朝の通勤ラッシュ時というのは、まさに一刻・一便を争う血も涙も人情も常識もぶっとぶ魔の時間帯である。
ある日、そんな魔の時間帯でわしが電車を待っていた時の事だ。
私は出社時間がフレックスという高貴な身分にあるので、座っていける始発電車の到着を悠然と待つ間、電車の扉が開くや否や乗り込む連中に遅れじとホームに飛び出てくる乗客の皆さんと、猛然と車内に向かってタックルをかましながら乗り込む皆さんの一瞬の攻防を眺めつつ、今日は駆け込み乗車でおもしろい事をする人が出ないだろうかと視線を滑らせていた。
なにしろ人間性を失っている時間帯なので、他人の不幸は密の味。(謎)
駆け込み乗車し、鞄やら服の端をはじめ、身体自体を素敵なポーズでドアに挟まれたり、あと一歩、あと半歩足りずに閉ざされたドアの前で嘆き肩を落として列の後ろに去り行く人々を陰から微笑みながらウォッチングする事は、私にとって有意義な娯楽でもある。
だが、この日は違った。
ホームの階段を2段飛ばしで駆け上がり、流れる人々をかき分けながら電車に向かって猛然とダッシュしてきた若者のまさに目の前で、無情にもドアが閉められたその瞬間!
若者は電車に向かって主張した!
「俺が乗ってねーのに閉めんじゃねえぇっ!!!」 乗り遅れた全ての人々の気持ちを見事に代弁したこの言葉に、心からの拍手と喝采を贈る次第である。
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