背後から、ぐっと肩をひかれた。
そのまま縋りつかれ、僅かに肩に力が篭る。
「このまま動かないでいて」
「なにか、あったのか?」
「…………」
問いかけに答えは返ってこなかった。
ただ無言のまま、ぴくりと彼の体が反応する。
ただそれだけでテッドはもうなにも問いかける気は失せる。
何も言わなくても分かるからだ。まんじゅう。
どうせ今回も、また、原因はそれに違いない。「僕は…がんばっていると思う?」
やがて零れた声は、テッドが思っていたよりももっと平静なものだった。
だが声だけで彼は推し量れない。
「なんで俺に聞く?」
「君だけは、本当の僕を知っているから。」ああ知っているとも。
24時間365日まんじゅうのことで頭がいっぱいのまんじゅう妖怪。
それがお前だ。「本当のお前は、誰にも見せられねえだろ」
テッドの言葉は静かだった。こいつにとってはまんじゅうこそが世界の全てだ。
自分たちの存在価値はまんじゅう以下だと知ったら、仲間うちで世の儚んだ末に身投げする奴が出るかもしれない。セトはまた問いを重ねる。
「テッドも、こんな思いをしてきた?」するわけ、ないない。
「お前と俺は、違うんだ」
「僕は…紋章を持つことが、こんなにも苦しくなるなんて思ってなかった…」
ギリ、とテッドの上着を握る指に力がこもる。そりゃ、紋章のせいで昏倒したらまんじゅうを食い逃すもんな。 んで、そのたびに布団の中でマジ泣き。
108星のみなさん違いますよー。アレは紋章に苦しんでいるんじゃなくて、まんじゅうが食えない慟哭です。「お前……大丈夫か?」
あたまは。
とツッコミたいがやめておこう。このまま背後から首を締められるのは遠慮したい。「もしかしたら僕は、君と一緒にいちゃ駄目なのかもしれない。僕と一緒にいることは、君には辛いのかもしれない」
「俺は、お前といても苦しいとか辛いとか、そんな事は思ったことねえよ」だって俺はまともですから。 お前と違ってまんじゅうが食えなくても命に別状ありませんから。
答えて俯いた。
「嘘じゃない。……信じろ。」
「……信じているし、知ってる。」
セトは小さく苦笑して、テッドの肩に頬を摺り寄せる。
本当は、傍にいることで苦しいなどと考えたことはないだろう。
セトにとって自分は共に居ても気を張る必要がない相手なのだ。俺が好きなのは特上マグロ丼であってまんじゅうではない――と、くどいほど言ってあるのだから。
「大丈夫だ、セト」
ゆっくりと、テッドはまた口を開いた。
「テッド?」
「俺がなんとかしてやる」今度まんじゅうが売り切れそうになったら、とりあえず俺が買っておいてやる。(そして倍額でこいつに売る)
「だけど……」
「だからお前はこれ以上、無茶なことはするな」
さっき俺の部屋に来るなり、八つ当たりしてまっぷたつに叩き割ったテーブルの残骸を見ると、しみじみ思う。
明日もまんじゅうを食えなかったら、今度はこの巨大船をもスクラップにしかねない。
いや、する。絶対に、する。まんじゅうのためなら、こいつはきっとヤる。賭けても良い。「…………うん。」
小さな返事は、それでもテッドの耳に届いた。
さらりと、左頬に触れたセトの髪が流れる感触が心地よい。
そのぬくもりを背中や肩に感じながらも、自分を包む手の、黒く渦巻く紋章からは目を離すことが出来なかった。こんなまんじゅうバカに取り憑くとは、罰の紋章ってほんと気の毒。
抄さんとのコラボレーション作品でございます。 まともな文章は抄さん作。まともじゃない文章はけきょ作。 絵はけきょ作。
素直に萌えておきたい人は、このページを反転なんてさせてはいけません。決して反転だけはしてはいけません。