マシーネン・クリーガー CGムービー
作成における覚え書き。


by 高瀬発煙機



まず、そもそものコトのはじまりは・・・・


数年前、SF3Dがマシーネンクリーガーとして復活した頃のことです。
当時はweb上でマシーネンクリーガーを3DCGで再現するという動きがかなり広範にありました。
その頃、自分は既にCGに手を染めておりましたが、マシーネンクリーガー関連は一切描いておりませんでした。
しかしひょんなことから・・・数年前のワンダーフェスティバルにて、ナスロク氏を通じて、そういった方々が
モデリングされたデータやムービーを収録したCDを購入する機会があったわけです。
で、その時に「これでムービーを作ってみたい・・・」と思ったのがそもそもの始まりです。
まあ、自分も元々はホビージャパンで連載されていた頃からファンだったこともあって、
やはり一度はAFS、SAFSが動く情景を見てみたい(それも自分が作ったCGで!)・・・と思ったわけです。

というわけで、じゃあちょっくら作ってみんべえ・・・・と思ったことがそもそもの間違いの始まり(笑)でありまして・・・

当時、自分はマッキントッシュ版のLIGHTWAVE5.6(以下、LW)を使っていました。
当然そのマック版LWでムービーを作成することになるわけです・・・・で、最初にナスロクさんのAFSをLW用のOBJにコンバートしました。
(註 ナスロクさんのモデリングデータはSHADE(国産の有名3DCGソフトウェア)で作成されていましたので、LWに移植するには一旦
DXF経由でLWOに変換する必要がありました)
で、各々の部品を動作する部分ごとにパーツ化し、ヒト型としてアニメートさせるための設定をしてなんとか動かすことが
できるようになりました・・・・しかし、レンダリングしたところ、何かが足りない。
よく考えたら「パイプ」が無い!(動力パイプ・・・・俗に言う、モビルスプリングですね(笑))
それに気が付いた途端、呆然としてしまいました。

というのも、実はこれが大問題だったのです。
実はLWにはそういうチューブをなめらかにアニメートできるような機能は無かったのです。
仮にボーンとIKを使って制御するにしても非常に困難を伴います。
(IKのフリッピング現象などなど・・・<説明するのもムツカシイ)

となると、パイプを画面上に出さなければ良い・・・・のですが、マシーネンクリーガーという作品ではご存じのように
パイプは出さないわけにはいきません。
(そもそもMa.Kの模型に金属スプリングパイプを使うのは伝統というか、儀式のようになっておりますね(笑))
そういうこともあって、一旦自分のムービー計画はとん挫するのです(弱っ・・・)。
(まあ、他にも理由は多少(笑)ありますが・・・・)



で、2003年夏になって(いろいろばたばたありましたが)CG作成の環境がようやく整いました。
まずはmacからWINDOWSに変更、使用ソフトもLW5.6からLW7.5にアップグレード、加えてmessiah1.57を導入しました
(後にmessiah animeteにアップグレード)
このmessiahを使えばパイプの表現も可能で、他にもmessiahはヒト型のアニメーションに非常に有効なのです。
(というよりも、messiahを導入するためにwindowsに変更したわけですが)

というわけでようやく宿願のムービーにとりかかることにしました。
そしてコンテを軽く作成してから製作にとりかかりました。


で、出来上がったのがこのムービーです。



では、以下、完成したムービーの順を追ってメイキングを紹介していきたいと思います。

でわでわ・・・・







グスタフのパイロットですね。
ここではさほど特筆することもなく、顔をUVでマッピングしてることくらいかな?
顔に関しては大ざっぱなモデリングはLWで、微調整はメタセコイアで行ってます。
あ、他にはグスタフのボディマッピングもUVを使ってますね。
ちなみに、こういうメカ物はペインティングで意外と苦労しますね・・・
本当はplaner投影で簡単に済ませたいところですが、このようにアップになってくるとドットのアラが見えてしまうので、
なかなか一筋縄ではいかない・・・・
(planerでも悪くはないのですが、角度を変えて見ると画素の密度の違いでアラが見えるのです)





ドールハウスの射撃シーン。
(実はこのムービー全体を通して発砲してるのはこのシーンだけだったりします)

