恋愛論
誰の論理なのかは、追及してはいけません。
ルック 「最近の恋愛小説はスゴイ。」
タキ 「は?」
ルック 「 だから最近の恋愛……」
タキ 「二度も言わないでいい。あんまりにも気味が悪い発言を聞いたから聞き直しただけだ。」
ジョウイ 「ルックが恋愛小説を読むタイプにはとても見えないんだけど…」
タキ 「……当ててやろうか。暇だったんだな?」
ルック 「そうとも。」
タキ 「なるほど、ほんっっっっっとーーーうに死ぬほど超ど暇だったんだな。」
ナタク 「それ、面白かった?」
ルック 「最初に言ったとおりスゴかった。」
ナタク 「ええと、それって面白かったって意味?」
ルック 「ああ、おもしろかったとも。だからあらすじを聞かせてあげるよ。」
ジョウイ 「………拝聴しよう。」
ナタク 「つまり僕ら全員暇なのかな。」
タキ 「……たしかに最近は暇だ…世間は平和だし……人取って喰うわけにいかないし……(ぶつぶつ)」
ジョウイ 「プレミア級に物騒な独り言をつぶやくな!(汗)」
ルック 「僕が話すからには真面目に聞け、愚民ども。」
タキ 「あーはいはい、じゃあどうぞ。だが面白くなかったら喰うからな。」
ルック 「内容的にはありがち中のありがちネタだよ。イイ仲になって一周年という記念日を忘れていたのに腹を立て家を飛び出していった恋人を、相手がが追いかけてアレソレドレミで仲直りってやつ。」
ジョウイ 「あらすじだけ聞くと、別に面白くも何ともなさそうだけど。」
ナタク 「アレソレドレミ?」
ジョウイ 「ええと……あれやらこれやらナニやらってこと。(^^;)」
タキ 「活字や映像にすると年齢制限引っ掛かり行為。」
ルック 「そうともいう。」
ナタク 「???( ゜▽゜)」
ジョウイ 「……いいんだよ、解らないなら解らなくても人生に影響はないから。」
タキ 「知っているんだろうに解らないのがナタク君らしいな。ほんのすこ〜〜ぅしだけ同情してやるよ、ジョウイ。」
ジョウイ 「やかましい!でっかいお世話だ!」
ナタク 「????(゜▽゜ )」
タキ 「しかし、誕生日みたいに日付がきまっているならともかく、恋人一周年ってどういう基準なんだろう。」
ルック 「祝、初えっちの日じゃないの?」
タキ 「なまなましいなァ。(大笑)」
ジョウイ 「誰しも言いよどむセリフをサラリと言ったな、ルック……」
ナタク 「でもそんなの普通は覚えてないよねえ。」
ジョウイ 「ええっ!?(゚▼ ゚‖)」
ナタク 「………なに?」
ジョウイ 「…い………いや、別に…そっか…ナタクは…そうなんだ…(涙)」
タキ 「そこ、生々しい会話をするなら余所でやれ。」
ナタク 「なに黄昏てんのジョウイってば〜??」
ジョウイ 「いいんだ……そっとしておいてくれ…。」
タキ 「……あれはいつもの病気だからほっとこう。それで?」
ルック 「物語は、今日は二人が恋人同志になった記念日だからお祝いをと思っていたのに相手はそれをすっかり忘れていてたところから始まる。ちなみに季節については "夏の暑さも去り、夜は冷えこむ" と描写してあったので秋と見て間違いないだろう。」
タキ 「…季節とシチュエーションは解った。それで?」
ルック 「記念日を忘れていたことに怒って、片方が家を飛び出すわけさ。こう、バターンと威勢良くドアを開いて。」
タキ 「そんなことで家出か…平和な人生を送ってるんだな。」
ナタク 「でも、それってタキさんちみたいにドアだったらいいけど、引き戸だったらおかしいよねえ。」
ジョウイ 「え?」
ナタク 「えと、だから、大事な日を忘れるなんてばかっ!って家から飛び出すんでしょ?」
ルック 「まあ、そういうことだね。」
ナタク 「だから叫んで飛び出す時に、ドアをバターンならいいけど引き戸だとガラガラ〜って横スライドになるから、飛び出す勢いが途切れるなあと思って。」
タキ 「………ナイス発想だ。」
ルック 「それは考えたこともなかったね。」
ジョウイ 「どうしてそんな事を思い付くんだよ(笑)」
タキ 「――で、その続きは?」
ルック 「ああ。そういうシチュエーションの場合、大抵お約束で外は雨だ。」
ジョウイ 「うん、まあ演出としてはありがちだ。」
ナタク 「わざわざ雨の中を出て行くなんて変なひと。」
ジョウイ 「それくらいショックだったってことを言いたいわけだよ。」
タキ 「相手が日にちを忘れてたって程度のことがか?」
ジョウイ 「参考までに聞くが、たとえば自分の誕生日なんかをグレミオさんが忘れていたらタキはどうする?」
