エピソード1 【鴨川 真夏の夜の夢】

EPSUDE1  「鴨川 真夏の夜の夢」




私はその時
白浜にいた。


切った髪は、高校球児より短く、赤く焼け、タコのようであった。

白良浜の海風にあたりながら、「この夏の予感」めいたものを感じていた。


「何かいいこと起こりそう」そんな気分にさせてくれる絶好のロケーションが、

ヤルことで頭いっぱいのアホ改造車を増やしていた。


そんな夕刻。



こんなくそ田舎で、わたしのPHSが鳴った。

「もしもし、先生」家庭教師の女子高生だ。私は切れそうになる電波を気にしながら

「おう、げんきか?」と答えた。



「先生、合コンしよ。」私は、驚きと嬉しさを隠しながら、「いつ?」と聞いた。

「あした夜10時。」

「10時?」「でも門限10時じゃなかったけ?」

「いいの。朝までできるよ、先生あいてる?」




私の「何かいいこと起こりそう」な気分はさらに増した。


一緒に来ていた友人共に、海に向かって「ありがとー」と叫ぶと白浜をあとにして、

京都まで6時間の国道をひた走った。


コンパ・・。なんと久しぶりの祭典だろう。


そういえば、前回はあの因縁の「松たかこ・そっくり詐欺疑惑コンパ」だったような。

あれからもう半年が経つ。

「今回もまた・・・・・いや今度は期待できる。しかも女子高生だ。」

社会人になればこんなことはもうないだろう。我々の期待はあくまで高鳴る。



黒く焼けた坊主頭は、一層のセクシーさを醸しだし盛り上がるのは間違いないはずだ。

しかも、オールで飲み会とは。部屋もきれいにしておく必要がある。

私の部屋は、友人と共に見違えるようにきれいにされ、

大好きなSPEEDのポスターなど取り外し、あくまで、大学生のこぎれいな部屋を装った。

7時からは、サザンの特番を見ながら「夏男2人衆」のテンションは円高よりも鰻登りとなっていった。そして、問屋から、花火まで買ってカーニバル状態であった。


9時。

 友人は「やりたがり2000スプレー(フェロモン香水)」を吹き付け、

準備は整った。

私も買ったばかりの中田ばりの眼鏡をかけ、坊主のセクシーさをさらに協調した。


そして、別のコンパに行く向かいに住む友人を乗せ「自転車部隊」は河原町へと向かった。


高島屋前10時。そこに彼女らはいた。

家庭教師の彼女に声をかける。かわいい。今時の子だ。

あとの二人を見た。


「KIRORO」だ。


私は、言葉を失った。

「なーがいあいだまたせてごーめん」あの歌詞が頭の中を巡った。


「ま、まあいい。面白いかもしれん。」

友人と、宇宙人ばりのテレパシーコンタクトをとりながら、歩き始めた。


「何食べる?」そう聞く私に対し、KIROROの二人は喋ろうともしない。

仕方なしに、家庭教師の子にそう聞いた。

「少しお腹が減っている」というので、軽めの飯やに行く。

ここで私は、半年前のあの悪夢を思い出していた。


「まさか今回も・・」



とにかく、店でもKIROROは喋ろうとしない。食べない。飲まない。拷問である。

おまけに金払う気ゼロ。したたかなのか、知らないのか、合コンではなく

「食事くって、さっさと帰る会」なのだ。

「まあ、まだ酒が回ってないから、こんなのちゃうか?」と友人と喋りながら、鴨川に行った。そう、ここからがほんとの勝負だ。


花火。まさしく夏のリーサルウェポンである。

たいていの女の子は、これで乗ってくる(ハズ)。

そう考えていた我々がバカだった。のらない。しない。どっかいく。

結局、「男だらけの花火大会」になってしまった。


あとは、簡単である。


花火が終わるまでに友人がキレ、終わると共に帰っていった。

私らにかまわず、くっちゃべっているブスどもいやバカどもを尻目に、

私一人花火を片づけ、「まあ、まだ我慢してみよう」と自分に言い聞かせ、

とりあえず木屋町へと戻った。


しかし戦力が半分になった「ボランティア・いい人大学生」の戦闘能力はゼロに近かった。


ここで白旗を振り、「シノビガタキヲシノビ、タエガタキヲタエ」た小太り小坊主は、

花火の残骸と共にチャリ置き場へと戻るのであった。