始まりはあなた
これが真実の幻想水滸伝3。 隠された歴史の裏側がいま暴かれる。









時はデュナン統一戦争の終結から数年後。

あいかわらず各地で飄々と生存しているタキとナタクとジョウイとルックは、そろそろほとぼりも冷めてきたのでくだんの関係者を隠密で訪ね歩くことで………ようするに、どこの国も平和で退屈なので、衣食住の保証が付いてる暇つぶしをしていた。

そして今回の旅で辿りつたのはカレッカの地。

ここにはかの有名な軍師、レオンシルバーバーグが余生を送っている町である。

その彼の家の前に立ちならぶ4つの影。



「さて、レオンは元気だろうか。」

「元気じゃないと困るじゃないか。ここまで訪ねてきたのが無駄足になる。」

「もういい年だろ。生きてるといいけどね。」

「レオンって誰だっけ??」



会話になってるようでなっていない会話をしつつ、一番レオンの世話になったであろうジョウイが代表として「こんにちわ……」と、そ〜〜〜っと扉をあけて伺ってみると、家の中には年はとったものの一目で彼だと分かるくらいには変わっていないぶっちょう面の鬼軍師が――――

「アルベルトちゃーん、爺ー爺ーでちゅよ〜〜アバババババ〜♪ ヘ( ̄▽ ̄ヘ)(ノ ̄▽ ̄)ノ」

「シーザーちゃーん、いないいない(/▼\) ばあああああああ〜〜〜★ Ψ(`▼´)Ψ」

「お父様! あんまり子供たちを甘やかさないで下さい!!」

「そんなことは言っても孫はかわええんじゃ〜ちゅっ!ちゅっ!うちゅ〜っ!!」





――――――時が、止まった。





「「「………………」」」

僕らはいったい何を見てしまったんだろう。

「………夢だ。」

「………幻だ。」

「………僕は何も見ていない。」

そう、これはただの白昼夢。

必然的にこれはなかったことにしようと無言で堅く結束した3人は、そのままそ〜〜〜っと扉を閉め、180度回れ右して今見た景色を脳裏から永遠に抹殺することにした。

それで済むはずだったのだ、彼らの予定としては。

だがしかし、この4人の中には超天然ボケ、予測不可能因子が一人含まれていることを他の3人は失念していたのである。

その危険人物はそ〜〜っと引き下がるジョウイたちの背後から颯爽と登場した。

「あ!思い出した!! あの時ジョウイのとこにいた軍師さんだよね!! こんにちわーーー!!(^▼^)」



ばたーーーーーーん!!!


「「「ぎゃあああっ!!! ドアを開けんなあぁっ!!!!」」」




こうしてケイロニア国国王@出奔中の手によって、運命の扉は開かれたのである。







突然闖入してきたどこかで見たような少年たちにも臆することが無かったのは、さすがシルバーバーグというべきか、単に歳で反応速度が鈍ってきたせいか、そのあたりはどうでもいいがとにもかくにも彼らは再会してしまった。