タキ 「許さない。」
ジョウイ 「………………………………お前はそういう奴だよ。」
ルック 「どのみち普通の神経じゃないことは確かだね。」
ジョウイ 「…ほんとに言いにくいことをズバっというなあ、君は。」
ルック 「褒め言葉だね。(サラリ) それで家出した方はわざわざ肌寒い季節の、しかも雨の中を走っていく。走り去っていく先は街の外にある小高い丘だ。」
タキ 「……別にそれは良いんじゃないか?」
ルック 「街の外の小高い丘だよ?」
タキ 「……だから?」
ルック 「街の外まではマラソン。更に丘というからには坂だ、登り坂。」
ジョウイ 「………駆け上がるのか……すごい体力だ。」
タキ 「傷心の女性がすることじゃないな。」
ナタク 「マラソンとか 山登りしてるひとってむちゃくちゃ前向きって感じがする。」
ルック 「同感だね。」
タキ 「前向きで頑丈でパワフルで意気軒昂な傷心のヒロインか。」
ジョウイ 「……凄いな。」
タキ 「ああ、敵にはしたくないタイプかな。」
ルック 「その丘にはてっぺんに目印になるような大きな木があって、こういう場合はたいていその木は二人の想い出の場所とかいう設定になっている。」
タキ 「愛を告白しあった場所とか?」
ジョウイ 「またありがちな設定を。」
ナタク 「でもってその木って桜とかで、奇麗な花が咲くやつだよね。」
ルック 「そうそう。そして駆け上った丘の上で、夜空の月を見上げながら ”こんな大事な日を忘れるなんてひどい……” とかなんとか呟くわけだ。そこに追いかけてきた恋人が登場する。」
タキ 「恋人も丘を駆け上ってきたのか……二人揃って元気なもんだ。」
ジョウイ 「……ちょっとまて。さっき雨が降ってるって言わなかったか?」
ルック 「言った。」
ジョウイ 「じゃあなんで月が出ているんだよ。」
ルック 「きっと月のきれいな雨の晩だったんだな。」
ジョウイ 「あるかそんなの!」
ルック 「御都合主義という便利な単語が世の中にはある。」
タキ 「フィクションと現実を同じ土俵で考えるお前の頭が心配だ。」
ジョウイ 「お前と一緒にいると僕はいつでも自分の身が心配だ。」
ナタク 「……何の話??」
ルック 「脱線組みは放っておこう。でもって、その木の下で ”そういえば初めて告白したときも桜が咲いていた” とかなんとか言ってるうちにあっさりと仲直り。無論、作品中では ”満開の桜がよりそう二人を見つめていた” と書かれる。」
ナタク 「はじめに季節は秋って言ったのになんで桜が満開なのかな。」
ルック 「さあ、なぜだろうね。」
タキ 「気合で咲いたってことでヒトツ。」
ジョウイ 「いいのか、それで…。(遠い目)」
タキ 「御都合主義を悩んだって仕方ないだろ。 その続きは?」
ルック 「するといきなり雷雨が降ってきて、慌てて森の木の下に潜り込み、うち捨てられた感じの山小屋で雨宿りすることになる。」
ナタク 「さっきまで月が出てたのにいきなり雷雨だなんて、折りたたみ傘が手放せないよね。」
タキ 「…そういう発想にいく君は、本当に大物だよナタク君。」
ジョウイ 「天候の不条理はこの際無視するとして、丘の上に森があって山小屋があるのは問題じゃないのか?」
ルック 「だから満開の桜の咲いた月のきれいに見える秋の雷雨の夜に、鬱蒼とした森が茂って山小屋がある小高い丘の上で愛を語らっていたんだろう。」
ジョウイ 「有りかそんなんっ!」
タキ 「有り。」
ジョウイ 「即答しやがったな、この妖怪。」
ナタク 「丘の上の小屋を山小屋って言っていいのかなあ…?」
ルック 「それもそうだね。山にあるから山小屋。森にあったらきこり小屋。とにかく屋内に入ってみると、そこにはちゃんとベッドか毛布があって、蝋燭とかもあって、しかも薪まで用意されてるわけだ。」
ジョウイ 「……それば誰かの自宅というべきじゃないのか?」
ナタク 「でもさあ、その小屋に人はいないんでしょ?」
ルック 「古びた小屋って書いてあったし、大体人がいたらナニも出来ないだろ?」
ナタク 「ってことは、無人の小屋なんだから普通は埃だらけで、家具とかシーツとかだってカビが生えてて、薪も腐っててネズミとか蜘蛛とかがわらわら住み着いてて不衛生なのが普通だよね。」
タキ 「尤もな言い分だ。」
ルック 「でも、その話の中ではベッドには何故か清潔なシーツがかかっていて、毛布は干したのようにふわふわしていて、薪も良く燃えていたな。」
