「梅田大戦」

松たか子・・・言わずと知れた松本幸四郎の娘であり、市川染五郎の妹だ。

一部の噂では、親父譲りのひげの濃さで、毎朝、しっくぷろてくたーで剃っとるらしい。




そのとき僕は、皿を洗っていた。

今日も、皿を1000枚近く洗うという、体力勝負の京都料理屋のバイトをこなしていた。

ベトナムから帰ってからというもの、どうも金銭的に苦しく、

夏休みにねらっていた女には、帰国後、男ができてた。毎夏そうだ。



洗っている皿を見ながら、「質屋でいくらで売れるかな?」

などとよけいな妄想を膨らませ、

週末は、京都駅で

カップル後目に交通量調査をするという、

そんな寂しい、秋のある日。

後輩の女の子が、日に日にみすぼらしいくなって私を心配してくれて、

「コンパしたいという子がいるんですけど。」といってきた。

「ふん、どうせ無駄金使うだけだしやめとくよ」

「そうですか・・・プリクラあるんですけどねぇ」

「なに!!」「かわいいやーん」

「どうします?」

向こうは、神戸育ちのお嬢様「甲南女子大学」の面々である。

「もち、やります」

私はすぐ「第19コンパ部隊」(正式名称=気持ちは19歳。体力30部隊。)に召集を発令した。

そこでふと、気がついた。

プリクラは、結構ごまかしが効くウェポンである。

かつて俺もそれでだましたことがあったではないか。

今回もまた、これまで同様に、

実物は、ヤバイかもしれん。

うーん、しかし。今回はお嬢様だ。

いままでの食うだけ食われて、飲むだけ飲まれるような、

ビンボーコンパとは違うだろう。

早くニューフォーメーションをくまなくては。

緊急に「第19コンパ部隊緊急会議」が開かれた。

3時間にも上る議論の末、(なにをそんなに議論するんじゃ!!)

目下の懸案は、「ブサイクは来ないのか?」という恐ろしい難題を

調べることであった。

「じゃあ、声を聞いてみよう。それと連れてくる子のレベルを調べよう」

つるるるるるるるるるるる・・・・・・

「あーっ、もしもしぃ。はじめまして」  バカっぽそう。

ここで即、満場一致。

「おっけい」札が上がった。

(ここでオッケーを出す我々もどうかと思うが・・)

「自分、どんな子つれてくるん?」

「あっ、松たかこに似てる子がいるよ。」

ほんまかーい。交通量調査してかせいどいてよかった。

「あとね、広末に似てる子もいるんだ」

まじで!こりゃ、「”マジで恋する5秒前”練習しとかねば」

ボディブラシまで持っていこうとする隊員たちをなだめつつ、

私と、参謀・木村っちとの間で、さらに秘密裏の作戦が計画されつつあった。

これまで、「華原朋美作戦」「ウルフルズ・シグナル」など、

数々の伝説化とした計画が立てられたが、

今回は、さらに綿密に計算がなされることとなった。

その名もズバリ、トーク重視の「HEY!HEY!HEY!作戦」と

動き重視の「ナインティナイン計画」である。

まさに「静と動」向かうところ敵なし。

当日。

私は、髪をきっちりブリーチで染め上げ、

参謀と阪急電車の中で「はうえばー」(HOWEVER)と、

「キンキのうた」(硝子の少年)

立ち位置確認していると、そこは、すでに大阪・梅田であった。

紀伊国屋・ビッグマン前。関西の学生なら、オーソドックスな待ち合わせ場所である。


土曜日の夜ともなれば、そこで合同コンパができそうなほどの混沌さである。

ぶっちゃけていえば、なかなか探せませんということだ。

作戦司令部を駅の階段上部に設営すると、

話題の松たか子・噂の広末涼子」がいそうなグループを

探し始めた。(BGM:「マルサの女」のテーマ)

連絡手段は、参謀の携帯への電話だけである。

待つこと10分。電話が鳴った。

「いま紀伊国屋前にいますぅ」

「よっしゃ、気合い十分」我々は、西部警察のように階段を駆け下りると、

紀伊国屋の前に向かった。

「こんにちはー」

背後の声で振り返った。

「なんじゃこりゃー」我々5人が、松田優作状態であった。

やはり、プリクラのイリュージョン勝ちで、ファッションが松たか子と、

髪型が、広末涼子というモノであった。

今回は、飲まない、食わない、しゃべらない。

よっしゃー、カラオケで、立ち位置ばっちりのあの歌を・・・歌う気にもならなかった。

「あいつが松たか子なら、わしゃ、キムタクじゃ」というつぶやく隊員の言葉とともに、


私の皿洗いと埃まみれの交通量調査の結晶は、梅田の夜に消えていくのであった。