『旅は台風を引き連れて 最終篇』 
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この世には寝覚めと戦う恐ろしい競技が存在するという・・・。

 

 

僕は、そのとき爆睡していた。

昨日行った 円山大飯店にて、大好きな陸上部の女の子と

そして横には、

同じく昨日写真を取り損ねた 「ふーたーず」のおねーさんふたりと

ランチを食っている夢を見ていた。

「良ちゃん、あ〜ん」

「あ〜ん」

「うふふふふ」

「じゃ、おでも、たべさしてあげるーぅ」

その瞬間、誰かいる気配がして目が覚めた。

目の前には、真っ赤な何かが、ぼんやり見えた。

 

「さあ、藤井さん、がんばって」

あま〜いにおいがする。

やっ、やられた・・・。またこのおっさんか。

僕の目の前には、かわいい陸上部の女の子ではなく

男前の宮本さんと、小不細工なフジタさんが

僕の好物のイチゴらしきものを目の前に持ってきている。

「な、なんすか?」

 

「イチゴジャムやんけ」

「昨日、円山飯店で、寝起き早食いなら、2秒でたべられるいうとったやろ。」

そう、寝起き早食い・・・ご存じ、とあるバラエティ番組のコーナー。

  急に目覚めてから何秒で好物を食べることができるかという 過酷な戦い。

               現在最高記録は、岡村隆史の6秒フラットである。

結局、 22秒12という無惨な結果で、藤井選手はリタイヤしたのだった。

 

 

***********************************

朝。

そんな馬鹿なことばっかりもしていられない。

今日は台湾最終日。

泣いても笑っても、本日最後。

気張っていきましょう。

多少疲れの残る中、
台湾の観光地の写真に絶対でてくる
「中正記念堂」へと向かう。

ここは、蒋介石を祀っている大きな公園である。

台風は、やっとどこかに行ったのだろう。少しだけ曇り空の中薄日が射している。

おなかへったな。

またまた、歩き回るうちに、昼前となってしまっていた。

ここではじめて藤井が買った2代目 「台湾るるぶ」を活用。

(1冊目は、こともあろうに藤井が八幡浜寮にわすれてきやがったので、

福岡空港にて 「るるぶがないと台湾で路頭に迷ってしまう」という嘘っぽい理由で

おっさん3人に半ば脅迫されてしぶしぶ全く同じ「台湾るるぶ」の2冊目を購入)

その「2代目るるぶ」に載っていた「ワンタン屋」にはいると、むさぼるように食べ始めた。

一般の食堂らしく、周りはみんな地元の人だ。

給食の時、つかっていたようなドンブリにワンタンが、
6個ぐらい入っている。

しかもでかい。日本のサイズの2〜3倍程度の大きさだ。

すこし辛い薬味を足して汗をだらだら流しながら喰う。


うまい。

 

 

一気に腹の膨れた我々は、
最終日だというのに土産を何一つ買っていないことに
気が付いた。

よし、漢方の通りに行ってみるか。

相変わらず荒っぽいタクシーを止めると油化街へと向かった。



タクシーを降りるとなにか、薬臭い・・。

街全体がなんか怪しい雰囲気を醸し出していた。

早速、お茶の店がある。

台湾高級茶葉はもちろん、

ジャスミン茶、プーアール茶、 かわったもので、ラベンダー茶やバラ茶などがある。

すっげえ、ただのドライフラワーにしか見えんな・・・。


飲めるんですかね。

聞いてみようか。

「ちんうぃん(すいません!)」

「良品良品絶対推奨花茶我畑搾取美肌健康・・・・・・・・」

(超訳*「にーちゃんこれいい品よ。じぇったいお勧めね。

こっちのジャスミン茶なんか、うちの畑でとったものだから、やっすいし、お肌にもいいし健康ね。」)

なるほどなるほど。

残り3人は、 ほんまにいよることわかってるのか?といった嫌疑の目で僕を見ている。


やばい、そろそろなんちゃって中国語がばれてきた・・・。

確かに香りはいいが、無理矢理ドライフラワーにお湯かけて飲むような気がしてならない。

まあ、試しに買ってみよう。

これとこれ、りゃんが。(2個くれ)。

僕は、ドライフラワーとも、ポプリともとられそうなジャスミン茶をスーパーの袋いっぱい買い、

その横で、3人は、賢く少量買っていた。

次に西坂君が、 漢方薬がほしいと言い出した。

なんの?

元気になるやつがいいな。

(そんなん通訳できんぞ。)

しかたない・・・ 僕は、「精力増強」と紙に書いて兄ちゃんに渡した。

兄ちゃんは、中から、婆ちゃんちで漬けている梅酒の瓶のようなでっかい瓶をごろごろと持ってきて

一升升いっぱいにすくい上げると、はかりにのせた。

うぉーい!そんなにいらんてや!

