植村直己・帯広野外学校『自転車で十勝平野一周」の記録』

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野外学校開校25周年企画 第74回野外学校『サバイバルキャンプ』

『自転車で十勝平野一周320㌔』の記録
植村直己・帯広野外学校は、開校10周年(1995年)に「十勝縦断」、20周年(2005年)に「十勝横断」を記念事業として開催しました。25周年を迎えた今年は十勝平野の外縁を自転車でキャンプしながら一周する「自転車で十勝平野一周320㌔」に挑戦しました。

 
行程は、野外学校をキャンプ2日目の8月6日に出発、途中の大樹町晩成温泉キャンプ場、本別町静山キャンプ場、上士幌町糠平湖キャンプ場、鹿追町然別湖北岸キャンプ場に宿泊しながら、8月10日に野外学校基地へ戻るというものでした。ルートは概ね十勝平野の外縁を巡るもので、標高0mの海岸から1000mの峠まである全行程約320kmを4泊5日で走破しました。
 参加者は道内各地から集った小学校6年生~高校1年生の男女10名、期間中は猛暑に見舞われた日もありましたが、雨に当たることも大きなアクシデントも無く、全員が無事に全行程を走破しました。
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【参加者】

佐柄千鶴(音更町/高1)、吉田出海(新得町/中3)、澤谷純輝(上ノ国町/中2)
滝澤心平(上ノ国町/中2)、山崎翔太朗【音更町/中2)、外山皓一(音更町/中1)
林 志門(当麻町/中1)、牧野晃也(音更町/中1)、山中夕奈(小樽市/小6)
有馬拓朗(札幌市/小6)
【スタッフ】
小貫耕喜(校長)、山本義明、佐々木誠一、近藤由佳、酒井伸吾、矢満田啓明、佐藤俊明、
佐柄啓二、阿部侑太、北沢 実、山田香織、梶美恵子、宮谷恵美子、内田菜穂子

ルートマップ
(クリックで拡大します)
1日目=8月5日(木) いよいよサバイバルキャンプが始まった
 いよいよサバイバルキャンプの始まり。13時からの開校式を前に、いくぶん緊張感を漂わせた参加者10名が集まってきた。開校式では校長のあいさつ、スタッフ紹介、参加者の自己紹介と決意表明などが行なわれ、いくつかの注意ののち、いよいよプログラムが始まった。まず最初は、320kmの足となる自転車を決め、マウンテンバイクの正しい扱い方のレクチャー。こののち、野外学校周辺を7kmほど試走し、なんとか体で覚えた。
 次は、テントのたて方としまい方の練習、これを覚えなければとんでもないことになる。次に待っているのは夕食作り。野外学校の基本は「自分たちの食事は自分達で作ること」。今回の自転車ツアー中は、昼食は弁当が支給されるが、朝・夕は自炊。この日の夕食は基地にいることもあって、カマドを作ってマキで炊事をする。ちなみにメニューは、飯ごうに米・野菜・肉・カレー粉などをぶち込んで炊いた「カレーピラフ」とトマトスープだった。 食事の片づけを終えたのは、日もとっぷりと暮れたころ。
 今度はログハウスで研修会。校長から植村直己さんの冒険の話を聞いたあと、今回の自転車冒険旅行のルートを地図に落としたり、いろいろな注意を聞いた。その後はごえもん風呂で汗を流し、この日はログハウスで就寝となった(22時ころ)。
 

開校式
自転車のチェック
テント設営の練習

夕食を作る開校式

地図にルートを記入
2日目=8月6日(金) 晴れ&猛暑の中を自転車冒険旅行がスタート
 午前5時起床。すでに雲ひとつない青空、今日の猛暑を予感させる。さて、自転車ツアー中は5時起床、7時出発を原則としている。起床後の2時間で洗面、朝のつどい、朝食作り、テント撤収、装備の整理、自転車のチェックをすべて終えなければならず、結構忙しい。
 この日は全員が予定時刻前に起床。朝のつどいの後、朝食のベーコンエッグを作り、パン・野菜サラダとともに胃袋へ。その後ただちに出発の準備に取り掛かる。個人のザックや炊事道具セット、テント類は伴走車に載せ、各自はデイバッグにタオル・スポーツドリンクのPBなどを入れて走る。
 自転車ツアーの体制は、4~5名のスタッフがメンバーに自転車で伴走、伴走車は2台とし、個人装備やテント類、救急セット、補給用の水分や行動食を積み込み、バックアップをとることとした。
 午前7時すぎ、すべての準備を終えたメンバーは、校長の号令でスタート、320キロの自転車冒険旅行のスタートを切った。
 最初の休憩ポイントはスタートから9キロ先の戸蔦市街。ここまで約45分とペースは快調。この地点で水分を補給し、さらに7キロ進んだ札内川にかかる橋の下で20分ほど中休止をとる。この先はゆるやかなアップダウンが続くルートを、数度の小休止をくり返しながら昼食地点の大樹町市街の柏林公園(42キロ地点)に11時10分に到着した。この段階で気温はすでに32℃超、しかしメンバーの旺盛な食欲を見て一安心。1時間ほど木陰で休息をとったのち出発の準備となった。
 12時10分、午後のスタート。道路に出ると日陰も無く、アスファルトの照り返しもきつく「このまま進んでも大丈夫かなぁ?」という心配もあったが、メンバーは行動食のバナナもペロリと平らげ、ペースも午前中とほとんど変わらない。途中の休憩ポイントでは頭から水をかぶったり、首筋・わきの下を氷で冷やしたりと熱中症の予防対策を頻繁にとる。この日のゴール目前の海へ向かう下りの直線などは、相当なスピードで風を切りながら進み、当初想定していた到着予定よりも1時間近くも早い14時20分に、この日のゴール大樹町晩成温泉キャンプ場に無事到着した。この日の自転車で消費したのは、スポーツドリンク40㍑以上、おにぎり50個、おかずいろいろ、行動食など。
 キャンプ場到着後は、ただちにテント設営をし、さっそく温泉へ!しかし、日焼けのためゆっくり浴槽につかることができたのはわずか・・・。風呂上りにはスイカを食し、夕食のご飯&肉だくさんの野菜炒めを作って食べ、あとはゆっくりと休息し、21時には寝袋に入った。
【この日の自転車伴走スタッフ:山本、酒井、佐々木、近藤】

