◆「ハッチー その生と死を見つめて」◆
蔵王スキー場には楽しいコースがある。
その名も 「初心者殺し」
初級者ゲレンデって看板に書いてあって、たしかに見た目はなだらかな傾斜で安全そうに見えるのに、実際リフトに乗って上がってみると、リフトから降りた直後30メートルくらいが詐欺みたいに傾斜がきついところがありまして、うっかり下の方のなだらかさに騙されて上がって来ちゃった初心者が、のきなみ急傾斜の部分で転がるという、まあそういうコースでございます。
そんで何が言いたいかというと、本日のゲレンデにおける初心者とはすべからくハッチーたちの事を示すわけなのでそのコースはまさに「ハチ殺し」になってました。
あっちにもこっちにもわらわら転がるハッチーたち………
っちゅーか、初心者たちが転がっている姿なら今までだって何度も見ている。
ついでに言えば、わしもコケたことがある。
でも転がっている奴らが全員、黄色くて黒くて白い同じ色ってのがこんなにも可笑しいとは思わなかったんだよ!!!(床ばしばし!!)
しかも全員サックリとは起き上がれないものだから、ウゴウゴもがいているのがなんとも愛らしく悲しく、そして可笑しくて無情にもどんどん進んでしまうリフトが現場を通りすぎてゆくのをこんなにも恨めしく思ったことはない。
「ハチ、集団で殺されてるね……」
「教官達、こっちに背中向けてるけどあれぜったい楽しんでるな……」
「ああ……賭けてもいいね。」
「見て見てっ!滑落ハッチー!!」
「見事! ( ̄◆ ̄ )」
―――悪いクマンバチたちも居たもんである。
しかし、蔵王の名物ゲレンデといったらそれはもう「横倉の壁」、これしかない。
どんなコースかというと、距離的にはわりと短い。
ただ最大傾斜が38度ってだけのことで。
ハッチーたちが群れていた初心者ゲレンデの傾斜は10度〜12度、ハチ殺しで20度くらいという傾斜を思えば、横倉がどれほどの絶壁に感じられるかお分かりいただけるだろうか。(解らねえ奴は一度落としてくれてやる)
コケたが最後そのまま下まで滑落できる魔の絶壁、横倉。
壁は我々スキーヤーたちに語りかける………
「俺を倒してから世界を狙え」
そんな壁なので、ここに挑戦するスキーヤーにはもれなく賛辞が贈られる。壁の下にはギャラリーが待ち構えており、パラレルやウェーデルンで見事に滑り降りてきたスキーヤーには拍手が、そして途中から下まで豪快に滑落してきたスキーヤーにはその倍以上に盛大な拍手が惜しみなく与えられるのだ。
しかし、今日はその壁に……っ
壁に…………っ!!
「りん君!ハチが埋まってる!!!\(゜ロ ゜‖ )」「何ィ!!??(‖゜ロ゜)」
壁には若気の至りで無謀にも壁にチャレンジした数匹のハッチーたちの埋もれた姿があった。
そう………彼らは壁を降りることも出来ず、ましてや登ることも出来ず、その場所にしがみつきただただ重力の法則が自分達を下まで引き摺り落としてくれるのを待っている、そんな状態だ。壁に点々と転々しているハッチーたち………君たちのことは生涯忘れないから潔く散れ。
ちなみにりぎちゃんは上手なので横倉に挑戦しに行った。(横倉でも転びませんよこの人は)
その時のレポートが届いているのでご紹介しよう。
「あのね、行ったらハッチーたちが2、30人居るのよ。みんな挑戦するんだーっ若いなーって思ったんだけどよくみたら全員スキーは履いてないの。でもって良く見たら、入口のところにスキー板がズラーーーーっと並んで置いてあって、全員壁の間際までいってそこから下を覗いて “下が見えねえ…” とか “嘘だ…夢だ…” とかつぶやいて戻ってきてた。」
以上、貴重な現場レポートでした。
次回は壁に埋まっているハッチーたちの元に感想を聞きに行ってもらいたいもんである。
ちなみにこのレポートを聞いて 「なんで突き落として人生経験を踏ませてやらなかったの?(^▼^)」 とか言った某どっかのHPの管理人がいたとか、それに対して某友人が 「それもそうだね、ゲレンデにいるかぎり絶対面は割れないし、逃げきれるしねえ♪ゞ(゜▼゜)」 と答えたとかなんとか言い伝えられているが真相の程は定かではない。
ところでりぎちゃんが横倉を征服しているころ、わしは隣りの迂回コースを上手いふりして滑っていた。横倉を降りられないわけじゃないが、必死な姿をハッチーたちに見られたくないクマンバチのささやかなプライドだ。
で、降りてきた場所にはやっぱり教官とその周囲に群がるハチたちの群れがいたんだが、わしはこっちの会話が聞けたのでレポートしよう。
ハチ1「(横倉の壁を見上げつつ)なんだここ〜〜(゜▼ ゜‖)」ハチ2「うえ〜信じらんね〜〜(‖゜ロ゜)」
教官「何を言っている、お前たちも明日はこれを滑るんだぞ?」
ハチたち「!!!!!!!!!???? \(゜ロ ゜‖\)」
先に滑り降りていくわしの背中には、ハッチーたちの阿鼻叫喚が聞こえてきた。まったく、指導教官とは良い職業である。
いや、でも滑って降りることは出来ないだろうけど転げ落ちることは出来ると思う。
たとえ上から下まで数十メートルを滑落したとしても新雪だから怪我はしないだろうし、そういえばさっきも君たちの仲間のハッチー数匹がチャレンジして玉砕していたけど(多分)生きて降りてきていたし、万々が一なにかあったとしてもきっと教官が骨くらいは拾ってくれるさ。
見物に行けないまま東京に帰らねばならない我が身が恨めしいことこの上ないが、でも哀しむことはない。
今年のハッチーはもう滑れるようになってしまっただろうが、来年は新しいハッチーたちがゲレンデで転がりにやってくる。
これはもう確定的未来だ。(それを思えば、指導教官は毎年さぞや楽しかろう)
だからこの場を借りて、さんざん笑かしてくれた彼らにエールを送ろう。(いやがらせかお前)
がんばれハッチー、まけるなハッチー!
蔵王は来年も君たちを待っている!!!
(くどいようですがこういう大人にはならないように)
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