8500円?たけぇーよ。

僕らは、片手を出してこれぐらいでいいと言った。

あいやー!それだけかい。

再びはかりにのせ直す。

まあ、こんなもんだな。

****8***明天

1日8粒?そんなに飲まないかんのか?

正露丸のような黒い粒を見ながら、みんなはそれぞれの頭の中で、

絶対やばい。 と思っていた。

一通りお茶も買った我々は、一端ホテルに戻ることにした。

前にも書いたとおり、ホテルの前は、CDショップ。

洋楽はもちろん、日本人のコーナーも充実しており、

日本で、でたばっかりの新譜も破格の値段である。

店に入るやいなや、西坂君の目つきが変わった。

洋楽の棚をAから順番に調べ始めた。


長期戦だな・・・・。

なんせ、アーテチィスト名は漢字なので、漢字表記で、

なおかつ、中国語の発音に準じて並べてある。

STINGだからといって単純にSの列にはないのである。

こりゃ、時間かかるなぁ、藤井よ。

見ると藤井も、 「モーニング娘。」のビデオCDをなめ回すように見ている。



こりゃ、買うな。

案の定、すたすたと、レジに向かっている。

 

いつもクールな拓ちゃんは、ここでも外貨を落とすようなことはない。

それとは対照的に、西坂君はジャパニーズマネーをばらまいている。

隊長!!買っちゃいました。よっすぃい、かっわいいっっ。

さっ、参謀・・・よかったね。

とそこへ、現地の兄ちゃんが声をかけてきた。

(たぶん) 「外人のCD何処?」てなことを言っている。

「いえ、わたちわからないアル。りーべんれん(日本人)アル」

 

 

いかん・・わずか3日目にして現地人と間違われ始めた・・。

 

 

大満足の西坂君とご満悦の藤井参謀と、別段ふつうの宮本氏とCDショップ隣の下着屋で、

いつもの閣議をしながら、部屋に戻った。

一休みすると、地元のスーパーへでかけた。

「課の土産はこれでいいか・・・」 などと拓ちゃんが、

かごに一つ、二つビスケットを入れているさなか、

フジタ一人ここで生活するのかといわんがばかり、かごに押し込み始めた。

さながら、バーゲンのおばはんのようでもあり、出稼ぎの盲流のようでもあった。

「土産なんてな、かえると思ったときにかっとかな、後で後悔すんねん」

と独自の概論を藤井にふっかけるものの

うーん、何買っていいかわかりません。 などとぼーっとしている。

しらんぞ・・・。後から後悔しても・・。

結局、 1週間は自炊できるほどの食材を買ったフジタをのぞいて、3人は至って冷静であった。

さらに日が暮れ始めた頃、我々は、

デューティフリーショップへと出向いた。

もとより、そんなところの免税品には、興味のないはずの4人組だが・・・。

買い物ショックでかなり頭のねじの壊れ始めたフジタが、財布からカードを抜き出した。

あー、フジタさん。こりゃねじがはずれとるな・・・。

藤井よ、男は香水じゃ。

はっ?

香水をつけてなんぼじゃ。

つけたらコンパでモテモテやで。

全くこのおっさんは、何をいっとるのかわからん・・。といった顔つきで僕を見ている。

とりあえず、じばんしーでも付けてみい。

ぷしっ。ぶしゅ。

くさっ。

たわけ者!!これが男の香りというもんじゃ。

そうなんすかね・・。

しかし、藤井もまんざらではないようだ。

いろいろとテスターに付け始めた。

しゅっ、しゅっ。

これ、いいにおいっす。

そういって、 「ぐっち」のらっしゅを持ってきた。

これもいいですね。

藤井からは、何かをわからんぐらいまざりいったにおいが、僕の周りを包んでいく。

まあ、少しはおしゃれに目覚めたようだ。

しばらくして店を出る頃には、香水は、悪臭に変わるほどのにおいを発していた。

 

そんなちっちゃいおっさんをつれ、最後の晩餐へと向かった。

 

 

本場中華料理の店。

チャイナドレスのよく似合う、いえ、かつて似合ったであろうおばさんが僕らをテーブルに案内した。

再びゴチバトルスタート。

今回は、2品ずつの注文となります。

北京焼鴨(ペキンダッグ)フカヒレスープ など、

ちっとは、値段考えろよとつっこみたくなるものばかりである。

みんな頭のねじがびょんびょん飛んでいる・・・。

しかし、うまい。

ビールもうまい。

いやーっ、社会人になって金稼いでよかったと思う食材ばかりであった。

台湾最高。

そういい残すと、店を後にした。

 