「お久しぶりですレオンさん!その節はどうもありがとうございました!貴方がルカを裏切って密告してくれたお陰で僕たち勝てましたー!」

「ななな、なんつー挨拶をするんだナタク!(‖゜ロ゜)」

「ナタク君は本当にそう思っているから素直に言ってるだけだろ。」

「1人を18人がかりで袋叩きした挙げ句、弓矢で針ねずみにしたのに?」

「おおお!皇王どの!!! マクドール殿!!! 見て下され、わしの孫ですじゃ!!!」

ずずいと目の前に差し出される、生後1年くらいの赤ん坊と5歳くらいの少年……レオンは誰の話も聞いちゃいなかった。

かつての姿からはまったく想像できないのだが、引退し田舎に引きこもり世俗を離れた今の彼にとっては孫がすべてとなっているようだ。

孫、ラブ。孫、万歳。孫、サイコーである。



「わ〜〜、かわいいですね〜〜〜」

「おお!君はあのときの敵の軍主殿だな! いやいや、可愛いだけではなく利発な子なのだ! 」

「………大変だジョウイ。レオンが馬鹿になっている。」

「もう僕の軍師じゃないから馬鹿でいい。」

「こっちがアルベルトでこっちがシーザーです。アッくん、爺ー爺ーのお客さんにご挨拶しなさい。 」

「あるべるとです。こっちはシーたん。しーたんいっこ!アッくんはね6つ!! おかーさんはいっぱい!じーじーはもっといっぱい!」

「…………………………そう。」

「………………いっぱいなんだ……すごいねぇ……。」

「どうです、賢いでしょう!わはははははっ」

「「「………………………」」」

どない反応かえせっちゅーんじゃ。

思わず心の中で裏手パンチを繰り出す3人である。



「あら、お父様お客様ですか? いらっしゃいまし、今お茶を入れますからね。」

レオンをお父様と呼ぶところを見ると、あれは彼の娘なのだろうが………それにしても動じないじじい&おっかさんである。

「どーすんのさ、お茶を用意されちゃうよ。」

「どうもこうも、あそこで子供と戯れているナタク君をどうにかするのが先じゃないのか?」

「おーいナタクー一緒に外の世界に帰ろう〜……」

家に入ってしまった以上あとは一刻も早く出て行くタイミングを見計らうしかないのだが、その雰囲気を察することができない奴が1人いるせいで、どうにも身動きが取れない彼らは……

「さ、立っていないでお座り下さい。つもる話もありますし、いま娘に軽い食事でも用意させますので。」

「「「そういうことなら、遠慮なく。」」」

「ごちそうさまです!!(^▽^)/」


……単純に、食えるときには食えというサバイバルの鉄則を守るのだった。




非常識が服をきて歩いているような連中だが、衣食住が絡む限りグレミオの躾の賜物か、義理堅く且つ礼儀を守ることもできる。

しかしそうはいっても物事には限界があるわけで、この家の扉をあけてしまってからかれこれ3時間。

その間、ずーーーーーーーううっと目の前の骨抜き好々爺に、延々と孫の話をされているのである。

いかに一食の義理とはいえ、そろそろ営業用スマイルも理性の鎖もぶっ壊れそうだ。

「おいジョウイ、奴を止めろ。」

「お前が止めろよ、最初の軍主。」

「……ちょっと。あいつアルバムを持ち出してきたけど?」

「「アルバムぅ!!?? \(゜ロ ゜‖\)(/‖゜ロ゜)/」」



帰りたい。



これがこの時点での素直な気持ちである。

しかしこの時、ルックだけがなにかの視線をこの空間の中に感じ取っていた。

「………………なんだろう…」

別に敵意や殺気ではないのだが、どんなに精神的や肉体的に疲労困憊していても注がれる視線に気が付かないほど不用心にはなれない。

そして彼が視線の出発点を探そうと周囲を見回すと、それは通常よりとても低い地点からはじまっていた。

「………………」

「………………」

無言で見詰め合う、6歳の子供と外見17歳の若者の二人。

あたりまえだがルックに子供と視点を合わせて会話の水をむけてやるような思いやりなぞ装備されているわけがない。(装備?)

「ええと、アルベルト君だっけ。……この人になにか用事かな?」

仕方ないのでジョウイが話し掛けてやると、アルベルトは小さな手に大事そうに握っていた画用紙をルックに向けて差し出した。

「………………………………なに?」

「…………………これあげる。」

「?」

ルックが受け取ると、彼はテテテテと足音も軽快に二階にあがっていってしまい、取り残された大人たちは自然と彼の手元に残された手紙の中身に興味がゆく。

折りたたんである紙をガザゴソと開き、どれどれ?と覗き込む8つの瞳の先には、色とりどりのクレヨンで描かれた幼子の文字が並んでいた。



「きれいなおねえちゃんへ。
ぼくは、おねえちゃんみたいに、きれえなひとは、はじまてみました。
おおきくなったら、おねえちゃんのおよめさんにするので、およめさんになってください。
あるべると=しるばーばぐー」