このドールハウスのモデリングはナスロク氏 (後に出てくるSAFSもナスロク氏作成です)。
前述のごとく、元のデータはshadeで作成されて、それをDXF経由でLWOに変換しました。
で、足周りはポリゴンモデルが無かったので無限軌道を含めてタミヤのT-55を買ってきて参考にして作成。
(つっても、実は自分がT-55を欲しかっただけなんですが(笑))
発射煙は各個にレンダリングして、後でAEで合成しました。
(このシーンではHVのスプライトモードを使っています)

なお、手前の草はサスカッチで作成してます。






上のシーンはmesiahが無ければ作成できなかったシーンであります。
(これ以降、パワードスーツやヒト型の物体はすべてmessiahで制御してると思ってくれて間違いないです)
完成画面だけ見てるとそうでもないのですが(笑)、IKやエクスプレッションが意外と複雑に入り組んでて
LW本体だけでは構成しにくかったと思います。
(それだけmessiah様々だったわけですが)
(それにつけても人物がかなりローポリゴンなんで冷や汗もの・・・)

ただ、それよりもこのシーンは演出的な部分の方が問題でして・・・・
実はこのご時世(未来の地球)でこういうトーチカに入って敵を待つ、という
シチュエーションが成立するのか?というのは大いに疑問なトコロですが、
(現在でさえ衛星からの監視とか無人ロボット型センサーや無人偵察機での監視など、様々なセンシングシステムがありますし、
本格侵攻の前に飽きるまで空爆というのも今や基本です)
そういうのはあえて無視して「マシーネンクリーガーではやはりコレダロウ」と考えての演出であります。

まあ、要するに気分だけは「史上最大の作戦」でのドイツ軍のトーチカ、なのであります。
(D-DAY当日のシーンですね)








突撃!という歩兵の戦争物では必須のシーン。

ここではSAFSの足のモーションは市販のモーションキャプチャー集から、腰の位置はmessiahのエクスプレッションで作成しております。
で、背景や前景の煙はHyperVoxelsで別個にレンダリング、後で合成してます。
(ちなみに、煙が黒すぎなのに注意・・・・普通、これくらいの煙は原油施設を攻撃しないと出ないんですけど、
あえて無視してマックロにしてみました)
でもって、懸案だった動力パイプのモーションはスプラインとボーンIKを併用したもので作成しております。

ただ、そういう技術的なことよりも肝心のSAFSの走るテンポがちょっと遅いんですよね・・・(泣)







立ち上がるグスタフ。

というか、この辺からパワードスーツの動きはウソ大爆発になっております。
実はグスタフはこういう動きができません。
(模型を持っていればそれらは簡単に検証できるでしょう・・・そもそもしゃがめないですよね?)
というわけで、この動画も実はグスタフの上半身と下半身を別々にレンダリング、
AEでグスタフの下半身のフッテージの上のレイヤーに上半身のレイヤーを重ねています。
そうでないと腰の左右のバルジに太股がめりこんじゃうわけですね。
(実はひざの間接の裏側もめり込んでますけど、カメラのレイアウトでごまかしてます)
で、後のシーンも基本的にはそーいうウソばかりで押し通しております、はい。






立ち上がるPKAs

このシーンもmessiah様々の場面です。
PKAにはそれぞれIKを仕込んであり、腕のIKでは簡単なエクスプレッションを組んで
動いている最中にIKのターゲットのペアレント対象をワールド座標から自分の上半身に徐々に変更して
動作を自然に見せるようにしてみました。

でもってPKAからはらりと落ちるカバーはMDで作成、MDDファイルを作成してそれらを
タイミングをずらしながら各カバーに適用しました。
(ただし、このようなカバーが果たして実戦中で効果があるのかどうかは疑問ですが
ムービー中では演出的効果を考えて使用してみました)






クレーテとナッツロッカーの出撃シーン

ここではクレーテの歩行モーションに悩みました。
一体どのように歩行しているのかが謎なので、かなり手探りで作成しました。
その試行錯誤の結果がアレということで・・・

ちなみにクレーテは一旦モデリングした後に各々の部品をグローバルイルミネーションレンダリング、
その結果をUVにベイクしてピクチャーマップに書き出し、テクスチャーマッピングの補助として使っています。

