楽しい話37

旅のおもいで


今年の夏休み、わしは友達の某Rことりぎ子さんというイキモノと一緒に瀬戸内の海を見に行った。

瀬戸内の海はきれいだ‥‥‥だから泳ぎに行った。

丁度、泊まったホテルの前には美しいプライベートビーチが広がっている‥‥‥

そして海からあがったら、そのままホテルの専用風呂に入れると言う素晴らしい仕組み。

そういうわけで、海から上がったらそのまま御風呂にはいるつもりでビーチに着替え用の浴衣を持っていった。

そして海では手が届くくらいのところに浮き輪で浮かんでいたわしを海坊主よろしく浮き輪に手をかけ無理矢理沖合いに連れ出した挙句まいてたパレオが滑り落ちた感触で本当の悲鳴を上げてただでさえ怯えていたわし心臓を止めかけその御礼に浜辺に上がったあとは穴を掘り砂に埋めて上から固め‥‥‥(以下略)

まあ、この様に二人して平均的に楽しくすごし(謎) ホテルの風呂に戻ってきた。

重たい水着を脱ぎ、シャワーを浴び、さっぱりしたところで新しい浴衣に袖を通す。

前を合わせ、襟足を整え、帯をきゅ!と結び、日本人らしい格好になったわしの横で、りぎがポツリと言った。

りぎ「アタシ‥‥‥ばか‥‥‥」

わし「あ?」

りぎ「帯、忘れた

わし「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥(゚ロ゚)

浴衣なのに帯なし、浴衣なのに帯なし、帯なし、帯なし、帯なし‥‥‥(リフレイン)

帯を持ってきてあげようかと社交辞れ‥‥いや、親切に言ってみたのだが、

りぎ子さんは御部屋に戻るだけだから大丈夫といって帯なしの浴衣を着た。

着たっちゅーより、羽織った浴衣の前を合わせているだけ。

聞き様によっちゃ大層色っぽい状態である。

だが、浴衣の帯がないというのは洋服のベルトがないのとはわけが違う。

本人にはわかりにくいが後姿をみたら帯をしてないのなんてチョンバレだ。

なにも着ずコートをはおって電柱の影にかくれているアブナイおじさん状態だ!(!?)

だから親切で優しい親友のわしは言ってあげた‥‥‥

「まるで変態の様だね。(笑顔)」

‥‥‥と。



で、途中で幾人かにすれ違いながらもなんとか部屋に戻ってきたりぎ子は、早速帯をしめ、ほっと一息。

その横でバレなくて残念だったなんて少しも思っていない友情厚いわしは、水着やらタオルやらの荷物整理。

水着を洗い、タオルを干し、さて御茶でも煎れるかと思ったわしの横で、またしてもりぎがポツリと言った。

りぎ「アタシ‥‥‥ばか‥‥‥」

わし「あ?」

りぎ「パンツ落としてきたかも。

わし「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥(゚ロ゚)

パンツ落としたかも、パンツ落としたかも、パンツ落としたかパンツおとパン‥‥‥‥‥(リフレイン)

いや、でも、わし、キミの後ろを歩いてきたけど、なにも落としてないと思うよ。

もっとも落としたとしても、拾ってあげる気なんてないけどね‥‥‥(微笑)

そう言って安心させてあげたかったんだが、その時のわしは声も出ないほど笑い転げて呼吸困難に陥っていた。

結局、よくよく探したらちゃんとタオルにまきこまれて部屋まで持ちこまれていた。

よかったじゃんと一緒に喜んであげるわしに向かって、りぎは眩しい笑みを浮かべてこう言った。

「(パンツに)名前書いてないから落としても届けて貰えないもんね。(笑顔)」

‥‥‥と。

届けて欲しいのかい‥‥‥?

なあ、本当に届けて欲しいと心底思っているのかい‥‥‥?

キミがそれをどんな顔をして受け取るのか、俺は心底、見てみたいよ。

思わず瀬戸内の青い海に視線を投げてしまったわしの後ろで、無邪気なりぎ子の話し声が続いていた。

「パンツ落とすのと、浴衣の帯忘れるのと、
どっちがヤバイかなあ〜(笑顔)」

どっちもどっちだね‥‥‥

というより、究極の二択だよね‥‥‥‥‥ふ‥ふふ‥‥(遠い目で微笑)

どうしてこいつはこんなに愉快なんだ‥‥‥

波にきらめく眩しい太陽の光に、目頭が熱くなっていった午後だった。