ぶぼっ!!! ( ‖゜ロ゜)《《《

「………どう読んでもラブレターだな。」

「告白されてるぞルック。」

「わー。おめでとう〜。(^▽^)」

そりゃこんな幼児期の男女の区別なぞ、ゴツイか細いか・無骨か奇麗かくらいしかない。

ましてや本人がちょいとその気になれば、絶世の美女 (ルック本人談) に化けられる容姿である。

アルベルトの目にはルックが、柔らかい薄茶色の髪をそよがせ新緑の瞳と白い肌の楚々とした美少女にでも見えたのであろう。

それは無理はない。

無理は無いが、無理ではある。

イロイロと。



「…お姉さんね…そりゃ僕はそんじょそこらの美女より奇麗だけどさ。」

「ところどころ文字が間違っているし文章が稚拙だな。」

「6歳の子供に言ってやるなよ、タキ。」

「こういうのってずっと後までとっておかれると恥ずかしいんだよねー。あはは。」

このように微笑ましい笑いを提供してくれたアルベルトのお手紙だったが、一人レオンだけが馬鹿祖父ぶりを発揮して、発言と反応がオカシクなっていた。

「駄目じゃ駄目じゃっ!!まだ早いっ!! それにわしの孫はそんじょそこらの奴にくれてやることは出来ませぬ!」

「は?落ち着けよレオン。こんなのは子供の可愛い遊びじゃないか。」

「遊びとは何事ですかマクドール殿っ!これは将来に関わる大問題ですぞ!!」

「レオン。かつてハイランドで暗躍していた冷静沈着な貴方はどこに消えたんだ。」

「かつてはかつて、今は今っ! わしは孫の幸せを願っているだけ…っ!!!」



その時、レオンの背後でふわりと鈍緑色の布がひらめいた。

「アンタ、人間の会話が出来ないなら黙って――」

どがごん!!!

「―――寝てろ。」

優雅にな動作で乱れた髪を直すルックの足元には、床と抱擁を交すレオンの身体が横たわっていた。

あんな見事なカカト落としを見たのは後にも先にもないと、後にトランの英雄は語っている。

こうして「レオンさんはお話疲れでお休みなってしまいました」というむちゃくちゃ不自然な言い訳で辞去した4人は、「良いんですのよ、父はこれでも頑丈ですから〜。」という娘さんのとんでもねえ親不孝な挨拶に見送られて、再び旅の途についたのだった。

これからしばらくして彼らの消息は忽然と消え、再び歴史の表舞台に現われるのはざっと15年後のことである。







そして歴史は再び繰り返される。




「久しぶりだね、アッくん。」

「ア……アッくん……っって…なんでその呼び名を……!」

突如目の前にわいて出た見知らぬ若者に、幼年期のアダ名で呼ばれて驚かない…奴もいるだろうが、アルベルトは驚いた。

更に、彼はこの若者の容貌をどこかで見たことのあると感じたのである。

そう、そのままだったらデジャブーだの気のせいだの運命の巡り合わせ(?)だので片付けられたのだが、あいにく真実は彼の味方をしてはくれなかった。

目の前の若者は口元に楽しそうな笑みを浮かべると、懐からラミネート処理で完全保存版にしてある画用紙を取り出しアルベルトに見せ、「これ、覚えているかなぁ?」と尋ねてきた。

ニヤニヤしながらルックが懐から取り出した紙切れは、もちろん15年前のアルベルトのラブレター。

「そ…っ それは…っえ…っ??ってことは……ええええええええ!!!!??? (‖゜◆゜)