ナタク 「誰かが手入れをして掃除をしている小屋を、うち捨てられたと表現して良いんですか?」
タキ 「僕に御都合主義の法則を確認されても困るんだけど。」
ジョウイ 「僕が法律とかほざいてる奴が何を言っているんだか。」
ルック 「言おうが言わなかろうが、そんなこんなで火をおこし、濡れた体を乾かして、窓辺に寄り添いながら月明かりの中で愛を確認すると、こういう段取りを踏んでいったかな。」
ジョウイ 「………もう突っ込みたくも無いがあえて突っ込ませてくれ。」
ルック 「どうぞ。」
ジョウイ 「月明かりがあるってことは、雷雨はどこに消えたんだ?」
ルック 「だから桜が満開の秋で局地的な雷雨の中で月がきれいに見える夜なんだろ。」
ジョウイ 「……もはや言うべき言葉が無い。」
ナタク 「御都合主義ってすごいんだね。」
タキ 「その御都合主義のおかげで遠慮なくコトに及べるわけだ。」
ルック 「そういう場面を書かないと方手落ちというか、そこが売りだし。」
ジョウイ 「そりゃ年齢制限付の小説ってうたってるからには、そこが無いと逆に詐欺なんだろうけどさ……」
ルック 「マラソンと山登りをした後にコトに及ぶとは化物みたいな体力だね。」
タキ 「このカップルも普通じゃないみたいだから、大丈夫なんだろう。」
ナタク 「でも……ベッドとかシーツとか、使ったあとってちゃんと洗ったりするのかなあ…」
ジョウイ 「…………は?」
ナタク 「使ったなら後片付けをしていくのが礼儀だよねえ。」
ジョウイ 「れ……礼儀っていわれても……いや、…そうなんだけど。」
ナタク 「だって洗わないどいたらそれこそすぐカビカビってなっちゃうよ?シーツって基本的に毎日代えるものでしょ。何枚かあるならともかく、それだって雨の日が続くと洗い物の渇き具合との兼ね合いが難しいってグレミオさ……もが」
タキ 「…………………ナ〜タク君は本当にたま〜に本気で喰っちゃいたいくらいばか正〜直で隠し事のない素直〜な良い子だね〜え。」
ルック 「………………あのさ、バレてないとでも思ってるわけ、アンタ。」
タキ 「当局からのコメントは控えさせて頂く。」
ジョウイ 「………………星が奇麗だなあ。」
ナタク 「ほし?今夜は曇りだよ?」
ルック 「そして次の朝には、小屋の前に流れている小川で戯れてから帰宅して仲良く暮らしましたとさ。めでたしめでたし。はい、これで物語はおしまい。」
タキ 「……今、むちゃくちゃ強引に話を戻したな、お前。」
ルック 「僕のせめてもの思いやりだ。」
ジョウイ 「………ちょっとまて。」
ルック 「まだなにか?」
ジョウイ 「小屋の前に川があったのか?」
ルック 「小屋の前にはきれいな小川が流れているって書いてあった。」
ジョウイ 「それって丘の上に小川が流れているってことだろう? 物理的にオカシクないか?川が丘をかけ登って流れているってことだろう?」
ルック 「ああ。きっと坂を駆け登る小川なんだろう。」
タキ 「………根性の入った川もあったもんだ。」
ジョウイ 「しかし、なるほど。聞いてみたら良く分かったよ。確かにこれはめったにお目にかかれないほどスゴイ小説だった。」
ルック 「そうだろう。極めつけは作者がそれをギャグのつもりで書いてないってところかな。」
タキ 「……シリアス?」
ルック 「そう。」
ジョウイ 「………本気で?」
ルック 「そう。」
ナタク 「??ルックの話を聞いてると、僕は真面目な小説だと思うんだけど。」
ルック 「そのとおりだよ。」
タキ 「…………そこまで自分の世界に酔えるって才能だな…。」
ジョウイ 「どんな本だったんだい?このスバラシイ恋愛小説は。」
ルック 「解りやすく言うと異次元にある紙のない本のなかに。」
ジョウイ 「はあ?」
ルック 「目に見えない電子世界の海の中の書物。」
タキ 「……どこの文明の話をしてるんだ、ルック。」
ルック 「いいじゃないかどこだって。解ったところで見ないほうが……君たちの精神安定のためだと思うし。」
ジョウイ 「………………………どういう意味だ。」
ルック 「知らない方が幸せってことが、世の中にはある。」
ジョウイ 「なんだその物言いたげな視線はっ!!っていうかなんで僕とナタクを見るっ!!??」
ルック 「べつに。お幸せにって思って。」
ナタク 「うん、しあわせ。(^▽^) 毎日ごはんが食べられるから♪」
ジョウイ 「………………………………そうだね。」
タキ 「はー………お茶が美味いなあ。」
誰の恋愛論でもないという話でした。