我々には、台湾で唯一、失敗していることがあった。

それは、藤井がふーたーずのおねーさんと写真を撮れなかったことでもなく、

下着屋でセクシーおぱんつを買わなかったことでもなく、

はたまた、チンおじさんについていかなかったことでもない。

夜市 である。

台湾の活気ある夜市に、ことごとくはずれているのである。

その汚名を晴らすべく、暴走タクシーで 「士林夜市」へと向かった。

バイクの騒音、やけに薄っぺらい音楽が心地よい。

屋台のあかりが、道なりに続き、焼鳥やリンゴ飴の甘い匂いなどがどこか懐かしい郷愁を

思い起こさせる。

少し薄暗い路地では、先ほどデューティフリーで見ていたブランドのバッタモンが、

ひっそりと売られている。

そこに群がる人々、そして警察。

あっという間に摘発。ほんの一瞬だった。

すっげえ、 「警視庁密着24時(モザイクなし)」のようであった。

ぶらぶら歩いていると、奇妙な看板が目に止まった。

トノサマガエルが卵を生んでいる絵。

 

でっかい鍋の中には、まさにカエルの卵のような液体が、どろどろとかき回されている。

なあ、これ喰ってみようぜ。

か、かえるのたまごか、な。

かもしれん。

とりあえず喰ってみよう。

隊長まじっすか?

当たり前だ!!参謀。おまえから食え。

隊長嫌っすよ!!

おでは、めんくいなんすから!

ゲテモノはだめっす!!

よーし、男の生き様みとけ!!

みつめる3人、生け贄ひとり。

何のことはない。ただのタピオカである。

タピオカ一つで、これだけ馬鹿騒ぎする我々も、我々だが・・

最後の最後で夜市も満喫できた我々は、円山飯店のネオンを背にタクシーでホテルへと戻った。

荷物整理。

いよいよ帰国の準備をせねばならん。

荷物が食料品で3倍に膨れ上がったフジタとは対照的に、

藤井は、盗難にあった旅行者のように減っていた。

堅実な宮本氏は現状維持。まさに大人の男25歳である。

西坂先生は、後半のジャパンマネーをばらまいたおかげで海賊版CDだらけ。

藤井よ、だからいっただろう。

土産は買えるときに迷わずかっとくもんだ。

どうしましょう・・・。

知らんげ!!

ホテルのコップでもいれとけ。

あれ、ほんまに入れてる・・・。

 

朝。快晴。

何で帰るときになって晴れるんや・・・。

みんなこの中に雨男がいるのを確信しながら、空港へ向かう。

 

再び免税店。

土産のなかった藤井が、 ミッキーマウスのチョコレートを買っている。

何で、台湾きて、そんなもん買うねん!!

その後

彼は、香水ゾーンに向かうと、 「ぐっちのらっしゅ」しゅっ、しゅっ、と振りかけると

一人めろめろになっていた。

 

搭乗。

隣は、 ラッシュ藤井。

甘い香りに、僕がめろめろになってしまいそうだ。

拓ちゃんと、西坂君は、爆睡である。

台風の過ぎ去った空からは、陽が燦々と照りつけている。

 

 

隣のラッシュ君は機内食のケーキをばくばくむさぼりながら、

またどっかいきたいですね。

ああ。

どこいきますか?

そうだな。

アフリカでも行くか。

まじっすか?

ふっ。

僕はかすかに笑うと、眠りについた。

税関。

いよいよ旅も終わり。

入国もすんだ。

颯爽と税関に向かう。

きみー、ちょっと。

なんだ、いきなり。

僕は、税関のおっさんに呼び止められた。

鞄あけて。

まじで?

スーパーで買った紹興酒が悪かったのか?

いや、たしか免税範囲内だ。

おっさんは、パスポートで僕の顔を一瞥しながらこういった。

何処いってました?

台湾です。

他は?

はっ?(三泊四日で他に何処に行くねん!!)

いえどこにも。台湾だけです。

そんな答えも聞かず、鞄をがさがさ開けはじめた。

 

これは?

ジャスミン茶です。

ドライフラワーじゃないの?

いえ、お茶です。

この筒は?

故宮博物館の宝物のポスターです。

これは?

豆板醤です!

 

このビニール袋は?

パンツですよ。

さすがに開けられはしなかったが、ある意味嫌がらせである。

髭がいけなかったのだろうか?

ほんとに、何か申告するものはないですか?

あっ、おれ、めっちゃ疑われてるぅー。

僕よりも、香水くさい藤井の方が犯罪じゃと思いながら、

ようやく通過したのだった。

こうして、台風のさなか出発した旅は、

嫌がらせのような荷物検査によって終焉を迎えたのであった。

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