少年のピュアな淡い初恋の思い出が瓦解する瞬間である。

「きれいなおねえちゃんへ。 ぼくは、おねえちゃんみたいに、きれえなひとは、はじまてみました。おおきくなったら、おねえちゃんのおよめさんに……」

「うわああぁっ!!読むなあぁアっ!!!!(ごろごろごろ)」

子供とはいえ真剣な気持ちを綴った手紙を、大人になった今、とうとうと本人の目の前で朗読するとは実に楽し…いや、思いやりのない所業だ。

が、そもそもルックの辞書に思いやりという単語は載ってないので躊躇するべきことではない。

「出版されたくなかったら、手を貸してくれよ。ちょっと今度の暇つぶしには軍師が格好だけでも必要なんだ。」

「しゅ……出版……っ?」

「僕は顔が広くてね。トランのレパント大統領とかケイロニアのシュウ宰相とかにこれを渡せば、きっと“シルバーバーグ家の秘密”とかいう素敵なタイトルで君の家族を紹介してくると思うんだ。 あの鬼才レオン・シルバーバーグが “アッくーん爺ー爺ーでちゅよ〜〜ちゅ〜っ♪”………なんてやってた微笑ましいエピソード満載で。………それとも、小さいころの望み通り僕の嫁にでもしてあげようか?」

そう言いながら微笑むルックの顔は、アルベルトの幼く清純な記憶の中にある初恋の君と同じであった……救いようのないことに。



こうして一人の未来ある青年の運命は狂ってしまった。




そして時を同じくして別の場所では―――


「ちょっと行って知恵を貸してやって欲しい国があるんだけどな、シーたん♪」

「な……っなんでその呼び名を……!」

アルベルトの預かり知らぬところでは彼の弟が、こちらは赤い服を着て緑のバンダナを巻いた若者に同じような目にあっていた。



こうして幻想水滸伝3は幕を開ける。



ちなみになんでルックがこんな面倒くさいことをおっぱじめたのかというと、理由は3つ。

1.あのメンツの中で、僕だけ主役・準主役になったことがないのがムカツク
2.かといって天魁星になるのは無理なので、せめてラスボスをやるしかない
3.平和で暇。

とてもとても、世間様に公表するわけにはいかない理由だ。

こうして新たな歴史の幕は切って落とされ、ルックは望み通りラストステージで満を持してご登場あそばすわけだが、もともと彼の動機は 「ラスボスでもやってみるか」 程度なのである。

当然、巻き込まれたグラスランドの連中がどうなろうがハルモニアがどう動こうが、ルックにとってはそんなの朝マックのメニューチョイスよりどうでも宜しい問題だ。

よって国の統一だの同盟だのは彼の台本には最初から記されておらず、グラスランドは混乱するだけして終わってみたら元どおり、国はバラバラ、僕ら何にも変わっておりません――となったのも無理はない。

そして今回ルックの傍らにいつでもセラの姿があったのは、決して巻き込んだわけでも付いてこいと命令したわけでもなく、

「折角だし、僕の勇姿を映像で残しておきたいなあ。」

「ルック様!わたしカメラワークにはちょっと自信がございます!」

という彼女の自発的な立候補によるものであった。

「なに?君も一役かみたいわけ?」

「だって退屈なんですもの。」

「結構、阿鼻叫喚シーンも用意してあるけど良いの?」

「悲劇がなくてはドラマじゃありませんわ♪ほほほほほ。」

レックナートが育てたルックがああなのだから、ルックが手塩にかけたセラは当然こうである。

そして散々好き放題した挙げ句、レックナートの元に戻ってきたルックとセラのその後はというと――――

「ルック様、 この映像のBGMは“ラブストーリーは突然に”で宜しいでしょうか?」

「ああ、ついでに画像は30%ソフトでぼかして、儚げにしてみよう。」

「分かりましたわ。お任せ下さい!」

「二人とも、暫くお休みなさいな……もう50時間もぶっ続けで編集していますよ?」

「「大丈夫です、レックナート様。」」



こうして一連の事件をDVDに編集したあかつきには、いつものメンツを集めて一大鑑賞大会を開き、巻き込まれた不幸な方々を肴に楽しんぢゃったなんてことは、更に言えない事実である。









幻想水滸伝3補完完了