出発!

元気いっぱい!

直線道路を行く

頭から水をかぶって

晩成温泉キャンプ場
3日目=8月7日(土) 猛暑の中、最長の88キロに挑む
 この日も午前5時起床。この少し前、太平洋から昇るきれいな朝日を拝むことができた。朝のつどい・体操ののち、ホットドッグとトマトの朝食をすませ、出発準備。各自、行動がテキパキとしており、予定通り7時には出発準備が出来上がっていた。この日は今回のプログラム最長の86キロを進み、なおかつ、後半は上り坂が続くという最難関に挑む。しかし、予報はこの日も「猛暑日」を告げていた。
 午前7時、出発!この時点ですでに気温は29.5℃。この日はおおむね10㎞ごとに伴走車を止め、水分補給・体のアイシングをくり返しながらの進行となった。それにしても参加者メンバーは元気、十勝川河口橋(30キロ地点、9時40分着))の中休止では、行動食のバナナは2本以上平らげるし…。昼食ポイントの浦幌市街の公園(46キロ地点)には、先頭グループが11時10分、最後尾が11時25分に到着した。ここで1時間ほど休憩&昼食とする。
 12時30分、この日の後半戦、長い上り坂が続くルートを42キロ先の本別町をめざしてスタートを切った。暑さはますます厳しく、頻繁に休憩をとりながらの前進となった。さすがに参加者の体力差が明らかになり始め、3つの集団に分かれ始めたが、それぞれに付いたスタッフの努力もあり、なんとか難関を乗り切ることができた。この日のゴール、本別町静山キャンプ場には全員が17時に到着することができた。それにしても、暑かった!
 この日の宿泊はバンガロー。この中が何と蒸し暑いことか、と文句を言っていると雨が降り出し、屋根の下で眠れる幸運に感謝もした。宿泊地の近くに温泉が無いため、この日は銭湯で汗を流す。ここのお湯の熱いこと熱いこと・・・。夕食のぶた丼を作って食べ、この日も21時に消灯となった。

【この日の自転車伴走スタッフ:山本、酒井、佐々木、近藤、佐藤】

日の出

今日も青空の下を行く

昼食タイム

中休止のようす

今日のゴール間近か
4日目=8月8日(日) アップダウンの多いルートを58キロ、糠平湖をめざす
 午前5時起床!辺りはガスに包まれ、前日までの朝のモワ~っとした雰囲気とは大違い。早々と朝食(スパゲティー)を済ませ、出発準備に取り掛かった。午前7時、涼しげなキャンプ場をあとに、58キロ先の上士幌町糠平を目指す。この日のルートは前半に8キロほどのゆるい上り坂が続き、後半にも峠越えが待っている。8時50分、スタートから21キロ地点で隊列を整え、23キロ地点の「道の駅・足寄湖」で中休止をとった(午前9時)。ここで行動食の定番、バナナ&きゅうりを食べたのだが、誰が言い出すともなく「バナナに塩を付けたらうまい!」。以後、塩バナナが行動食の定番となった。ちなみに「塩飴」も元気の素として好評だった。
 この先は林の中を通る舗装された道路を進むが、次第に勾配がきつくなり隊列が縦に長く伸び始めた。11時10分、もう少しで小さな峠の頂上というところ(40キロ地点)で昼食とした。
 1時間ほど休憩の後、最後ののぼりをクリアし、急勾配を駆け下り国道と合流。この先はゆるいアップダウンを繰り返しながらゴールへと続くルート。この辺りで疲労はピーク状態(スタッフだけか?)。小休止を重ねながら14時~14時20分に、全員この日の野営地、糠平湖岸キャンプ場に到着した。それにしても、この日は気温が23~25℃と、前日までと比べて涼しげだったのが救いだった。設営後、全員で糠平温泉へ!汗を流した後、野営地へ戻り、夕食(スキヤキ風なべ+うどん)で満腹になったのち、就寝となった。

【この日の自転車伴走スタッフ:山本、酒井、佐々木、近藤、佐藤】

今日も出発!

