた夜空に、綺麗な星が満天に輝いていた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 私なりにカッコイイ昌行父さんを演出したつもりだったんですが、どうでしょうねえ(あれで?)。 准くんは小学四年生の割には随分大人な言葉を発してたような気が…。 そういうツッコミは優しいVファンならしませんよね(笑)。でも犬を呼ぶとき「嵐!」は恥ずかしいかな…?(笑)
|