後はクレーテ、背景、ナッツ、影、スモークは全て別個にレンダリングして、最後に合成しています。
その分手順が多かった為に
背景部分に人物や整備塔、ハシゴ、その他整備車両などをを配置するだけの余裕がなかったのは残念です。

(ちなみに、つい先日まで
クレーテクローテと呼んでいたのは絶対の秘密






で、なんだかんだでラストカット・・・
この辺になってくるとCGキャラの動きよりも煙が一苦労です。
無論、煙はすべて別個レンダリングして合成しているわけですが
ここまで煙の数が多いと合成のアニメーション付け(透明度の調整など)もなかなか大変です。
それに加えて「これじゃ駄目、煙の形からやり直し!」と思っても
ボリュームレンダリングは再レンダリングに時間がかかるのがネックですね。
とは言え、煙を入れると入れないでは格段にリアルさが違ってくるので、やはり省略するわけには
いかない・・・・



ちなみにこのシーンでのパイロットの「喋り」はモーフィングではなく、顔にマッスルボーンのリグを
仕込んで喋らせています(画面からはわかりにくいですけど)。
(一応、パンツァーフォー!と言っております・・・つっても戦車隊がどこにいるのかわかりませんが・・・・<というか、ナッツは既に先行してますな
ついでに、途中でディスプレイ越しに喋ってるのは「全機偽装解除」と、
日本語で言っております<こら)
ここの「喋り」は少数のIKポイントを動かすことで多くのマッスルボーンを一度に動かしています。
そうすることでモーフィングよりもダイナミックな動きが表現できます。
(モーフィングの場合、動きが直線状になってしまうので平板に見えてしまうことがあるのです)
messiahの場合、このようにIKを多重に組んでも平気で動いてくれるのでいいですね。




というわけで一応、なんとか形になったムービーです。
本来はファイアボールとかエディ・アムゼルや航空兵器なども登場させたかったのですが、こちらの
エネルギーが切れてしまい、泣く泣くカットしました。
また次作があればそのその時にでも・・・・と思っております。


まあ、それでもSF3Dの頃は高嶺の花だったプラモが(自分にとってはあの値段はとても高かった・・・)
手元で立体映像となって動いてるのはなんとも言えない気分がしますねえ。
しんどくもありましたが楽しくもあった製作期間でありました。



高瀬発煙機 12/03/2004 記
http://park16.wakwak.com/~dreamboy/dreamboy2.htm



尚、今回のメイキングに関してはナスロク氏から書いた方が良いとのことを
助言を頂きましたので、このような形で作ってみました。

楽しんでくれれば幸いです。
それに加え、今回の作品への自身のCGモデル使用を快諾してくれたナスロク氏に多謝です。


補記。
さて、ひっそりと公開していたこのムービーですが、結構たくさんの方に見ていただいたようで、
アリガトウゴザイマス。
高瀬もヒジョーに喜んでおります。厚く御礼申し上げる次第でアリマス。

で、その際にありました質問、疑問点について・・・

一番多かったのはクレーテがぴょんぴょん跳んでいるのはちょっと、と言うご意見です。
実は私も気にはなっていたのですが、今回はあえてああいう風にやっております。

で、イカ色々そのアレといいますか、それらについての考証を・・・

あのようなモーションになったのは、実は可動間接の制限によるものです。
関節がもっと曲がればスターウォーズのスカウト・ウォーカーのようになめらかな歩行が実現できるのですが・・・
・・・もちろん適当にごまかしても良かったのですが、クレーテの場合は関節と連動しているメカ類がすべて外に露呈してるので
ゴマカすのが非常に難しい。
まあ、Ma.Kはもともとのデザインが「ジオラマの静止模型」として作られているので仕方ないのですが・・・
(そういう意味ではSWの可動メカ類は最初からアニメートされることを前提にしてデザインされているのがよくわかりました)
勿論その辺をすっとばしてCG用にデザインをアレンジしても良かったのですが、それもちょっとなあとも思いましたので
原点のデザインを大事にするために今回はあえてこうしてみました。
しかし、またの機会がありましたらもう少しイロイロ試行錯誤してみるつもりであります。
(見捨てないでね(笑))