名物「塩バナナ」

急坂は自転車を押して

快調に進む

風呂上りの美女
5日目=8月9日(月) 標高差500mの急勾配に挑戦!
 この日はいつもより遅い6時30分に起床。お湯を沸かしてレトルト飯とレトルト丼の素を温めて朝食を済ませる。慣れた手順で出発準備を完了し、予定の9時30分にキャンプ場を後にした。この日は鹿追町の然別湖北岸キャンプ場までの19キロを進むのだが、距離は最短でも、出発地の糠平湖から9.5キロ先の峠の頂上までの標高差は500m(この幌鹿峠は標高が1000m、道内では有数の高さにある峠だ)。この日のために?、屈強なスタッフ3名が加わり、これまでの行程でヘロヘロのスタッフをカバーする。天候は時おり陽もさすが、うす曇りとまずまずのコンディション。
 出発直後にスタッフの自転車がバーストするアクシデントがあったものの、各自がペースを守り、先頭グループは休憩時以外は一度も自転車を降りることなく峠の頂上へ、最後尾のグループは急な坂は自転車を押したり、また乗ったりをくり返しながら12時50分には頂上に到着することができた。頂上からキャンプ場までは快適な下り坂、30分ほどで無事到着。疲労感いっぱいのスタッフを傍目に、メンバーたちは「鬼ごっこ」を始めた。恐るべし!!
 設営後は野営地から1kmほどにある「秘湯 山田温泉」まで自転車で出かけ汗を流し、戻ってからカレーライスを作り消灯を待った。それにしても子どもたちはじっとしていない! 

【この日の自転車伴走スタッフ:山本、佐々木、近藤、矢満田、佐柄、阿部】

出発前の点検

峠のてっぺん

カメさんチームも

夕食はカレー

夜はミーティング
6日目=8月10日(火) 83キロ先のゴール、野外学校をめざす
 いつも通り5時起床。この日はスタート直後から細くて曲がりくねった道が続くため、交通量が多くなる前にこの難関を抜けるべく、スナック程度の朝食を済ませ、6時にスタートした。途中、うすいモヤががかかる幻想的な然別湖を眺めながら、7kmほど進んだ扇が原展望台でスパゲティー(2日前がミートソースだったので、この日はナポリタン)を作って8時40分に再スタートとなった。ここから鹿追町市街までの20キロ余は下り坂が続き、快調なペースで、風を切りながら進むことができ、1時間ほどで到着、ここで「塩バナナ」と水分補給の中休止とし、10時に昼食ポイントの美蔓パノラマパークへ向けて出発した。この間の7キロは強烈なアップダウンが4度、しかも日差しが強くなってきたため、1時間を要した。
 この先芽室公園までの18キロはほぼ平坦で、景色も変化がない退屈な直線道路が続く。日差しも強くなり始めた。途中で給水の小休止をとり、13時15分に芽室公園に到着。今回の自転車ツアーに密着取材をしていたNHKのカメラマン氏から、ここでアイスの差し入れ、おかげで全員息を吹き返した。
 のこり26キロは緩やかなアップダウンをくり返しながら、約200m上らなければならない。しかし、進まなければゴールインできない。これが最後と、それぞれがペースを守りながらゴールの野外学校をめざした。
 

朝の然別湖

名誉の?負傷

扇が原展望台

頭から氷水

ゴールまであと4キロ
 そして16時、校長ほかのスタッフが待つ野外学校基地へ全員そろってゴールすることができた。
 ゴールでは無事完走を祝したバンザイ、握手、抱擁?が、くりかえし行なわれた。

以後は、ごえもん風呂で汗を流し、サバイバルキャンプ最後の夜の恒例、焼肉・焼きそばパーティーが開催され、「やり遂げた」満足感に浸りながら、夜も更けた。

 【この日の自転車伴走スタッフ:山本、佐々木、近藤、矢満田、佐柄、阿部】

午後4時ゴールイン

完走バンザイ

おつかれさん!

乾杯!

焼肉パーティー
7日目=8月11日(水) もう走らなくてもいい・・・最終日
 起床は6時、朝のつどい・体操ののち、カマドを使って飯ごうメシ、焼き魚・みそ汁、納豆などの純和風の朝食を作って食べ、最終日恒例の「大後片付け大会」が始まった。期間中に使ったコッフェル、フライパン、コンロなどをきれいに磨き上げやっと終了。あとは感想文を書き、クライマーパンの昼食を終え、閉校式を待った。
 式では、修了証書が校長から手渡され、スタッフからの講評、参加者各自の感想発表などが行なわれ、記念写真を撮影して解散の運びとなった。

後片付け大作戦

感想文を書く

修了証書授与

記念写真